ぼくが美大生だった頃、二つの雑誌を愛読いていた。季刊「遊」と季刊「FILM」だ。地方の高校生が受験勉強で閉じこもっていて大学に受かると、そこで初めて「世界」に遭遇することになる。時代は1973年になっていたが、1968年的な文化の残滓は雑誌に花咲いていたようだ。その雑誌から稲垣足穂やATGの映画やアングラ劇の赤テント、黒テントを知る。同級生に演劇部のKさんがいて彼は赤テント派だったので、ぼくは黒テント派になって、新宿紀伊國屋ホールでやっていた時に一人で観に行ったことがあった。同じ日だったか別の日だったか思い出せないが、ATGにも行って吉田喜重監督の「戒厳令」を観た。こちらも新宿で確かアートシア…