また馬鹿が「民主党沖縄ビジョン」についてアレコレいってる件について

id:hagakurekakugoさんの「国籍法改正反対ビラのスレッドが凄い事になっている件2」を読んでいたらそのビラに、国籍法のデマにまじってまたあの「民主党沖縄ビジョン」について大嘘が書かれていたのでウンザリ。いい加減にしろ。*1
というわけで備忘録的にここにその「大嘘」に対する反論を書いておく。一応「民主党沖縄ビジョン」に対するアレなデマは以下のような内容に集約されるんじゃねーかと思うので一例をあげておく。

民主党国民主権を否定しているんですか?

●沖縄の独立・一国二制度(←これも主権移譲ですよね?)
 (↑中国が東シナ海の資源欲しさに『沖縄って元々中国領じゃね?』って言い出した直後に言い出した政策)
外国人参政権
●3000万人ステイ・1000万人移民

ここまでくると、これを売国といわず何と言う?…と思うのは私だけですか?


マスコミによると、この党が最近支持を伸ばしてるんですよね・・・???

こういうやつね。

このネタ、何度も何度もゾンビのごとく蘇ってくるんだよな。激しくウザイ。で、馬鹿なヤツがあいも変わらず騙されて「売国政党民主党!」と吹き上がると。(同じだまされるならチャンネル桜に映画資金でも寄付してやれよ)ちなみに昔作られたFlashはこちら。

「沖縄・日本を守れFlash」(以下沖縄Flashと呼称)
http://specific-asian-flash.web.infoseek.co.jp/minshutou.html

で、これが流行った時期(郵政選挙の頃だっけ?)に私が書いた「沖縄・日本を守れ」Flashのでたらめ振りを取り上げた記事はこちら。

「沖縄・日本を守れ」Flashは愚の骨頂
http://pussycat.blog.so-net.ne.jp/2005-09-01-1

ネタ元の民主党の沖縄ビジョンはこちら。
http://www.dpj.or.jp/okinawavision/
http://www.dpj.or.jp/news/?num=10686

元々民主党の沖縄政策なんて自民党案からパクってきた実現性に乏しいもので、沖縄を中国に売り渡そうとしている!なんて変な煽りをやらずに、正攻法で自民党の受け売りと糾弾したほうが民主党のダメ政策ぶりを喧伝できるっていうのにな。

SF作家山本弘は、五島勉のインチキ「ノストラダムス」本にあっさり日本国民が騙された件について「読者は原典にあたってまで調べないものなんだ」といってたけれども(人は神に騙されたがっていると名言あり)その通りだなと思う。少しググれば過去の(民主党がパクったとおぼしき)自民沖縄政策案がでてくるっていうに、それでもそんな面倒なことをしてまで事実かどうか調べようとするやつなんて少ないのかもしれない。まあ事実かどうかはどうでもいいんだろうけどな。

ちなみにやり玉にあげられている民主党の沖縄ビジョンをやら憲法提言やらを読めば、いかにあのデマがインチキかつプロパガンダ的色彩をもつものかがよくわかる。以下以前書いたやつを下敷きにして書き進める。

■基地削減問題について
正直、沖縄の基地って減らしていいんじゃないか。中国がまず侵攻するのは台湾であるように思うので、必要なのは狭い島にこれ以上米軍基地を増設するよりも、台湾との軍事協力であるように思うんですがね。危険度でいうならば日本海側や九州の方が緊張度合いが強いのではないだろうか。(実際に拉致事件や日本漁船拿捕事件が起きている事実をふまえればということで、尖閣諸島中国籍の原潜による領海侵犯などを見逃してよいということでは決してない)
まあそんな個人的な感想はさておき、実質問題、自民党民主党も、つまり右も左も、沖縄の米軍基地は整理・縮小されることでは一致していると思われる。なぜなら2004年参議院選挙において自民党は公約として

二 沖縄における米軍施設・区域の整理・統合・縮小への取組み
SACO(沖縄における施設及び区域に関する特別委員会)最終報告を着実に実施し、沖縄県民の負担軽減に努めます。とくに普天間飛行場の移設・返還については、沖縄県及び地元自治体の理解と協力を得ながら代替施設協議会等において、早期に成果が得られるよう努力するとともに、北部振興策や基地跡地対策等にも積極的に取り組みます。

としており、2005年衆議院選挙での公約でも『米軍再編を通じた日米防衛協力を強化。沖縄など基地の地元負担軽減 』としています。今回の公約では特に「削減」と明示しておらず、「再編」としているだけなので、此をどう捉えるかという問題にはなるが、 ただ先に述べたとおり、元々小泉首相は米軍施設の移転による沖縄の負担軽減に意欲を示し、なおかつ普天間基地移設はもう米軍との合意ができているので、この場合の「再編」は沖縄の基地削減を含めた包括的な見直しという意味合いが強いのでは。参議院衆議院ときているので昔の話しだろ公約やマニフェスト破りは自民党の常とはいわずに、この連続性に着目して頂きたい。好むと好まざる望む望まないとに関わらず、どちらにしろ基地は縮小される傾向があるように思われる。なお民主党「沖縄ビジョン」では米軍を撤退させるとは書いてない。

■「3000万人移住、中国に乗っ取られる」という主張
問題の3000万人ステイ構想について、原文を引用すると

すなわち従来の大量輸送・大量消費型マスツーリズムといった環境面に負荷がかかる観光形態ではなく、自立的な持続可能な産業へ転換すると共に、アジアからの外国人を含む国際的観光地及び長期滞在型リゾート基地への転換を図り、各種コンベンションなどを通して観光客のみならずビジネスマンや学生等も含め幅広い年齢層が訪れる「3 千万人ステイ構想」(約1000 万人が2 泊3 日程度滞在することを念頭に計算)の実現に取り組む。

「ステイ」といっても移住し、永住権を与えるなどとは一言も書いてない。単に観光地として3000万人ぐらい誘致しましょうよ、という話としか読み取れないですな。しかも何年までに、といった努力目標が掲げられているわけでもないし、一人が何回も訪れた場合もおそらくカウントされるでしょう。だからどっちかというと白髪三千丈というか、それぐらい賑わう観光地にしますよ、という話でしかないんじゃないでしょうか。(ちなみに現在の沖縄は2004年で年間500万人ぐらいが訪れている)沖縄の観光が現在抱える問題として、確かに観光客は少しずつ増えてはいるけれども、ほとんどが格安ツアーだったり、あるいは2泊3日という短期滞在型で、特に最近はレンタカーで基本的な観光地を廻って終わりといった、あまり地域にお金が落ちてきにくい状況がある。(グラフによると観光客自体は右肩上がりで増えているものの、観光収入は平成10年をピークに減少傾向にある。)おそらくはこの部分を指摘しているのではないでしょうかね。しかしアレな人たちの主張を読んでいると、いつの間にか「3000万人の中国人が押し寄せる!」みたいな話になっていて、なんていうかある種の思想が丸見えでどうしたものやら。(ちなみにビザ免除を謳ってはいますが「台湾に対しては」という注意書き付き。東アジア人なら誰でも無問題とは、少なくともこの沖縄ビジョンには書いてない)

■無国籍児=中国の黒子(ヘイズ)という主張
ちなみに無国籍児云々という主張に該当する箇所をあげると

アメラジアン※8)だけでなく、無国籍児など多様化している国際児の教育を受ける権利の確立のため、公的助成を含めた教育環境の整備、及び養育費を確保するための米国との協定締結等の措置の実現を図る。

※8)アメラジアンとはAmerican と Asian の造語。アメリカ人とアジア人を両親にもつ子ども。特に日本では沖
縄においてアメリカ軍人および軍属と日本人女性との間に生まれた子どもを指す。

関連動画やアレな人たちの記述やら2ちゃんコピペを読むと「無国籍児とは密入国で親元がはっきりしない子どものことだ。国際児はなにを指しているのかよくわからない」と凄いことをいってますけれど、別に密入国じゃなくたって無国籍児は存在する。例えばこういうこと。米軍の移動によって比などの外国から沖縄へ来た女性がいたとする。赤子が生まれたが、しかし彼とはうまくいかず、子どもを置いて、女性だけ故郷に帰ってしまった。さてこの子は密入国なのか?このように、沖縄を考えるときに欠かせない米軍とその駐留家族。この部分の視点が欠落すると、わけのわからん不可思議な結論へと辿り着いてしまう。ミスリードを誘っているような気が。

そして国際児というのは、米軍駐留家族の子ども達であるのは文脈上間違いないといっていいだろう。なぜなら、米国との協定締結と謳っているのだから。(この「協定締結等を含めた」という「等」が米国にかかっているのか、協定締結という手段について含みをもたせているのかが、不明といえば不明だがこのあたりは官僚用語として致し方ないだろう)
なおアメラジアンの問題は沖縄で根深く残り、差別も消えないといわれている。とにかく中国で問題となっている黒子(ヘイズ。一人っ子政策のため表向きは生まれていないことになっている子どもたちのこと。多くは貧しい農村部で生じている。)ではいくらなんでもねえよって話。なんで中国の黒子について米国と協定締結しなければならんのか。根本的な疑問がわく。

このほか教育面の話では、「中国語を教えて中国人民化する」などと煽ってるけど、原文には『徹底した英語教育を行うと共に、中国語などの学習も含め、沖縄の「マルチリンガル化」を促進する。』とある。徹底した英語教育を行うのだから中国人民化よりも、イギリス・アメリカ人民化するような気がするのは私だけ?(既に新潟などでは環日本海構想により、中国語ロシア語など多各国語を選択肢として掲げ、学んでいたりするし、石川県立金沢辰巳丘高校では県が提唱する「環日本海文化圏構想」の一環で既に95年の段階で中国語専攻を設置していたりするなど、今はどこの自治体でも同じようなことをやっているようですな。ちなみに2003年5月の時点で中国語教育に取り組む学校は全国で475校。長崎県の離島壱岐にある県立壱岐高校では教育特区の認可を受け、2005年度から中国語専攻を設けている。ちなみに文科省の調べでは同じく2003年5月の時点で約42000人の生徒が英語以外の外国語を学んでおり、最も多いのは中国語19045人、フランス語8081人、朝鮮韓国語6476人と続く。平成17年9月18日付朝日新聞教育面より。)

■「一国二制度」という言葉と沖縄独立問題
あまり知られてない事実だが、本土復帰前に沖縄独立が唱えられその運動が一部で起きたことがある。ただ挫折した。それはやはり沖縄独立は現実的ではない、ということが島民の間では周知であったからに他ならない。島民は独立を支持しなかったという歴史がまずある。

さてこの事実をふまえ、「一国二制度」を考えてみる。少し長いが該当箇所を引用します。

民主党は、沖縄においては、「自立」型経済を推進するための土台作りに取り組み、「東アジア」の拠点の一つとなるようにその「島嶼性」を強みとして活かしながら、沖縄の優位性や独自性のある「歴史」や「自然」を活用することが重要であると考える。そのためには、東シナ海の中心に位置する沖縄が、中国、台湾と国境を接するがゆえに自立型経済構築のためにプラスとなるような制度をつくるとともに、その位置ゆえに考えられる様々な負担に対する政府としての応分な支援は当然に必要である。
本土復帰後の沖縄においては三次に亘る「沖縄振興開発計画」に基づいて振興が図られ、社会資本整備など一定の成果をあげてきた。一方、中央集権的で画一的な制度が沖縄においても適用され、中央の発想による公共事業が行われてきたため、補助金依存体質が強まり、同時に経済活動が本土、特に東京圏主導の構造になってきた。この構造から抜け出るためには、まず沖縄が独立の気概を持ち、中央政府がその気概を認めつつ、自立型経済構造を築き上げることが重要である。
この自立型経済を着実に構築するためには、地域主権パイロット・ケースとして「一国二制度」的に、各種制度を積極的に取り入れることも検討する必要がある。国庫補助負担金制度(ひもつき補助金)等を廃止し、一括交付金にすることも、まず沖縄県をモデル-3-として取り組むべきである。
また、FTZ(フリー・トレード・ゾーン)などが他地域と比べて優位性が見られない中途半端なものとなっており、競うべき・連携すべき対象を「東アジア」の国・地域等近隣国・地域に拡げるという視点が求められる。奄美諸島を含めた琉球弧として、個性豊かな伝統文化を内包する歴史、美しい海やサンゴ礁を有する島の魅力、やすらぎや健康・長寿をもたらす沖縄の自然、等を最大限活かしつつ、そのためのシナリオとして地域間交流、国際交流を積極的に進めることを目指した政策こそが、沖縄の真の自立と発展に寄与すると考える。
なお、地域主権を掲げる民主党は2002 年沖縄ビジョンから「沖縄は歴史的にも地理的にも独自性が高く、九州と統合した単位で検討するべきでないと判断し、単独の道または州とするべき」としてきた。ただし、政府の北海道道州制特区の中途半端な取り組み、地方分権推進委員会の後退した中間報告を見るにつけ、現在の政府のいわゆる「道州制」議論は単に霞ヶ関の官庁組織の地方移転に留まるものと言わざるを得ない。民主党の進める徹底した基礎的自治体への地方分権と現在の沖縄県を核とした、より「自立」的な取り組みを目指す。

この引用箇所を読むと、結構いいこといってんな、と思う。意味するところとしては、「小さな政府の実現」「地方でできることは地方で」ということとほぼ同じと思うのだが。

(しかし以前沖縄Flash騒動のときに見た「地域通貨発行は日銀が沖縄に一切関与しないことになる」との主張は一体どういう意味なんだろうか。今でも不思議。地域通貨は現在日本のあちこちでやってますが(例:東京早稲田の「アトム通貨」多摩ニュータウン「コモ」などおそらくは数百カ所で実施中)、それらの地域に日銀は介入してないのですか。そうですか。)

民主党の主張するところは、特区のような中途半端な形での振興策ではなく、沖縄が助成金に頼らずとも運営できるような「自立」を目指している、という事以外にはこの文章中からは読み取れない。それこそ今の沖縄が抱えている根本的な問題――高度経済成長期に本土へと組み込まれてしまい、助走から既にトップスピードで走り始めた本土と歩みを共にすることができず、取り残され、結局は恩恵を受けることが出来ずに放置されていた――を指摘し、自立へと促している。至極まっとうなアタリマエの主張といえよう。

でもって、あとは民主党の「憲法提言中間報告」にある『主権の移譲』文言に着目し、「だから民主党の最終目的は沖縄を乗っ取らせ、日本を解体することにある」などとしているが、実際この「憲法提言中間報告(要約版)」を見て頂くとわかるけれども、この「国家主権の移譲」というのは、もし東アジア共同体というような仕組み、枠組みが「将来的にできるとするならば」という、かなり曖昧で、かつ実現するかどうかもよくわからないような言ってみれば希望論とでもいったらいいのか、そういう意味合いでの話で、「だから民主党は中国様に沖縄を献上するのだ」という事ではない。第一「東アジア共同体構想」自体、自民党マニフェストにも載っている。(pdfファイル29Pのテーマ5:【世界に胸をはれる日本へ】を参照)だからどちらにしろ民主党が唱え始めた、ということではない。もちろん双方の思惑は別であるとは思うけれども。

また参考意見として「一国二制度は今さっき民主党が出してきたのではなく、90年代後半から一国二制度は案としてでている。(参考資料http://www.okinawatimes.co.j p/spe/ten970116.html)一国二制度は今まで与野党の間で審議されていたけれども、結局関税率だのなんだのと沖縄のみを優遇できないということで却下されてきた」ということもあるようだ。そのあたりは、元々、アイデア自体は青島都知事時代からあったが、銀行側が提訴した場合に勝てないかもしれないという理由で却下され、石原都知事がその案を流用し、導入したら懸念通りに提訴されてしまった「外形標準課税」と経緯が非常に似ていると思う。そしてそもそも「一国二制度」という案も沖縄財界からの政府への提言であったりして、そのあたりの経緯や背景を調べないと、この「一国二制度」について理解することは難しいのではないだろうか。

ただこの「民主党沖縄ビジョン(改訂)」に、変なところがないかというとそうではない。問題点は多い。だからこんな中国と絡めて叩くよりも、単純に政策的な面で瑕疵を挙げていった方が早いし確実なダメージを与えられると思う。一例を挙げれば、『「沖縄を活かす」産業による雇用創出機会の拡大と自立型経済の構築』という欄で独自の沖縄振興策を述べているが、かなり希望的観測にたちすぎているのではと思われる。3000万人もどうやって呼ぶつもりなのかと読み進めれば、「民謡酒場を核とした街作りを進める。」などと喜納昌吉先生直伝と思われる変な主張をしていたりして。「沖縄の自立」という理念は素晴らしいがその手段があまりにも稚拙すぎる。まあだが小渕元総理も基本的には「沖縄の自立」を目指していたとは思うし、平成12年の内閣府で既に「長期滞在型、ビザフリー」などをこの民主党案で骨子となっている政策は既に案件としてあがっているので、肝心のその理念自体が既出、政府案の焼き直しじゃねえか、というのはおいておいて。

主権の移譲は国家を売り渡すこと!と恐怖におびえている輩がいるってのにも驚愕する。EU的枠組みを作りましょーって言ってるだけなのにな。じゃあEUが「ひとつの国家」になったかというと全然違うわけで、ここの国家体制は当然のことながらあり、ある部分は主権を移譲して、国家間ではなくEUとして処理しようってことである。例えば輸入品に関税をどのくらいかけるべきか、ということを決めるとき、イギリスやフランスだけでは決めず「EU」という国家より上位の団体全体の会議等によって決められるということになり、イギリスやらフランスやらが他国からの干渉を受けずに独自に関税を決めるという国家主権は委譲されたことになるということ。放棄するのと移譲するのは根本的に違うということをまず理解できてないんだろうな。(なんつーかアレな人って「AはBも内包してるがCでもある」的な思考方法が苦手じゃねーかと思う)

国家主権と国民主権をごちゃ混ぜで考えているような人間になにをいってもわからんかもしれんけれども。まあだいたいこういうことなんですよ。

*1:実はこの記事は去年、2008年の8月に書いて塩漬けしておいたもの。すっかり忘れてたよ。まあ面倒なので多少手を加えた程度で公開することにした。