HDD

日本郵政・西川善文社長の「犯罪」を糺す

【特別寄稿】日本郵政西川善文社長の「犯罪」を糺す(上)
かんぽの宿」一括売却問題などで〝国民注目の人〟となった日本郵政株式会社・西川善文社長。もっとも、多くの国民は、この〝陰気くさい〟老齢の男の進退を注視しているに過ぎない。

もともと西川は、住友銀行の頭取であった。2001年、同行はさくら銀行と合併し、三井住友銀行に衣替えし、西川が初代頭取に就任した。それを10年遡る1991年には、西川は専務として、住友銀行「戦略金融統括部・融資三部」の総指揮をとっていた。「融資三部」は、同行の不良債権を処理するセクションで、安宅産業、平和相互銀行イトマンなど未処理の巨額不良債権がうず高く滞積していた。

この住友銀行の恥部は、〝西川案件〟として処理・封印された。その過程で、西川は指定暴力団住吉会企業舎弟であったフィクサー・故佐藤茂の助力を得ている。西川が住友銀行の頭取に就任した時、闇社会の住人はダーティーな西川でも頭取に就任できることに驚愕した。

こうして西川は、住友銀行の〝闇の部分〟を知り尽くす一方で、故佐藤茂を媒介とする闇社会への〝利益供与者〟でもあった。その利益供与先の一つは、5代目山口組・若頭の宅見勝(故人)に対する150億円である。

三井住友銀行の初代頭取に就任後のエポックメイキングとしては、同行の経営危機をゴールドマンサックスによる資本注入で乗り切ったことが挙げられる。しかし、このGSからの資本注入は、〝違法行為〟によって完遂されたのだ。

2002年12月11日、都内でゴールドマンサックスのCEOであるヘンリー・ポールソンとCOOのジョン・セインは、竹中平蔵金融担当大臣(=当時)、西川との間で四者会談を持った。その席上でGS側は、三井住友銀行は国有化しない、との言質を竹中からとり、03年1月に1500億円の資本注入が実行された。そして同年2月、GSの仲介で3500億円の優先株が注入された。

これは、明確なインサイダー取引であり、竹中のGS及び三井住友銀行に対する一種の利益供与であった。西川は、三井住友銀行の国有化を免れた最大の功労者であると同時に、GSに対する最大の利益供与者でもあった。

竹中は現職の金融担当大臣でありながら、外資であるGSに利益供与することは許されざる〝犯罪行為〟である。ちなみに、GSの真のオーナーは、ロックフェラーⅣ世である。つまり、アメリカ帝国主義を代表するロックフェラー家の日本における代弁人が竹中平蔵であり、その下手人が西川善文であった。



【特別寄稿】日本郵政西川善文社長の「犯罪」を糺す(下)
07年10月1日、郵政民営化によって、「独立行政法人郵政簡保機構」が誕生した。その資産は、郵便貯金約130兆円、簡易保険約110兆円。つまり、240兆円もの巨額資金を保有する世界最大の金融機関が誕生した。

この郵政簡保機構は旧勘定として日本郵政株式会社と分離されている。同機構には、旧郵政省の総務審議官であった平井正夫(日本データ通信協会理事長)が初代理事長に就任した。日本郵政と郵政簡保機構との分離は、国民の財産である同機構を〝捨て石〟として資本の餌食にするためである。

かつて道路公団民営化のプロセスでも、民営化会社と特殊法人日本高速道路保有・債務返済機構との分離があり、40兆円の債務がこの特殊法人に飛ばされた。また、国鉄の分割民営化では、旧清算事業団(承継団体=鉄道建設・運輸施設整備支援機構)に巨額債務が押しつけられ、結局、国民の血税であがなわれた過去を決して忘れてはいけない。我々は、郵政簡保機構の分離設立の裏にある真実を知るべきである。

郵政簡保機構は130兆円の資産を西川善文の息のかかった三井住友系の信託銀行に預託した。奇策を弄したマイナス10億円という入札額により、「日本トラスティサービス信託銀行」(以下、日本トラスティ)は、130兆円の資産を預かることに成功した。よほど悪知恵の働くアドバイザーが背後にいたのであろう。

日本トラスティの株主は3社のみである。三井住友系の「住友信託銀行」と「中央三井信託銀行」、そして国有化された「りそな銀行」が、それぞれ3分の1の株式を保有している。つまり、当時、権力者であった小泉純一郎竹中平蔵が、影響力を行使できる国有銀行たる「りそな銀行」と、西川善文の影響下にある住友信託と中央三井信託の3行が、日本トラスティのオーナーというわけだ。この日本トラスティは、小泉、竹中、西川の3者にとって、郵政簡保機構の巨額資金を移転させるハコとして最適であった。

日本トラスティは、宮内義彦が経営するオリックスを救済するため、株式を買い支え、結果、約15%を保有する同社の筆頭株主に躍り出ている。オリックスは、CDS指数が1912・50(09年2月20日現在)と異常な数値を示しており、有利子負債も5兆7000億円に達する。しかし、宮内は郵政民営化の功労者として、報酬を受け取り続けている。それがオリックス救済であり、国民の金が注ぎ込まれているのだ。

一葉散って天下の秋を知る。オリックス筆頭株主を知って郵政民営化の本質を知る。「郵政民営化」の本質とは、対米従属化と国内利権化のさらなる進展である。それが郵政資金による米国債の購入となる一方で、郵政資産の国内売却という形になってあらわれている。

ちなみに、日本郵政グループ各社の主な不動産だけでも、簿価で2兆8400億円に達する。この不動産の売却を利権化したのが西川善文であり、その実行部隊は旧三井住友銀行から引き抜いた「チーム西川」である。周知のように、横山邦男専務執行役が現場指揮官として暗躍した。物議を醸した「かんぽの宿」や「旧郵政物件」の不可解な売却問題は、西川および「チーム西川」らの経営責任が問われてしかるべきだ。

郵政の国内利権化を進める上で、〝マフィア銀行〟である旧住友銀行出身の西川善文は、もっとも相応しい人物だった。しかし、彼らが予想だにしなかった経済恐慌が世界を襲い、国内の政治・経済状況も完全に流動化をはじめた。小泉を筆頭とする「新自由主義」が政権内部でも動揺を来たしていることに、それは端的にあらわれている。

こうした政治・経済的な流動化が、日本郵政をめぐる利権問題を今回、〝スキャンダル〟の形をとって先鋭的に噴出させた。したがって、西川の辞任および「チーム西川」らの日本郵政からの排除は、様々な意味で今後の大きな試金石になろう。同時に小泉、竹中の「任命責任」も本来問われてしかるべきだが、今回の一連の問題がどのように決着していくのか、注視する必要がある。(完、敬称略)

【文責・企業犯罪研究会】