島津氏15代当主の島津貴久(しまづたかひさ)は、もともとは分家の相州家(そうしゅうけ)の生まれだ。16世紀半ばに一族の抗争を制し、分家から島津家の本流となった。 島津貴久と覇権を争ったのが、薩州家(さっしゅうけ)の島津実久(しまづさねひさ)だった。薩州家は敗れた。 15世紀から薩州家は島津氏の分家の筆頭格という感じだった。大きな勢力を有し、島津家の覇権にも近かった。本家筋にあたる奥州家(おうしゅうけ)を支え、またあるときは脅かす存在にもなった。 じつは、薩州家の当主が守護職を得たとされる時期もある。島津家の本流になりかけることも何度かあった。だが、本流になることはできなかった……。 そんな薩州…