夏の終わりを告げるような風が頬にあたる。 静かな街角には、枯れ葉がこぼれ落ちていた。 今日はどこへも行かずに、ただ何となく、気の向くままに歩こう。 そんな思いが、ふと思い浮かんだ。 いつもの通勤路を少しだけ外れて、細い路地裏へと足を踏み入れる。 ひっそりと佇む古い民家や、どこか懐かしい香りのする小さな雑貨店。 普段は気にもとめなかった風景が、今日は新鮮に映る。 道端には、小さな花が可憐に咲いている。 名前も知らない花だが、その姿に心が安らぐ。 しばらくその花に見入っていると、どこからともなく猫の鳴き声が聞こえてきた。 生垣の陰から、一匹の黒猫がこちらを見ている。 警戒しながらも、少しだけ近づい…