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2016-12-30

今年読んだ本と仕事に役立つおすすめ5冊(2016年版)

意識的に行っている多読の結果報告と、その中でのおすすめを5冊紹介。(紹介している本は今年出版されたものに限っていません。)

ふりかえり

今年の1月末から、意識的に多読をするように心がけています。目標は年間50冊としていて、概ね一週間に一冊です。一応、「エンタテインメントやコミックは除く」という制約を課していますが、哲学系、社会系は含めていて、必ずしもビジネス書だけというわけではありません。結果、今年は55冊ということで、月によって凸凹はありますが、目標としては達成できたことになります。ただし、9月以降は失速しているので、来年は、あらためて計画的に進めないといけなさそうですね。結果的に読んだ本の一覧はこちらです。


読書の管理にはブクログを使っています。web本棚サービスを使って読みたい本を管理するのは初めてでしたが、数値目標を立てたときには、結果を記録するのは必須ですね。非公開の読書メモも書けるので、「あの本にこんなことが書いてあったな」と後から見直すにも便利です。


一覧をざっと見返すと、私自身がSIerから「エンタティンメント系総合商社」という位置づけのユーザー企業に転職したこともあり、分野としてはドメイン知識や組織論が中心で、IT関連も上流寄りになっています。分野の選択をある程度戦略的に行うことで、自分の頭の中にある「目次」が広げられたような気がしています。一方で、ドラッカーの『マネジメント』や、コッターの『リーダーシップ論』、グリーンリーフの『サーバントリーダーシップ』など、「その道の古典」と言える本は積んでるだけでまだ手が出ておらず、来年はこの辺りもきっちりと仕留めたいと思います。古典は一通り読んだうえで、新しく出版された本を読み重ねるような形を早く作りたいものです。


さて、これらの中から、「仕事」という観点で読んで頂きたいおすすめを5冊ピックアップしました。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

この本をきちんと読みたくて読書記録をはじめたと言っても過言ではないくらい昔から気になっていた一冊です。太平洋戦争について、敗戦の原因を日本軍の組織論に求めたうえで緻密に分析しているのですが、本書を貫く感情は「怒り」であり、それが本書をいわゆる組織論や軍事評論とはまったく別のものにしています。失敗から学び、それを繰り返さないことこそが祖先に対する敬意であるという強い意志が根底にあり、正直、仕事に「役立つ」と表現することがはばかられます。さらっと読める本ではありませんが、組織運営にすこしでも関わる人ならば読んでほしい一冊です。私も定期的に読み返したいと思います。

サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルマインドフルネス実践法

2016年5月出版。アンガーコントロールの本を探していて出会いました。瞑想術の本と言えなくはないのですが、「瞑想」という言葉から通常想起されるような脱現世的な価値観ではなく、ビジネスパーソンあるいは人と関わりながら生きる一人の人間として、心を平静に保ちながら人間関係を構築していくためのプラクティスです。大好きな一文を引用するなら、「相手の気持ちに同意することなく、それを理解し受け入れられるのは、発達した心のあかしだ」(p.243)です。それをできるようにするためのマインドフルネスなんですね。

あなたのチームは、機能してますか?

あなたのチームは、機能してますか?

あなたのチームは、機能してますか?

全体としては、小説仕立ての前半と、フレームワーク説明している後半の二部仕立てです。ポップなタイトルと表紙とは裏腹に、「なぜ組織がうまくいかなくなるのか」が実にロジカルにわかりやすく構造化されています。組織を立て直そう、と思う人にとって、「何を前提としてまずどこに取りかかるのか」は重要課題であり、そういう悩みに対して間違いなく一定の答えを与えてくれる本です。

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

"知的生産の「シンプルな本質」"という副題がまさに本書の内容を的確に表現しています。適切に「課題」を設定し、それに「解」を与えていくという活動をどのように行うべきかが緻密に書かれています。あるイシュー(課題)に対して、一心不乱に解の質を上げようとするのは労が多くして益の少ない活動であり、まずはイシューの質を高めるべきである、という考え方が基本になります。もうすこし一般化すれば、いわゆる「仮説」思考であり、とにかく目の前の作業に没頭するのではなく、まずは適切な仮説を持って物事に当たるべき、ということを前提とし、それを発展した形であるとも言えるでしょう。いずれにしても、筆者の結果へのコミットメントの強さが、本書を単なるハウツー本ではないものに押し上げています。

27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10

「27歳からのMBA」というタイトルが果たして的確だったのかと疑いたくなるほど、ビジネスパーソンであれば絶対に抑えておかなければいけない内容です。「論理的思考力とコミュニケーション力」という基礎力をベースに、企画提案力と実行力という二本柱について語られています。単なるノウハウに留まらず、マインドセットにまで言及しているのが素晴らしいですね。きわめて幅広い内容をコンパクトにまとめているため、一つ一つに関する記述は少なめですが、重要事項の網羅性は高く、その後勉強をするうえでの有益インデックスとなってくれます。

終わりに

他にもご紹介したい本はあるのですが、「50冊読んで5冊拾い上げる」ということに価値があるように思いますので、これに留めます。上記の中にまだお読みでない本があれば、ぜひ一度お手にとってください。


なお、今年読んで強く印象に残った本を最後にもう二冊挙げておきます。こちらは「仕事」とはまったく別の軸で読んで頂きたい本となります。

殺人犯はそこにいる (新潮文庫 し 53-2)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫 し 53-2)

小説ではありません。まだ記憶に新しい「足利事件」の背後で、執念を持って犯人に迫るジャーナリストの方の記録です。

2016年6月出版。出版当時は話題になりましたね。タイトルで敬遠されている方もいるかもしれませんが、人と接することにある種の難しさを感じているひとであれば、誰でも心に刺さる内容だと思います(上記、55冊のカウントからは外れています)。

2015-11-16

GxPで学んだ、ただ一つのこと

パラダイムを学ぶことと、実際にデリバリーすることとのバランスについて。あるいは転職報告。

導入

9月末を以て、グロースエクスパートナーズ株式会社を退職しました。4年と2ヶ月の間この会社にお世話になっていたことになりますが、その中できわめて多くの貴重な経験をさせていただいたと思っています。退職を決めてから、4年前に自分が書いたエントリ(SIを仕事にするということ)は何度か読み返しました。その中でGxPを表現した次の言葉は、今読んでも正しかったと思います。

ソフトウェアをデリバリーすることには、多くの「泥臭い作業」が伴います。そしてその「泥臭い作業」は本に書かれたり、語られたりすることがあまりない。それはたぶん、語るまでもなく当たり前のことであったり、語れるほどには言語化されていなかったり、語るほど面白くなかったりするせいでしょう。だからといって、「そういうこと」をしなくていいわけではない。このあたり、パラダイムと泥臭い作業をひっくるめた「デリバリー」の全体像が見えずに苦しんでいたわけですが、他にもそういう方はいるのではないかと思います。「バリューストリームの中で自分の手を動かしつつ」「企業をお客様として業務に使うアプリケーションを作る」ことができる場所があるんだということは、多くの方に伝えたいメッセージです。

この4年間のふりかえりとして、この文章にある「泥臭い作業」を言葉にしてみようとしてみたのですが、相変わらず「語るまでもなく当たり前のことであったり、語れるほどには言語化されていなかったり、語るほど面白くなかったり」したので、そのかわり、GxPで学んだマインドセットのようなものについて言葉にしていくことにします。おそらくそれは、自分が求めていた「パラダイムを学ぶことと実際にデリバリーすることとのバランス」にとって、欠かせない要素だったのだと思います。

納得して向き合う

その要素とは何か...と溜めるまでもなく見出しに書いてしまいましたが、「納得感」の一言に尽きます。「そうすることになっているから」「誰がそう言ったから」そういう理由で仕事を進めることは許されませんでしたし、納得できなければ誰に対してでも何かを言える文化だったと思います。では、納得とは何か。分解するなら、一つは「理解」もう一つは「説明」でしょう。どちらも同じコインの表と裏です。プロジェクトに対してなんらかコミットしようと思えば、この納得感を一定のレベルで確保しなければなりませんし、ましてや、プロジェクトのハンドルを握ろうと思えば、それを隅々にまで行き渡らせる必要があります。少し具体的に書いてみます。


「何を」「どのように」「いつまでに」「いくらで」「誰が」作るのか、それら複合した要素をプロジェクトとして組み立てるときにはツールが必要なのですが、この点に関する「これさえやれば大丈夫」という包括的なツールは、僕が知る限りありません。というより、「これさえやれば大丈夫」という感覚がそれ自体すでに危険です。


たとえば....「何を」に関して言うならば、ユースケースなりシナリオなりで対象システムが備えるべき「機能」を何らかのかたちで表現することは誰でもやっていることでしょう。しかし、作るものの性質に応じて、適した記述方法は変わります。画面とER図があればおおよそ大丈夫なこともあれば、なんらかのルールを表形式にまとめなければいけないこともあるでしょう。「設計書とは、あるいは要件定義書とはこのフォーマットで記載するものである」という固定化した発想からは確かに安心感は得られますが、確実に何かを取りこぼします。


さらに、その「何か」を具体的に「どのように」実現すべきかは、ハードウェア構成/ソフトウェアのモジュール構成等いくつかのビュー、いわゆるアーキテクチャで表現されることになりますが、分解された構成要素は「いつまでに」「いくらで」「誰が」というスケジュール/コスト/チームの根拠になります。アーキテクチャの方針によって複雑さは凝集することも点在することもあり、そういった実態を無視して引かれたスケジュールには現実性がありません。


他にもどういうドキュメントを書くのか、そのドキュメント同士はどうつながっているのか、テストとはどう関連するのか、テストの考え方は十分か、など考えなければいけないことを挙げていけばキリがありません。ただ、大切なのは、そういった個別の構成要素およびその関連性について、まずは自分が理解する必要がある、ということです。その理解は、計画時であればプロジェクト計画という作業結果ではなく、その作業を通じて、自分あるいはチームの中で醸成されるものです。そういった「理解」があって初めて、顧客に会社にあるいはチームに「説明」できるようになります。一会社員がプロジェクトに対して果たせる責任といえば、せいぜいがそういった説明責任だけなのです。逆に言えば、誰かのせいにせずに「こういった理由により自分はこれが正しいと考えている」と説明できる立場に立つことこそが、プロジェクトのハンドルを握るということなのだと思います。


余談ですが「自分がこう考えた」ということを基点に置くことは、プロジェクトに限らず、様々な面において後悔しないための一つの方法であるように思います。もちろん、ある種の後悔はするのですが、少なくとも自分のこととして引き受けて、誰かを恨まずに先に進むことはできますからね。そういうことをひっくるめての「納得感」ですね。


***


社員がそういう姿勢で仕事に臨むことについては、どんな企業であっても少なくとも経営陣は望んでいるような気がします。それが様々な事情や経緯で現場レベルで実践できなくなっているケースも多々あるのだと思います。そういうことを求めつつ大きな裁量と共に仕事を任せていただいたこと、また、チームのメンバーが皆、主体的に考え動いてくれたこと、そして、色々なものを放りだして去って行く僕を温かく送り出してくださったこと、そういったことすべてについて、深く感謝します。ありがとうございました。


その後

10月からは、中間流通を軸としたエンタテイメント総合商社の情報システム本部に勤務しています。立場が変わり、見えるものもだいぶ変わってきました。ユーザー側に移ったことにより、これまでできなかったことでできるようになったこともあると思います。ただ、根底にある「ものづくり」という本質はそう変わるものでもなく、これまでの経験を活かして引き続きがんばります。また、言葉を紡ぐ作業はこれからも続けていきたいと思いますので、どうかよろしくお願い致します。


ソフトウェアアーキテクチャの先に

最後に、少し宣伝めいたことを。10/1付で新しい翻訳書が出版されました。ちょうど転職のタイミングとなってしまいましたが、僕がGxP名義で出版する最後の翻訳書ということになります。編集の上野様、パートナーの岡澤さんにはいつものように多大なるご迷惑をおかけしました。また、10年前に書かれた本を訳させてほしいという私の勝手なお願いを引き受けてくださった翔泳社様に深くお礼申し上げます。


内容については、ゆうすけさん、今野さんのインタビューがこちらに掲載されていますので、興味のある方はどうかご覧ください。「結局のところ、アーキテクトは考えるという行為から逃れられない」という、ある種このエントリで書いてきた内容とつながるところがあるのですが、そういう、考えながら前に進もうとする人に対して、多くの気づきを与えてくれる名著だと思います。



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