アメリカは、怒っている。「貿易赤字は損だ」「雇用が奪われた」「不公平な貿易だ」と。 けれど不思議なことに、その怒りの中心にあるアメリカは、今日も豊かで、強く、世界の中心にいる。 輸入が多すぎる。モノを買いすぎている。それなのに、ドルは買われ、アメリカの国債も株も世界中から資金が集まってくる。つまり、「怒っているのに信頼されている」──そんな奇妙な構図が続いているのだ。 なぜアメリカは赤字でも崩れないのか?なぜ怒っているのに豊かでいられるのか?そんな問いをたどってみたい。 【1】赤字でも、困っていない国がある たしかに、貿易赤字という言葉には「負けている」「奪われている」という響きがある。でも、…