薄明かりに染まる部屋で、私はそっと筆を置いた。窓際の机には色褪せたスケッチブックと無数の植物の絵が並んでいる。それらは、私がこの狭い部屋から見た唯一の「外の世界」だった。風にそよぐ木々の音も、鳥たちのさえずりも、窓越しにしか届かない。私は高校時代のあの日以来、外に出る勇気を失っていた。 親友だと思っていた彼女に、あの一言を言われるまでは。「リナって、自分のことしか考えてないよね。」教室中が凍りつくような沈黙。笑い声。そして、それが真実だと信じてしまった私の愚かさ。 引きこもりになってからの生活は単調で、孤独そのものだった。けれど、植物画を描いているときだけは、少しだけ気が紛れた。絵筆で葉の繊細…