「そう、そう、今朝(けさ)、拾(ひろ)って、逃(に)がしてやったとんぼは、今夜(こんや)も、寒(さむ)いが、どうしたでしょう……。」と、お嬢(じょう)さんは思(おも)いました。 この世(よ)の中(なか)にいるときは、西(にし)から、東(ひがし)へと飛(と)んで歩(ある)いたとんぼの羽(はね)は、もはや、いらなくなった。それを嵐(あらし)は、おもしろそうに、もてあそんでいたのです。 そのうちに、嵐(あらし)は、だんだんきちがいじみてきた。しまいに羽(はね)を捲(ま)き上(あ)げて、空中(くうちゅう)を落(お)ち葉(ば)といっしょに、吹(ふ)き飛(と)ばしたのでした。 お嬢(じょう)さんは、ふと、…