※フィクション※ ネオンと夜霧が交わる大阪の夜。私は息を潜めた。 「またいる…」 窓越しに見える影に、背筋が凍る。怒内緒(どないしよ)社に転勤して三ヶ月。東京とは違う空気に少し馴染んできたと思った矢先のことだった。 彼の存在に気づいたのは、先週の終業後。誰もいないはずのオフィスで、プリンターの横に立っていた人影。こちらを見ているのに目が合わない。そして次の瞬間、消えていた。 「もう帰りなよ!」 声を張り上げたものの、返事はない。怒内緒社のトップ営業マンで、関西弁の流暢さと笑顔で取引先を魅了する彼。普段は陽気なのに、なぜか私の前では沈黙を貫く。 逃げれば追いかけてくる。食堂で昼食を取っていると遠…