この齢になるまで、これほど頻繁に冷麦を食った憶えはない。 蕎麦というものに、むやみに興味を抱いた齢ごろがあった。蕎麦粉の割合がどうの、太さ細さがどうの、歯応えや腰がどうの、産地や打ちかたがどうのと、いやはやおおいに話題を愉しんだものだった。うどんというものに、関心が移った齢ごろもあった。蕎麦の場合と同様に、あれこれの話題に耳を傾けた。 かといって生産にも製造にも手を染めたことはない。蕎麦打ちをご趣味となさるかたもあると聴くが、幸いにしてそこまでの深入りは免れた。 看病・介護の時期を了えて、独り飯の時代に入ってからは、飲食全般にわたって、付加価値への評価が眼に見えて下落していった。折紙つきの限定…