地下鉄サリン事件から30年の『春秋(250320)』は思う▼「被害にあったかもしれないあなたに」。夫が犠牲になった高橋シズヱさんが、被害者の手記集でそんな呼びかけをしている。唐突に日常を断ち切る無差別テロ▼30年が巡る。死刑になった教団幹部13人の、実に11人が事件時20~30代だった。「心を密に接する集団は、トップの暴走で引きずられる。宗教に限らない」。加害者にならぬ道もまた、長い長い手探りの中にある▼ホームに、階段に、路上に、あれほども人間が無残にも倒れた光景などなかったかのように、地下鉄は人々を運び続ける。再びの被害も加害も生まない社会へ、考え続けねば。「遺族には風化のしようがありません…