先日、書店に足を運んだ時、もう芥川賞の発表なのかと時間の流れを切実に感じた。つい最近、「バリ山行」や「サンショウウオの四十九日」に関する書評を書いた気がするというのに、もう次の作品が発表されている。そんな訳で、買わずにはいられなかったのがこの「デートピア DTOPIA」である。 「デートピア」という独特なタイトルであるが、私はこれを「ディートピア」と読むものと勘違いしていた。正しくは表題の通りで、作品内に登場するリアリティショーと同名である。貸し切りに近い離島で、男女の恋愛を扱った作品は、同じく芥川賞を取った「ゲーテはすべてを言った」とは真反対である。正直なところ、読む前はどちらかというと直木…