次の週末、私はふたたび山の寺を訪れた。 何かに引き寄せられるように。いや、ただ誰かに会いたかったのかもしれない。 あの僧―― 口数は多くなかったが、語る言葉に「空白」があった。 聞く者の中で、静かに考えが育つような余白。 あの空気が、今の私には必要だった。 山道の空気は前回よりもやわらかく、境内の竹林からは、新芽の青い匂いがした。 本堂の横を通り、ふと目をやると、石庭があった。 枯山水。 白砂が幾筋も円を描き、石はまるで島のように静かに置かれている。 人の手で整えられているのに、どこか自然の摂理の中にあるように見えた。 「それな、好きなんや」 後ろから声がした。 振り返ると、またあの僧がいた。…