日経ビジネス誌8月18日号の特集とNBonlineの連続インタビューで扱われていた「さらば工学部」にあった“工学部離れ”の内容に驚愕した読者の方も多かったことだろう。
それにしても、今年の139人のリポートを読むのはつらかった。例年と違って面白いリポートが少ないのだ。
リポートの課題は、1つのプロジェクトを取り上げ、そのマネジメントの問題点を指摘し、改善策とその改善策の競争優位を説明するというものだった。
がっかりしたのは、ほとんどのリポートがプロジェクト・マネジメントとは全く関係ないことを書いたものだったからだ。教員に与えられた研究テーマに対して答えを出すソリューションのプロセスでのマネジメントを書いていたのだ。
正しいソリューション、つまり答えを出すためにもプロジェクト・マネジメント力が必要と言えなくもない。しかし、これは一番下のレベルのプロジェクト・マネジメントだ。ビジョンを実現したり、新しいモデルを創造するためのプロジェクト・マネジメント力を養うことの大切さを3時間も説明したのに、学生たちは身近な小さいテーマに入りたがるようだった。
大学でもソリューション力以外を鍛えるためのいろいろなチャンスがあるのだ。そのための環境づくりが大切だ。
工学部離れが言われて久しいが、その一因は工学部の教員が問題解決力(ソリューション力)を伸ばす姿勢に徹底していることにあるかもしれない。
20世紀の日本を支えてきた、このような問題解決型の技術者に対するインセンティブは高くなかったし、今もそうだ。
こうして、生涯年収は高くなくても、問題解決型で安心安全な職種として、冒険心や挑戦心の大きくない若者が工学部を選ぶ傾向が出てきた。
大学はそのような人材育成のためにカリキュラムを改編し、教員の意識を変え、ソリューション型の人材だけではなく、モデル創造型の人材育成を行うようにしなければならない。