道徳形而上学の基礎づけ 作者:イマヌエル・カント 人文書院 Amazon カント道徳哲学での「義務」(Pflicht)概念は、その体系的思考の核心を成す最重要概念のひとつである。本記事では、『道徳形而上学の基礎づけ』(以下『基礎づけ』と略記)と『実践理性批判』という2つの主著での「義務」概念の位置づけを比較検討することで、カントの道徳哲学の中の方法論的転回の一端を明らかにする。 特に注目すべきは、両著作間に見られる「義務」と「道徳法則」(moralische Gesetz)との関係性の逆転である。『基礎づけ』では「義務」から「道徳法則」へという分析的手法が採られているのに対し、『実践理性批判』…