そのころ越後福島潟に、妙なやつが棲んでいた。 見かけは、まあ、ごく端的な表現で、巨大な二枚貝である。 殻長およそ三~四尺、120㎝にも達したとのことだから、地球最大の二枚貝、オオシャコガイと並べたところで引けは取るまい。威容に於いて、十分伯仲させられる。 (Wikipediaより、オオシャコガイ) が、妙というのは何もサイズの話ではない。 こいつは高速移動するのだ。 鈍重が種族的特徴の貝殻野郎の分際で。まるで射られた矢の如く、一直線に、水面を。 目撃例は数多い。地元民との遭遇は頻繁に起きていたらしい。 個々の証言を繋ぎ合わせることにより、おおよその生態も判明(みえ)てくる。 多くの貝類同様に、…