さてここまで、法然の思想を紹介してきた。彼の分かりやすい「万人を救う」教義は瞬く間に支持を集め、多くの信者を獲得する。 法然の教団――彼は生前、自宗を興さなかったので、この記事では教団と表現する――はしかし、次第に既存の仏教勢力から敵視されるようになる。 法然自身は決して、念仏以外の戒律や他行を否定しなかった。念仏は易しい行だから最も優れた行である、としたのであって、従来の荒行は意味がない、としたわけではない。ただこれを成すのは極めて難しいので、自分を含む凡人らには念仏こそが相応しいのだ、というロジックなのである。 しかしながら彼の唱える「専修念仏」、つまり念仏第一主義は、突き詰めて考えていく…