「五月蠅なす神」(さばえなすかみ)とは、 陰暦五月頃の騒がしく、煩わしい蠅のように 四方八方駆け巡る「悪鬼」「邪神」「疫神」「疫病神」のことです。 陰暦の五月は梅雨の最中で、 疫病の流行する時期でもあったため、 疫病などをもたらすものを、 蠅のような悪鬼に喩えて恐れたのです。 ところで「五月蝿」(さばえ) は、 『古事記』や『日本書紀』にもある 大変古い言葉です。 『古事記』の「三貴人分治」の条には、 須佐之男命 (すさのおのみこと) が 母神・伊邪那美命 (いざなみのみこと) の元へ 行きたいと言って泣き続けるので、 「是を以ち悪ぶる神の音、 狭蠅さばえ如す皆満ち、万の物の妖悉く発る」 とあ…