人気時代劇「必殺シリーズ」第1弾。延べ30作続いた必殺シリーズの記念すべき第一作である。
1972年(昭和47年)9月2日より1973年(昭和48年)4月14日まで全33話にわたって放送された。
原作は池波正太郎『仕掛人・藤枝梅安』シリーズ。
当時、朝日放送のドラマプロデューサーであった山内久司は、裏番組として絶大な人気を誇っていた人気時代劇『木枯し紋次郎』に対抗するため、今までにない形の時代劇を模索していた。
そこで白羽の矢が立ったのが、池波正太郎が描く殺し屋を主役に据えた時代小説『仕掛人・藤枝梅安』であった。当時の風潮として、時代劇とは勧善懲悪であり、金を貰って人を殺す殺し屋稼業(つまりは悪人)を主役にすることは、山内にとって大きな賭けであった。そこで、単にダーティな部分だけを突出させて非情に描くのではなく、ところどころに人間臭さを出させたり、一般大衆と同じく、欲望に正直な部分を織り交ぜ、視聴者からの共感を得ることを盛り込んだ。
また、梅安の「針による殺し」についても、演出に拘りを加味。特に第6話「消す顔消される顔」での、完全防護を施した文殊屋多左衛門(三國連太郎)殺しにおける梅安の拘りなど、殺しの得物を通して殺し屋としてのプライドを加えた秀逸なものに仕上がっている。
当時としては異質であったコンセプトだけに、キャスティングにも難航。藤枝梅安役には天知茂、もう一人の主役である西村左内役には竹脇無我といった、当時の人気時代劇俳優にオファーを行うも断られ(天知茂は第12話「秋風二人旅」でゲスト出演)、結局梅安役は当時新国劇の緒形拳が、西村左内役は林与一に落ち着いた。
異質である上に、ライバルが市川崑率いる『木枯し紋次郎』であることから、スタッフ面でもテコ入れを開始。まず、市川崑に対抗できる監督として、東映から深作欣二、大映からは三隅研次を、そして、松竹からは松野宏軌、長谷和夫を起用。脚本においても、『十三人の刺客』の池上金男、橋本忍の愛弟子である國弘威雄、池波正太郎から師事を受けた安倍徹郎、『天下御免』などで知られる早坂暁などが参加。一流の映画人が集結した。
当時のキー局であったTBSからの猛反対を押し切り作られた本作は、制作側の熱意と現場の高い能力によって作り出され、更には、池波正太郎独特の江戸情緒や心の機微を逃さず描きあげた結果、視聴者に好評を得ることができ、シリーズ化も決定。今現在視聴しても、まったく遜色の無い作品として、現在もファンが多い。
藤枝梅安(緒形拳)は、表向きは老若男女を問わず親しまれる腕の確かな針医者だが、その裏では生かしておいても世のため人のためにならない人間を人知れず始末する殺し屋・仕掛人であった。
ある日、口入屋を営みながらも、裏では仕掛人の元締として梅安と懇意の間柄である音羽屋半右衛門(山村聡)のもとに依頼が舞い込んだ。依頼人は材木商の伊勢屋勝五郎(浜田寅彦)。仕掛ける相手は、同じ材木商の辰巳屋(富田仲次郎)と、作事奉行の伴野河内守(室田日出男)である。
早速、梅安は行動を開始。辰巳屋が一人になる頃を狙い、夜道で仕掛けようとするも、辻斬りを趣味とする凄腕の浪人・西村左内(林与一)に邪魔をされ失敗する。
その結果により辰巳屋は警戒心を強め、ヤクザ大岩組の大岩(高品格)を雇い入れ、仕掛けがより一層難しくなってしまう。そこで音羽屋は、梅安が出会った浪人・左内を仕掛人にスカウトすることを発案する。仕掛人のプライドが高い梅安は頑なに拒否するが、やがて承諾。左内も仕掛人としての道を歩むこととなった。
いよいよ仕掛が始まった。まず、辰巳屋が妾であるおぎん(野川由美子)の家を訪れた際に、脳卒中に見せかけて辰巳屋の殺害に成功。続いて、万吉(太田博之)の扇動によって反乱を起こした長屋の住人と、大岩組の抗争の中で、伴野河内守を左内が斬り伏せる。仕掛けは見事成功したのだ。
そして、音羽屋は雨の中、大岩を仕掛ける。依頼人である伊勢屋勝五郎に仕掛けの成功を報告をするが、そこで伊勢屋勝五郎は、大岩と住人立ち退き後の長屋をどうするか、今後の算段を行っていたという。つまりは辰巳屋に取って代わろうとしているのだ。
そこで音羽屋は、この世の中に生きていても仕方のない、生かしておいても世のため人のためにならない大岩を刺し殺したことを報告。伊勢屋に釘を刺し、その場を離れるのであった。
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