今日の産経ニュース(12/11分)(追記・訂正あり)

■【正論】歴史共鳴する日越の連帯強化を ジャーナリスト・井上和彦*1
http://www.sankei.com/column/news/151211/clm1512110001-n1.html
 何がどう共鳴してるんですかね。つきあいの長さ、深さから言えば「中韓の方が共鳴してる」。貿易額もベトナムより中韓の方がずっと多いでしょう。
ベトナム中韓と違って親日だ、戦争問題で非難しない」て単に経済小国だから抗議しづらいだけでしょうよ。
 ベトナムだって日本の侵略被害国のわけです。産経のような戦争正当化はベトナムだって不愉快千万でしょう。
 まあ、今や「ベトナム戦争での被害感情」を押し殺してベトナムが米国と経済交流する時代ですからね。

 ベトナムは、もとより東南アジアでも指折りの親日国家で、国民の対日感情はすこぶる良い。ところがベトナム共産党一党独裁による社会主義国であり、同盟国・アメリカが介入したかつてのベトナム戦争の強烈な印象が「ベトナム親日国」という実体の認識を阻んできた。

 阻んできたも何もベトナム戦争で「北ベトナム南ベトナムを侵略した」と非難し、カンボジア侵攻の時も「野蛮なカンボジア侵略」と非難してたのは当の産経でしょうに。
 最近も古森義久なんかは「産経のベトナム戦争での米国支持報道は正しかった」なんて産経紙上で書いてましたし。
 ただ一方で
1)ベトナム打倒なんてもはや現実性がない、また反共右翼が主張していたいわゆる「東南アジア共産ドミノ現象」もありえない(東南アジアの共産国ベトナム以外はラオスしかない)
2)ベトナムは経済成長してるようだから日本企業が進出して儲けよう
3)領土問題で中国ともめてるようだからうまくベトナムを中国封じ込めに利用しよう
という思惑からこういう事言い出す「にわかベトナムシンパ」もウヨの世界にはいるわけです。

 ベトナム独立運動家だったファン・ボイ・チャウ(潘佩珠)は、ベトナムの人々に「日本に行き、そして学べ」と呼びかけ、ベトナム人の日本留学運動である「東遊(ドンズー)運動」が始まった。
(中略)
 ところがインドシナを統治するフランスの圧力によって、日本政府は在日ベトナム人を帰国させることになった。

 結局、「民間人はともかく」政府としては「東南アジア独立運動支援」なんか何一つやっていないわけです。政府として「東南アジア独立」を言い出したのは1941年の太平洋戦争開戦が初めてでしかもその「独立」の言葉は侵略正当化のための虚言だったわけです。

 1945年8月15日、大東亜戦争終結しても、なお約800人の日本軍将兵ベトナムに残り、その多くがベトナム独立のために、インドシナ支配を再びもくろむフランス軍と戦ったのである。

・なお、太平洋戦争時の話ができないのは「太平洋戦争中日本はホーチミン*2と戦争してた」し、また「インドのチャンドラ・ボース*3」のような「親日勢力」をベトナムに作ることもできなかったからです。
・ちなみに色々な事情があったのでしょうが、「日中戦争終結しても」中国に残り、中国共産党軍に協力した日本人も存在しますがそれを産経はどう思うのか。そもそも「当時のベトナムはもちろんホーチミンを指導者と仰ぐ共産国」なんですが、産経的に「共産党支援」はOKなのか?
 いずれにせよこれらの日本人は「政府の命令で残ったわけではなく」、個人の意思で残ったわけです。産経が「日本のベトナム支援」として自慢するような話じゃない。

 ベトナムの日本への親近感は、アジアで両国だけ*4が強大なアメリカを相手に戦い、そして現在は、東シナ海南シナ海で軍拡著しい中国とそれぞれ対峙(たいじ)するなど、安全保障上の共通点に因るところも大きい。

 「ベトナムも日本も米国相手に戦争した点で親近感がある」て言われても「ウチは米国が攻め込んできたから自衛したんであって、好きで戦争したわけじゃないけど、日本は自分から真珠湾攻撃して米国との戦争を始めたんじゃないですか?」て向こうも「眼を丸くする」でしょう。
 つうか「米国と戦争したこと」を非難してたのが「ベトナム戦争当時の産経」でしょうにねえ(苦笑)。

 13世紀に遡れば、日本は2度の「元寇」を経験したが神風によって国難を切り抜けた。2度目の弘安の役(1281年)の後、元は1285年と1288年に大越(ベトナム)に来寇した。ところが英雄チャン・フン・ダオ陳興道)が元軍を見事に撃ち破ったのである。ダオはベトナムの危機を救ったが、同時に、日本に対して3度目が計画されていたとされる元寇を断念させたのだった。日本は、ベトナムに救われたともいえるのである。

 元寇まで持ち出してベトナム万歳するのには苦笑させられます。


■「通州事件ユネスコ記憶遺産に申請へ つくる会「世界に知ってほしい」 中国軍の邦人200人*5殺害
http://www.sankei.com/life/news/151211/lif1512110039-n1.html
 「また自民党の稲田辺りが馬鹿な事抜かしてるのか」と唖然としましたが現時点では「つくる会の運動」だそうです。まあ、今後、自民党の稲田あたりがのっかる危険性は否定できませんが。ちなみに今のつくる会の会長は「高池勝彦」だそうです。
 唖然ですね。
 「南京事件申請&登録」への「反日だの政治利用だのと言う非難」は一体何だったのか。
 もちろん「まともな申請」なら中国も反発はしないでしょうが「南京事件否定論河野談話否定論、大東亜戦争(太平洋戦争)アジア解放戦争論」の「つくる会の運動」て時点で「中国だって殺してる、日本だけが悪いんじゃないというげすな相殺論」を発動しようとしてることは見え透いてるわけです。
 確実に中国は反発するでしょうし、日中経済関係を考えたら「稲田辺りの『この運動を応援したい』などの放言を黙認すること*6」はありえても安倍政権が「政府として申請する」なんてことはさすがにしないでしょうね。

【追記】
(1)
 通州事件については
■『「通州事件」への視点』
http://www.geocities.jp/yu77799/tuushuu/tuushuu1.html
■『「通州事件」ー直接の引き金』
http://www.geocities.jp/yu77799/tuushuu/tuushuu2.html
を紹介しておきましょう。
 信夫清三郎氏*7の言葉を引用すれば

http://www.geocities.jp/yu77799/tuushuu/tuushuu1.html
通州事件は、飼犬に手を噛まれたような事件であり、不幸な事件であるとともに不名誉な事件であった。

のであり、コメント欄で「ねこ一世さん」も指摘していますがとても「日本の被害を単純に訴えられるような事件」ではありません。
(2)
はてなブックマークhttp://b.hatena.ne.jp/entry/www.sankei.com/life/news/151211/lif1512110039-n1.html)での産経批判も見ておきましょう(内容的には■『「通州事件」への視点』
http://www.geocities.jp/yu77799/tuushuu/tuushuu1.html
■『「通州事件」ー直接の引き金』
http://www.geocities.jp/yu77799/tuushuu/tuushuu2.htmlやコメント欄での「ねこ一世さん」の指摘とかぶりますが)。

id:hate_flag
以前の記事では「中国軍」だが今は「中国人部隊」に修正されている。中華民国軍や中国共産党軍ではなく日本の傀儡の冀東防共自治政府軍であることを産経は理解しているのだろう。(ミスリードしようとしてるけど)

 ネット上で「冀東防共自治政府保安隊て中国軍って言えるのかよ?」「中国国民党軍や中国共産党軍ならともかく」という批判が出たことに気付いての慌てての書き直しでしょう。しかしそれでも「冀東防共自治政府保安隊」とは絶対に書かない辺り産経らしい糞ぶりです。

id:tokatongtong
 アホだね〜。関東軍が作った傀儡政権下で中国主権を侵害する関税破壊貿易してたり、内蒙古で作ったアヘンを通州でヘロインに精製して中国国内でばらまいてたこととか、全部セットで記憶されることになっちゃうのに。

その辺りは
1)殺害だけ登録してもらう
2)日本軍の無法が現地中国人の反発を招いて事件を引き起こしたと言う事を全く理解してない
3)そもそも日本政府が申請しないことを見込んだ上で無責任に吠えてるだけ
のどれかでしょう。どれでも糞ですが。

id:D_Amon
 ウヨの信仰では通州事件南京事件を相殺できるものになっているからな。

 「やられたらやり返して何が悪い」という暴論に立たないと相殺できないと思うんですけどね。
 ただし
1)南京事件通州事件への報復ではない*8
2)「やられたからやり返す」なら米国の原爆投下や東京大空襲も「パールハーバー攻撃へのお返し」で正当化出来てしまう
んですが。

id:Gl17
 日本の植民地支配の悪政が、日本側傀儡軍の反乱を招き、移住自国民が多数犠牲に…という事件なので中国側は南京同様に賛同するのでは。

まあ、つくる会の「薄汚い動機(南京事件を免罪したい)」に不快感は感じるでしょうが
1)別に中国共産党軍の犯行じゃない
2)「冀東防共自治政府の反乱分子が悪い、日本全く悪くない」と言えるような事件じゃない
3)いずれにせよ南京事件の免罪に使える事件ではない
ということで別に反対はしないかも知れませんね。
(3)高池がつくる会会長になったと言うので他の役員についても確認してみます。

http://www.tsukurukai.com/aboutus/yakuin.html
副会長:皿木喜久(さらき・よしひさ)元産経新聞論説委員
 昭和22年鹿児島県生まれ。昭和46年京都大学文学部卒業後、産経新聞社入社。その後は京都支局、大阪本社社会部、東京本社政治部特集部長、論説委員を経て、平成26年特別記者、編集委員に就任。平成27年退社。産経新聞社時代には、『教科書が教えない歴史』シリーズ担当、『子供たちに伝えたい日本人の近現代史』を執筆。

 産経記者時代からつくる会とずぶずぶだった男、それも「つくる会とのつきあいのおかげか」論説委員長にまで出世*9した男・皿木が産経定年退職を機に「これでおおっぴらにつくる会の役員をやっても問題ないぜ」ということでしょう。
 まあ、産経とつくる会がずぶずぶなんて明々白々ですが、さすがの産経も現役記者を役員にすることは躊躇していたのでしょう。
 しかし皿木が定年退職後、見事に「つくる会副会長に天下った(?)」のを見て阿比留や安藤慶太も「俺達も定年まで何とか産経で勤めて定年退職したら皿木さんみたいにどっかに天下りたいなあ」と思ってるんでしょうね。

理事・井上寶護(いのうえ・ほうご) 日本会議広島理事
 他に宗教法人「国柱会」(http://www.kokuchukai.or.jp/)講師、「日本国体学会」(http://www.kokutaigakkai.com/)同人、「里見日本文化学研究所」研究員、「防人を励ます会」広島県理事。

 肩書きがウヨ団体ばかりで目眩がしますね。

*1:著書『尖閣武力衝突・日中もし戦わば』(2012年、飛鳥新社)、『日本が戦ってくれて感謝しています:アジアが賞賛する日本とあの戦争』(2013年、産経新聞出版)、『パラオはなぜ「世界一の親日国」なのか』(2015年、PHP研究所)など

*2:北ベトナム主席、ベトナム労働党主席

*3:自由インド仮政府国家主席インド国民軍最高司令官

*4:「だけが」て朝鮮戦争で「北朝鮮と中国」が米国とがちの戦争したことはどこに行ったんでしょうか?。また「米国のフィリピン植民地支配初期での、フィリピンでの軍事的反米闘争(まあ成功しなかったわけですが)」もどこかに行ってしまっています。

*5:ブクマでも指摘がありますが「200人の殺害で大問題」なら南京事件なんかもっと大問題ですけどね。あれは犠牲者200人なんて単位ではあり得ませんから(秦郁彦説ですら4万人)。しかも他にも三光作戦とか731部隊とか南京事件以外にも色々違法虐殺を旧日本軍はやらかしてるわけです。まあ、酷い奴になると「南京事件犠牲者は200人より少ない」と言い出すバカもいますけど。

*6:それだって問題ですが

*7:著書『「太平洋戦争」と「もう一つの太平洋戦争」:第二次大戦における日本と東南アジア』(1988年、勁草書房)、『聖断の歴史学』(1992年、勁草書房)など

*8:通州事件で反中国感情が高まり中国人に対する違法行為に対する抵抗感が薄れたと言う事が仮にあったとしても別に報復目的で起こった事件ではない

*9:阿比留とか安藤慶太とか皿木とかが出世するんだから福島香織とかある程度有能な記者がばからしくなって早期退職するのも分かります。