京都の母、さくちゃん、かく語りき 「波音(なみね)」と一言呼びかけて、わずかに間が空いた。モスグリーンのローバー・ミニの助手席にわたしを乗せ、真夜中の東名高速を京都に向けて走りながら、さくちゃんは静かに話し始める。1分ほど、いやもう少し静寂が続いたのか。息を潜めて、わたしは次の一言を待った。 「曲がりなりにも言葉を生業にしているわたしが思いの丈を込めて言うけれど、いざと言う時に言葉は無力ね。わたし自身の半分が持って行かれたようなこんな時に、あなたの心に寄り添える言葉ものひとつも見つけられないもの」と話して、さくちゃんは深くため息をつく。「その若さで母親を亡くしたあなたの悲しみは如何ばかりかと思…