09Q3児童買春・児童ポルノ禁止法の改正に関する個人的なまとめ。

  • 【日本の議論】あの超有名写真集もアウト? 児童ポルノ禁止法改正の行方は…かみ合わない主張 (1/4ページ) - MSN産経ニュース

    『18歳未満の児童を撮影した「児童ポルノ」への規制を強化する児童買春・児童ポルノ禁止法の改正案が、衆議院解散に伴って廃案となった。』わけだが、それで終わらせて良い話ではないので、この記事はナイスまとめと思った。

    ■改正案の背景
    • 1996年にストックホルムで開かれた世界会議で、「規制を怠っている」と批判された。
    • 現在、個人が趣味で持つ「単純所持」を禁じていないのは、主要8カ国(G8)で日本とロシアだけとされる。
    • 「日本発の児童ポルノが全世界的に広がって、非難を受けている。単純所持の禁止は必要だ」

    まず、「XXなのは日本だけ」という論法は考慮に価しない。国際的な努力の足を引っ張るべきではないので、グローバルスタンダードにはなるたけ合わせべきだが、そんな理由で足並みを揃えた所で、迷惑なだけだろう。まず問うべきは「我々の社会は、それを、必要としているか?」だ。

    一方で、国内も安閑として居られる状況というわけでもないようだ。保護されべき児童は確実に存在する。

    上記によると、

    • 奈良県警が1月に摘発したファイル交換ソフトによる事件
      • 自営業の男が開設したサーバーにマニア約200人が群がっていた。
      • 交換されていた画像には5歳ぐらいの女児への強姦場面も。
      • 捜査員:「内容から親が撮ったとしか思えない」。
    • 6月に宮城県警が摘発した事件
      • パートの女が2歳の娘を裸にして撮影し売っていた。 ← 景気の悪化や非終身雇用の増加で、こうしたケースは増える可能性がある。
    • 昨年検挙された児童虐待事件の3割近くが性的虐待だった。
      • 82件で4年前の2・1倍。 ← 性的虐待とは話がずれるが「なぜ止められなかった!」と叩かれるのを恐れる人々が、過剰検挙に乗り出しているとする指摘もある。
      • 最も顕在化しにくい虐待とされ、実際は統計よりはるかに多いはずだ。 ← 実行者が親/親権者の場合、むちゃむちゃ顕在化しにくいだろう。
      • 以前精神科の閉鎖病棟で会った被害少女たちは、事件から何年たっても入退院や自殺未遂を繰り返し、
      • 一度製造されたデジタル画像はマニアの手から手へと渡り、被害児童をおびえさせている。
      • 審議入り前、レイプ場面を撮られた少女はこう訴えていた。「早く安心して眠りたい」

    手許ではあまり凄惨な写真というのは見た事無いんだがなぁ、、、と思っていたが、ファイル交換ソフトを使ってないからだろうか?(Oooの新版がでた時だけBTを使う。一日シードして切るというフリーライダー)。
    どちらかというと、児童保護の為には性的虐待を含めた「虐待の発見と被害児童の保護」が先決という気もする。これは異様に困難な課題なだけに、あまり「児童ポルノ」ばかりにフォーカスすんのもどうかとは思うが、もちろん、二次被害を放置して良いというものでもないだろう。こうした事件が増えてゆくのなら、通信検閲なども必要かもしれない。

    ■09Q3国会での争点
    自民 民主
    ◆単純所持問題 08/06月改正案】(第169回国会衆法32号)
    単純所持禁止
    「自己の性的好奇心を満たす目的」での所持に「1年以下の懲役か100万円以下の罰金

    葉梨康弘議員】
    (ネット上に)蓄積された児童ポルノは本当に大量なものがある。これをそのままにしておくと、写された子供たちは、おびえて一生過ごさなくてはいけない単純所持の禁止がどうしても必要だ
    09/03月対抗案
    単純所持禁止に反対。
    購入したり、繰り返し取得する場合に適用する「取得罪」が柱。

    枝野幸男議員】
    民主党単純所持の禁止は「恣意(しい)的な捜査につながりかねない」「つまり第三者が陥れるために勝手に児童ポルノを送りつけることもできる。それこそ、政権を持っている権力が野党の議員にそういうものを送りつけて逮捕できる」
    ※『ネット上の流布を放置しておくと写された子供たちは、おびえて一生過ごさなくてはいけない』これは大問題。
     しかし、その解決手段として、「単純所持の禁止」と「購入/反復入手の禁止」では、どちらがよりマシか?さらに、これらよりもっと巧い手はないのか?という検討は必要なものだ。
     「ただしいことだから」と拙速に事を進めると、往々にして「ただしくない結果」を産む。過剰規制は不足規制よりも悪い。なぜなら、不足規制は足せば済むのに対し、過剰規制は誤爆(不必要な犯罪者)を産みがちだから。仮に「単純所持」が規制すべき悪だとしても、限りある警察力が必要なところ(虐待の発見と被害児童の保護という困難な作業)で不足するようでは洒落にならない。
    サンタフェ問題
    (1991、宮沢りえ
    葉梨康弘
    サンタフェ』が児童ポルノに当たるんだということになれば、それは廃棄なりしていただければよろしいんじゃないかと思う
     →自民党案は廃棄のために法施行後1年の猶予期間アリ。
    「単なる保管で、自己の性的好奇心を満たす目的が明らかにないということであれば、当たらない場合もあるだろうと思う」
    枝野幸男
    「出版時、宮沢さんは18歳だったが、撮影時は17歳なのか18歳なのかわからない。あるいは、初期の関根(高橋)恵子の映画など、18歳未満の女性が裸になっているDVDも大手メーカーから出されてもいる。こういったものを、自分の家の中にあるか探して、全部捨てろということを与党は言うのか」
    ※『廃棄猶予期間』改正銃刀法では、北海道警が、同地で日常的に使用されてきた「牡蠣の殻むき」が違法になる、として廃棄を呼びかけている。これが秋葉原無差別殺傷のような犯罪の抑止に繋がるかというと、甚だギモンだ。これは北海道警の問題ではない。そこまで想定せずに改正法案を通した国会議員の問題だ。英語では議員の事を「Lawmaker」と言う。法律の製造者であるなら、法曹資格(というか「法」に対するある程度の造詣)は不可欠だろう。
     自民案では「個々のサクヒン」について、警察がこうした見解を出す、という事になるわけだが、なに『当たるんだという事になれば』とか他人事みたいにいってんだw!。その判断基準を「Lawmaker」が用意しなければ、現場の警察官に過大な負荷がかかり、また過大な権力が渡る。
     また宮沢りえさんにしても高橋恵子さんにしても、「現役トップアイドル時点」での「全裸の購入者*1」に「性的好奇心を満たす目的が明らかにない」という事は考え難い。さらにこれらの廃棄が児童保護に資する事も、考え難い。
     規制が必要であるとしても、誤爆上等では所期の目的を達し得ない。ちょっと葉梨議員の台詞は雑すぎるように思う。
    ◆人造画像問題
    (まんが・アニメ・ゲーム等)
    【背景】08Q4,リオデジャネイロ会議
     「子供と青少年の性的搾取に反対する世界会議」、過激な表現物も規制対象とすべきとの行動計画を策定
    【与党案】
    ゲームや漫画やアニメといった18歳未満を描いた作品についても、検討課題として調査研究すべき
    葉梨康弘
    法務委員会で「やはりゲームとかアニメでも、ひどいものはひどい。少なくとも、エビデンス(証拠・根拠)をそろえて研究はしていかねばならない」
    山谷えり子(参)】
    少女などに性暴力を振るう内容のゲームソフトの規制に向け勉強会を発足させることを明らかに。
    民主党案】
    民主党案には盛り込まれていない。そもそも児童ポルノ禁止法は実在する児童を保護するためのものというスタンスだから。
    「この法律は、児童の権利擁護を目的としている。実在の子供の被害者のいないアニメなどの問題は、この法律とは別として考えるべきだ」。
    【18歳未満を描いたサクヒン1:こどものじかん
    1. 朝日新聞の漫画評論コラムで「こどものじかん」が取り上げられる - [ 悠 々 日 記 ]
    2. こどものじかん7巻発売 「ガチで感じまくってて工口すぎるわ!(笑」 - アキバBlog
    3. こどものじかん - Wikipedia
     未読だが、ヒロインは小学生。「自己の性的好奇心を満たす目的」で所持する人もあれば、「こんなもの有害無益」と見る人もあるだろう。また、源氏物語になぞらえて称揚する人もあるようだ。実はその三者は、一読者の中に混在しており、そしてその配合比は、個人により多種多様である筈だ。

    【18歳未満を描いたサクヒン2:『眠れる惑星(ほし)』】
    1. セックス「しなきゃいけない」ハーレム状況のSFエロ作品。女だらけの中に男ひとりで何を思う? - メンズサイゾー
     これも未読だが、主人公は高校生だそうなので、彼がセックスする相手にも高校生が含まれているものと考える。
     上記では『陽気婢先生がこの世にいなかったら、私は自分の性欲を、もっと汚くて悪〜いものとしてしか捉えられなかったかもしれないと思う。』と絶賛している。しかし、シチュエーションは、『ある朝起きたら、世界中のみんなが眠っていた......というところから始まるこの作品。頭の中えっちなことでいっぱいのお年頃の淳平君、どうせ寝てるなら......とつい』というもの。これは外形的には「立派な性暴力だ!イクナイ!」と言い得る。

    【ひどいものはひどい】
     それはその通りだが、その線引きをどこで引くのか。誰がひくのか。どのような判断基準で引くのか。「ひどい創作画像」が児童虐待を惹起する可能性が「ゼロである」とは誰にも言い切れないが、「惹起する」という証明もまた無い。なにを以て「社会に悪影響を及ぼす」と判断するのか、充分な議論が必要だろう。

     イ)その際には、「社会的な許容範囲」は二つの要素で大きく変化する事も考慮して欲しい。
      1)「時流タイムシフト
    「社会的な許容範囲」は時流とともに激変する。『こどものじかん』のような描写は、1990には確実に社会的許容範囲の外だ。表現規制は、この「時流タイムシフト」に遅滞無く追随できるものでなくては、時間経過と共にどんどん過剰規制になってゆく。
      2)「文化圏プレイスシフト」
    「社会的な許容範囲」は地域や文化で大きく異なる。表現規制は、この「文化圏プレイスシフト」に適したものでなくてはならない。この意味で、「XXなのは日本だけ」という論法は考慮に価しない。国外で許容されない描写は国外で取り締まるべきものであって、国内の基準は国内の議論で生成されべきものだ。
     ロ)これを踏まえた上で。日本と欧米の表現規制の違いを考慮すべきだろう。

     そもそも創作物というものは、常に「社会的な許容範囲」のそとべりに位置し、常識や良識を揺さぶるものだ。それが「自分のアタマで考える」キッカケになるという効能を持っている。
     コレに対し、時に規制論が出るのは日本も欧米も同じ(というか寧ろ出るのが自然)だが、具体的な規制の「ありよう」は日本と欧米でやや異なる。仮に日本式を「空気駆動の自主規制サイクル」、欧米式は「論理駆動のディベートサイクル」とする。

    日本式)空気駆動の自主規制サイクル  欧米式)論理駆動のディベートサイクル
    • 世論沸騰→国会で問題化→主務官庁と業界団体で落としどころをさぐる→やがて形骸化→世論再沸騰(オプション)。
    • 世論沸騰→国会で議員(Lawmaker)が徹底的にバトる→法または法に準じる自主規制→時流タイムシフト→世論再沸騰(オプション)。
     まんが、アニメ、ゲームなどでは、法的根拠の曖昧な「自主規制」という形が採られている。
     これは創り手たちの「今なら大丈夫、このくらいなら大丈夫、この内容なら手塚さんにだって胸を張れるぜ!」という覚悟だけで変化し得る。
     社会がそれを受け入れるか否かは、「マーケットの売上げ」と、「批判団体の抗議」が決める。つまり「時流タイムシフト適応」に優れている。
     例えば米国では、アメコミやカートゥーンに緻密で厳格な事前規制を敷いている。
     これは創り手たちに「時流タイムシフト適応」を許さない。
     この結果、「今なら大丈夫、このくらいなら大丈夫、この内容なら手塚さんにだって胸を張れるぜ!」をやりたい人は「現代アート」に行く他なく、アメコミやカートゥーンは「十年一日状態」に留まっている。

     「ひどいもの」の基準を法律で定めて排除した場合、まんがやアニメやゲームは、アメコミやカートゥーンのような「十年一日状態」になる可能性が高い。
     児童保護の為に規制が必要というならやむを得ないが、蓮の華は泥に咲くものだ。泥をかき出せば、二度と咲く事はないだろう。
    ◆今後の見通し 【与党議員の秘書】
    「秋以降の国会で改正案を再提出することになるだろう。ただ、衆院選の結果によって内容も提出時期も左右される」

    ■現行法の問題
      甲南大学法科大学院園田寿教授(刑法)


    現行法では児童ポルノの定義がきわめてあいまいで、そのあたりを詰めた議論をしてほしい」

     現行の児童ポルノ禁止法による、18歳未満の子供が出演する児童ポルノの定義
    1. 性行の撮影
    2. 他人が児童の性器を触る行為や、児童が他人の性器を触る行為の撮影
    3. 衣服の全部または一部を着けない児童の姿態で性欲を興奮させるものの撮影
     例:水着少女の写真
    • 無問題:写真立てに入った自分の娘の写真
    • 問 題:ポルノ雑誌に載って扇情的な見出しがつけば、それは児童ポルノといえる。
     現行法では作中や媒体での扱われ方が問題となってくる。「単純所持について罰則を設けるのであれば『児童ポルノとはなにか』を定義しないといけないが、その当たりの深い議論がなされていない。アニメやゲームへ の規制も表現の自由との兼ね合いがあり、簡単な問題ではない。新政権の重要な課題として十分な議論を尽くしてほしい」
     規制の対象じたいが曖昧だという指摘だが、この曖昧さは、表現規制の実態が、「空気駆動の自主規制サイクル」である事を示唆するものと考える。
     日本の社会が「事実上の単一民族」で構成されているのなら、『作中や媒体での扱われ方』が問題か否か。すなわち「社会的な許容範囲」は「空気」で比較的容易に形成し得るだろう。

    ■参考
    サンセイ ハンタイ
    ◆国民の程度?
    唐沢 児童ポルノ法にしろそうだけど、“この法案が通過したら、それを逆手にとった悪質な犯罪がが起こるのでは”ってことまで論議されることが、日本って本当に少ない国だからね。とにかく“まず、通さなきゃいけない”って目を吊り上げて必死になっている人に、みんなひきずられてしまう。問題点を指摘すると、“じゃああなたは子供が性の犠牲になってもいいというのか!”と二者択一を迫られて、ワルモノにされてしまうんだな。
    本当は怖い臓器移植法案改正問題-社会派くんがゆく!|アスペクト ONLINE

    唐沢 問題はね、人権々々と空虚な権利主張が長年繰り返される段階で、本来の基本的人権の主張ですら、単なるワガママの言い立てというイメージが定着しているということなんだよ。ロリエロの表現の自由って、確かに表現の自由というレベルでは守られなくてはいけないことだけど、その表現を不快に思う自由を行使する人々との兼ね合いを常に考えないといけないことだろう? ところが、ロリ系の掲示板などを見てみるに、彼らはほとんど、自分たちの表現の自由しか言い立ててないのね。それぞれのいわゆる自由には、その価値観同士対立するものがあって、全ての自由が無制限に許されるものでない、ということくらい、常識でわかりそうなものなんだが、そこが全く論議の中に入っていない。
    幸福実現党と児童ポルノ法改正-社会派くんがゆく!|アスペクト ONLINE
     『“まず、通さなきゃいけない”って目を吊り上げて必死になっている人』の存在は洋の東西を問わない。そこに規制を『逆手にとった悪質な犯罪がが起こるのでは』という配慮を付加するには、冷静な*2専門家が必要だ。それは「Lawmaker(法律製造者=議員)+ロビイストを雇った各種勢力のバトル」でも良いだろうし、「官僚(法律と行政の専門家)が各種勢力の意見を集約して行政指導」でも良いだろう。
     なお、この指摘は、「表現の自由」を金科玉条化すんな(“じゃああなたは表現の自由が犠牲になってもいいというのか!"はヤメれ)という事でもある→。
     小学校の運動会にスンゲェ望遠レンズ持ち込む「誰の父兄でもないおっさん」を見たら、そりゃ「なんとかしなきゃ」と思うだろう。
    政党政治
    村崎 いやあ伝統的に自民党って、選挙前になるとやたらとポルノ関係を取り締まるものじゃん。あれやると、露骨に婦人票が伸びるらしいんだよ。だから選挙の事前運動の一種だと思って間違いない。
    唐沢 戦後、婦人層を必要以上に持ち上げてきた名残なのかね。昔、カストリ雑誌の「あまとりあ」が婦人議員から糾弾を受けて廃刊にされたときの話なんだけど、押鐘篤っていう、医学者なんだけどものすごい女性差別主義者で、常に「女はバカだ」って言い続けてきた人がその騒ぎを横で見て、「ほら見ろ、やっぱり女はバカだ」って言ったっていう記録がある(笑)。ま、いまさら躍起になって婦人票獲得に乗り出したところで、今回自民党惨敗なのは目に見えてると思うけど。
    幸福実現党と児童ポルノ法改正-社会派くんがゆく!|アスペクト ONLINE
     「政党政治」である以上、この問題は自民にも民主にも通底する可能性が高い。

*1:購入者が全裸とゆう意味でわない。

*2:非情と言っても良い