中国の小説家。
1955年、中国山東省高密県生まれ。文化大革命のため5年で小学校を中退、1985年に『透明な人参』で作家デビュー。フォークナー、ガルシア・マルケスらの影響を受け、中国の大地に根ざした魔術的リアリズムの世界を描き、現代中国文学に新境地を開いている。
アジアでノーベル賞に最も近い作家の1人とされていたが、2012年10月にノーベル文学賞の受賞が決まった。
紅いコーリャン [DVD]
至福のとき [DVD]
故郷の香り [DVD]
莫言は自分の小説への影響作家として、ロマン・ロランとガルシア・マルケスをあげている。フランス文学とラテンアメリカ文学から学んだということだ。日本が近代文学をヨーロッパから学んだように、先行する文学を学ぶことから自らの文学修行を始めていることから、中国が世界の一員であることを私は再認識した。中国が世界文学へ登場してまだ日が浅いと考えるべきなのだろうか。中国にも村上春樹の読者は多いと聞く。「白い犬とブランコ」の犬は、川端康成の小説に登場した犬にインスパイヤーされたと語っている。旧ソ連が東西冷戦時代を作っていた頃も、ドストエフスキーやトルストイやチェーホフは日本で愛読されていた。高校時代熱心なドスト…
莫言(1955 - )。2012年、ノーベル文学賞を受賞。授賞理由は「幻覚的なリアリズムで民話・歴史・現在を融合させた」功績による。 最初に莫言を知ったのは、張芸謀(チャン・イーモウ)監督の映画『紅いコーリャン』の原作者としてだった。衝撃的な赤色を効果的に使いこなす、色彩主義の映画と理解した。 地平線までコーリャン畑が続く山東省の穀倉地帯(すなわち酒処)を舞台とする、主人公夫婦のロマンチックな物語は面白かったが、酒蔵杜氏のリーダーたる共産党員や後半にいたって侵入してくる「残虐」日本軍の描きかたが紋切型で、なんだか共産党のプロパガンダ映画の匂いもした。 短篇をひとつふたつ読んでから、『酒国』に出…
普段あまりYouTubeを見ない私にも、犬のおかげでついに推しチャンネルができた。遠藤エマさんの『エマ犬(けん)アカデミー』だ。ドッグトレーナーである遠藤エマ先生は、横浜で犬のトレーニング教室を主宰しているらしい。明るく楽しくハキハキした声。たまに、遠藤エマ先生は犬の物真似をする。ロープやおもちゃを使って犬と「引っ張りっこ」をしたときにだんだん興奮してきた犬が本能を思い出して唸りはじめる様子を真似る。また、仔犬やまだ若い犬がブラッシングのとき、そのブラシや人間の手にじゃれてだんだん興奮して甘噛みしようとする様子も真似たりする。例を挙げたこの2つ、どちらも私は犬との1週間の生活の中で経験しており…
豚まんに、飽きつつあり、最近どうも食指がのびない。パソコンに保存しているエクセルファイルには、行くべき豚まん屋をリストアップしていて、実はほとんどチェック済みなのだけれど、まだいくつか賞味できていない豚まんがある。まだ完走できていないのに、どうやら私は飽きてしまっているのである。とは言いつつも、頭の中ではケツを叩いているから、時が来たら再開するだろう。と、私は自分を信じている。 豚まんに飽きる理由は、思い当たることがある。豚まんとは、発酵させた生地で肉や野菜の餡を包み、蒸す料理。こうして簡単に説明するとシンプルだけれど、生地も千差万別、餡も店や作り手によってまったく味が違う。さらには、サイズも…
蛙鳴(あめい) 作者:莫 言 発売日: 2011/05/01 メディア: ハードカバー ★★★★★ 2002年。高密県東北郷。劇作家のオタマジャクシこと万足が、日本の作家に手紙を書く。彼は伯母を題材に演劇を書こうとしていた。万足の伯母は若い頃から産婦人科医として村の赤ん坊を取り上げてきており、1960年には戦闘機のパイロットと結婚するという噂が立った。ところが、そのパイロットは飛行機で台湾に亡命してしまう。やがて文化大革命が勃発、伯母は同僚の誣告によって吊るし上げられる。その後、伯母は農村の計画出産を指導するが……。 軍の党指導者から至急電報を示されました。妻の王仁美が第二児を孕んだというので…