上橋さんの守り人シリーズはすべて大好きなのだが、なんといっても本書が一番好きだ。自分で買うまでは、図書館に行って目につく度借りていたので、母に「またそれ?」と笑われていた。 これは、本編では深掘りされないアラユタン・ヒュウゴという男の少年時代の話である。彼は大国の密偵として働いていて、本編でもそれはそれはスマートに、かっこよく、主人公を助けたり、助けられたりする。そんなヒュウゴの原点となる話が収められている。 このお話をこれだけ得難いものにしている理由は、やはりタラムーにあるだろう。見える人と見えない人がいる、不思議な生物。祖国を焼かれたヒュウゴを助けてくれたリュアンという女性は、このタラムー…