姫君が六条院へ移って行くことは簡単にもいかなかった。 まずきれいな若い女房と童女を捜し始めた。 九州にいたころには相当な家の出でありながら、 田舎へ落ちて来たような女を見つけ次第に雇って、 姫君の女房に付けておいたのであるが、 脱出のことがにわかに行なわれたためにそれらの人は 皆捨てて来て、三人のほかにはだれもいなかった。 京は広い所であるから、 市女《いちめ》というような者に頼んでおくと、 上手《じょうず》に捜してつれて来るのである。 だれの姫君であるかというようなことは だれにも知らせてないのである。 いったん右近の五条の家に姫君を移して、 そこで女房を選《え》りととのえもし衣服の仕度も皆…