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メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20160624(Fri)

[]雪に閉ざされたトルコの街で起こった反イスラム主義クーデターの顛末〜『雪』 雪に閉ざされたトルコの街で起こった反イスラム主義クーデターの顛末〜『雪』を含むブックマーク 雪に閉ざされたトルコの街で起こった反イスラム主義クーデターの顛末〜『雪』のブックマークコメント

■雪 / オルハン・パムク

雪

十二年ぶりに故郷トルコに戻った詩人Kaは、少女の連続自殺について記事を書くために地方都市カルスへ旅することになる。憧れの美女イペキ、近く実施される市長選挙に立候補しているその元夫、カリスマ的な魅力を持つイスラム主義者“群青”、彼を崇拝する若い学生たち…雪降る街で出会うさまざまな人たちは、取材を進めるKaの心に波紋を広げていく。ノーベル文学賞受賞作家が、現代トルコにおける政治と信仰を描く傑作。

1.

宗教とその教義というのは、求める所はシンプルなものである筈なのに、それを信仰するもの、それを語るものによってどんどん複雑化し難解なものになってゆく。これは宗教とその教義が発生から数百年を経て様々な歴史的状況の変化を体験しているのにもかかわらず、原典に固執し過ぎるか歴史の変化の中で生まれてしまう個々の矛盾をそのまま包含したままにしてしまうからなのだろう。

ここで例えば仏教なら細かな宗派に部派され、キリスト教も同様に部派しながら教会ヒエラルキーによる時代に合わせた統一見解を持とうとし、ユダヤ教は原典至上主義を貫き、一方ヒンドゥー教は「俺らインド人だから」というアイデンティティだけで遣り過ごす。しかしヒエラルキーを持たず基本的に民主主義的な筈のイスラム教はなぜかごたごたして見えてしまう。これは後続宗教として歴史の趨勢にまだ対応し切れていない部分があるのかもしれない。実の所キリスト教だって数百年前までは今のイスラム教と同じぐらいごたごたしながらも今があるのだ。

とはいえ、今現在ある一見イスラム教を巡って語られているようなごたごたというのは案外イスラム教の本質と関係ない部分で起こっていたりする。いい例が例のISILだろう。彼らの行っていることはイスラム教教義とはかけ離れたものだが、欧米キリスト教圏からの搾取とそれによって生まれる格差への憎悪と反発を、イスラムを語ることによって組織化した貧困ビジネスがその実態なのではないのか。

2.

トルコ人作家オルハン・パムクによる長編小説『雪』は、雪に閉ざされたトルコの小さな町で引き起こされたクーデターと、それに巻き込まれた中年の詩人とを描く物語である。クーデターはなぜ起こされたのか。それはイスラム原理主義者による市長暗殺に端を発する市長選挙で、イスラム主義系政党の候補者が当選有力視されていたからであり、それに対し共和主義と世俗主義の復権を画策する軍人を含む一派がクーデターを仕掛けたという訳なのだ。

一方主人公となる詩人、Kaと呼ばれる男はどのような人物なのか。彼はイスラム主義を貫こうとする女学生の連続自殺事件を取材しにドイツからやって来た男なのだが、もともとはトルコ人である。彼は基本的にはノンポリであり、また、町に住むかつての想いを寄せていた女性に再び会いたい、という個人的な理由も持っていた。そんな恋する中年でしかない文人の彼が、町に蠢く様々な政治的宗教的イデオロギーのなかで翻弄され、次第に悲劇へと引き寄せられてゆくのだ。

舞台となるトルコの町カルスは実際に存在する町だ。物語では連日連夜雪が降り積もり交通が絶たれ、外界とは隔絶された閉鎖環境として登場する。そしてその閉鎖環境の中でトルコが直面するありとあらゆる政治状況や宗教的対立があたかも縮図となったかのように立ち上るのだ。それはイスラム主義者、トルコ民族主義者、世俗主義、クルド民族主義者、社会主義者であり、近代化推進派、政教分離主義者、民主主義者、愛国者である。これらがひと所に集結し主義主張の鍔迫り合いをしている様は、収拾の付かないカオス的な現実の状況を示唆しつつも、一歩離れてみると(特に日本人読者のオレにとっては)どこか戯画化された滑稽さをうっすらと感じるのだ。

3.

さてそのカオスに投げ込まれた恋する中年ノンポリ男はなんなのかというと、近代化された西洋的な思考と生活の中で安寧として生きる「なんちゃってリベラル」だ。このちゃらんぽらんな主人公を通し、これらカオス的な主義主張の根底にあるのが豊かな生活を送る欧米への劣等感というルサンチマンであることが明らかになる。と同時に、欧米ではない我々とは何者なのか、というアイデンティティの揺らぎをも描くものでもある。彼らはそれによりオルタナティヴとしてのイスラム教に寄り添い先鋭化するが、これらルサンチマンもアイデンティティの危機も、実はイスラム教の本質とは関係の無いものだ。これは今現在のイスラム教を取り巻く状況とよく似ている。

では主人公はニュートラルな存在なのかと言うと決してそうでもない所がこの物語の醍醐味と言うかややこしさでもある。詩人である彼は暫く詩が書けなかったが、この町に来て降り積もる雪の幻想に触れインスピレーションを得、沢山の詩を書くことが出来るようになる。これをして彼はそもそもが無神論者だったくせに「アッラーの思し召しなのではないか」と思っちゃうのである。脳内で起こった至高体験を「神」へと短絡する。このナイーブさは詩人だからこそなのだろうが、そもそも宗教が何故起こるのかという現象の一端を皮肉に描いているような気がしてならない。

4.

しかも恋する中年ノンポリ男の彼は、ノンポリで無神論者なくせに恋する女にいいところを見せようとしてあたかも政治的で宗教的な男であるかのようにふるまい始めるのである。そう、主義主張なんて下半身の欲求によってコロコロ変わっちゃうのだ。これは主人公が対面するテロリスト、"群青"という男にも当てはまる。色男の彼はその下半身で女たちのイデオロギーを自らの都合のいいようにコントロールする。なんだ、宗教も政治もカンケ―ないじゃん、全部セックスまみれの話じゃん!ここでもまた、一見深刻な物語に皮相的で滑稽な要素が加味される。

いや、実の所、オルハン・パムクはそんな話を書いたわけでは無いと思う。これは作者の言うように十分政治的な物語なのだろうと思う。でも、ノンポリで無神論者で豊かな極東の国でテキトーに生きているだけのオレには、彼らのこじらせまくった主義主張と言うのが、直截で生々しい感情に屁理屈の煙幕を撒き散らして自らを正当化しようとしているだけのようにしか見えなかっのだ。とはいえ、「大きな状況」の中で翻弄される「小さな個人」のその卑屈な内面を抉り散らかした物語として、この『雪』は物凄い傑作なのだろうと思う。

なお、翻訳は【新訳】文庫本として早川書房から出ているものもあるが、このテキストは藤原書店から出された和久井路子訳のハードカヴァー版に基づく。和久井路子訳はなにかと評判が悪いようだが、奇妙にうねりのある文体であり、錯綜した心理が上手く表わされているように思えた。

雪

雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)

雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)

雪〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)

雪〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)

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20160623(Thu)

[]最近聴いたエレクトロニック・ミュージック 最近聴いたエレクトロニック・ミュージックを含むブックマーク 最近聴いたエレクトロニック・ミュージックのブックマークコメント

■Social Housing / Marquis Hawkes

Social Housing

Social Housing

ベルリンを拠点にするUK出身のハウス・プロデューサーMarquis Hawkesのデビュー・アルバムは、まず微妙にダサいアルバムアートワークが買いポイントだ。ハウスはダサいアートワークのものが意外と中身がカッコよかったりするが、これもドンピシャ、そんな1枚(このアートワーク、実はDJ T-1000ことAlan Oldhamが手掛けているらしい)。内容はシカゴハウス風味のドラムマシーンに80年代ファンク/R&Bのサンプルを重ねたサウンドだが、眩暈を起こさせるような幻惑的なループが実にクールであり現代的でもある。実にハウス的なのにベタベタにハウスではないのだ。これも最近お気に入りの1枚で今回またもや強力プッシュなアルバムだ。 《試聴》

■Topiary / Xeno & Oaklander

Topiary [12 inch Analog]

Topiary [12 inch Analog]

ブルックリンのシンセウェーヴ/ミニマルウェーヴ・デュオ Xeno & Oaklanderによる通算5作目になるアルバム。機械的なリズムにビリビリと響き渡るサイケデリックなシンセ・メロディ、それにアンニュイな女性ボーカルが乗る様は実にオールドスクールなニューウェーヴ・サウンドだが、なんだかこれが一周回って面白い。ポップではあるがどこか剥き出しで、そんな部分にアンダーグラウンドな匂いがする。シンセウェーヴ系は得意ではないのだが、これはなぜか気にいってよく聴いている。 《試聴》

■Good Luck And Do Your Best / Gold Panda

イギリス・ロンドン出身のプロデューサーGold Pandaのニューアルバム『Good Luck And Do Your Best』は非常にカラフルで多彩な音に満ち溢れた豊かな完成度のアルバムだ。その音はノスタルジックであると同時にスイートで夢見るようであるし、明るくポジティブであると同時にどこかセンチメンタルなロマンチックさがある。優しく暖かい曲調は製作したGold Panda自身も気さくでイイ奴なんだろなあとすら思わせる。お勧めの好盤。 《試聴》

■Levitate / Lone

ジャングル/ドラムンベースは昔「それしか聴かない」というほど好きだったが、聴き過ぎたのか飽きてしまい、ここ数年はご無沙汰である。マンチェスターを拠点に活動するプロデューサーMatthew CutlerによるプロジェクトLoneがR&Sからリリースしたニューアルバム『Levitate』はそんなジャングル/ドラムンベース・サウンドから始まるのだが、これが思いのほかいい。適度にテクノなフィーリングが散りばめられているからだろうか。ガチガチのドラムンじゃないのだ。アルバム自体も後半からアンビエント〜ミドルテンポなテクノを交え決して一本調子じゃない。そして全体的に爽快感満載。夏に向けて聴きたい1枚じゃないか。 《試聴》

■When I Was 14 / AFX/Nina Kraviz/Bjarki/PTU

When I Was 14

When I Was 14

ロシア出身の女性プロディーサーNina Kravizが主催するレーベルTripからリリースされたコンピレーション・アルバム。なんといっても目玉はAFXの曲だが、これは1995年に製作されSOUNDCLOUDにアップロードしていたものらしい。全体的にソリッドかつオールドスクールな響きを感じさせる曲が多く、その虚飾の無さが生々しい音像へと繋がっている。そしてなにより、このヤル気の全く感じさせないアルバム・ジャケットがいい。なんなんだこれは。お勧め。 《試聴》

■Karachi Files / V.A.

Karachi Files

Karachi Files

「カラチ・ファイルズ」というアルバム・タイトルにムスリム風のおっさんが写ったジャケット、「おおお遂にイスラミック・テクノの時代がやってきたか…」と思ったが、実際はドイツ発のアルバムなのらしい。ベルリン在住のAndiとHannesのTeichmann兄弟による新興レーベル「Noland」の第一弾コンピレーションで、パキスタン、モルディブ、ドイツ出身のミュージシャンによるプロジェクトなのだとか。まあパキスタン参加ということはカラチでは間違いない。とはいえイスラム神秘主義的な音とかそういうのではなく、普通によくできたテクノである。 《試聴》

■The Digging Remedy / Plaid

90年代初期から活動を続けるWarpの看板アーティストPlaidによる11枚目のアルバム。これだけ長くやっているなら1枚くらいアルバムを聴いているような気がするがあまり記憶がない。よく整理された音はさすがベテランだからだろうか、う〜んでも今ひとつ印象の薄いアルバムではあるなあ。 《試聴》

■Fabriclive 87: Groove Armada / Groove Armada/Various

FABRICLIVE 87: Groove Armada

FABRICLIVE 87: Groove Armada

Fabricliveの87はイギリスのテクノ・ユニットGroove Armada。Fabricliveにしては臭みの無いハウス中心の選曲かな。作業用である。 《試聴》

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20160622(Wed)

[]世界びっくり紀行『クレイジージャーニー Vol.2』を観た 世界びっくり紀行『クレイジージャーニー Vol.2』を観たを含むブックマーク 世界びっくり紀行『クレイジージャーニー Vol.2』を観たのブックマークコメント

クレイジージャーニー vol.2 [DVD]

今オレの中で「クレイジージャーニー」が熱い。「クレイジージャーニー」とはディープでマニアックな人たちによるディープでマニアックな探究の旅をドキュメントするTVバラエティのことだ。オレはDVDで観たのだが、その時の感想は「世界びっくり紀行『クレイジージャーニー』のDVDを観た - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ」を読んでもらいたい。なにしろ「21世紀の川口浩探検隊」とも呼べるような番組で、どれも驚くような内容が収められている。

この番組の素晴らしい所は、ナショナル・ジオグラフィックやNHKドキュメンタリーがやるような内容を、アカデミックさではなくあくまで下世話なバラエティとして見せてゆくこと、番組ごとに「クレイジーな旅」をする一人の個人にスポットライトを当てていることにある。内容の面白さと同時に人の面白さも伝えているのだ。

”下世話”というのは下品ということではない。「クレイジーな旅人」が現場で体験する生々しい感情を伝え、その人となりに肉薄する。さらに特殊な環境・地域の中にいる人々のあまり伝えられない営み、つまり排泄やセックスの在り方についても包み隠さずレポートする。なんとなればそれも文化だからだ。そういった人間臭さがいいのだ。

さてそんな「クレイジージャーニー」DVDのVol.2が発売された。内容については以下の通り:

【DISC 1】 (収録分数:60分)

◆丸山ゴンザレス「東洋一のスラム街&銃密造村に潜入」

危険地帯ジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、フィリピンの「東洋一のスラム街&銃密造村」へ

命がけの潜入旅。そこには、過酷な現実と、目を疑う恐怖の実態が広がっていた・・・。


佐藤健寿「奇界遺産×神秘の青く光る山」

世界中の奇妙な光景を集める「奇界遺産」フォトグラファー佐藤健寿の「神秘の青く光る山」撮影旅。

道中で見つけた「泥だらけの村」や「異世界過ぎて感動した奇界遺産ベスト5」も紹介!


<特別収録>丸山ゴンザレス&佐藤健寿「DVD発売記念イベント」

2016年1月31日に行われた、DVD発売記念トークイベントの模様を大放出!

イベントだけで話した新たな旅の話や番組の舞台裏を激白!


【DISC 2】 (収録分数:103分)

◆鍵井靖章「神秘とロマンの沈船探索」

1年の半分以上を海の撮影に費やし、世界中の海を撮り続ける水中写真家・鍵井靖章が「海底に眠る沈船探索」の旅へ。さらに、鍵井がこれまで撮影してきた色鮮やかな水中生物の数々も大公開!


◆ヨシダナギ 「アフリカの少数民族を愛する女性写真家~前編~」

15カ国で約200の少数民族を撮影してきた女性写真家・ヨシダナギが、エチオピアに暮らす、“世界一おしゃれな民族・スリ族"の元へ。辿り着くまでに数日を要するその道中には、驚きの文化の数々が!


◆ヨシダナギ 「アフリカの少数民族を愛する女性写真家~後編~」

女性写真家・ヨシダナギが、エチオピア・スリ族の元へ。しかし、突然の来訪者に心を開かないスリ族・・・。そこでヨシダは、自ら服を脱ぎ、彼らと同じ格好になることで、その距離を縮める。

ざっくり感想を書くと「東洋一のスラム街&銃密造村に潜入」は高温多湿な国のスラムのババッちさはヤヴァイよな……とつくづく思った。銃密造村の緊張感は盛り過ぎかなあ。今の所丸山ゴンザレスの危険地帯レポートはそんなに危険な気がしない。

アジア「罰当たり」旅行 改訂版

アジア「罰当たり」旅行 改訂版

「奇界遺産×神秘の青く光る山」佐藤健寿のレポート。硫黄鉱床が燃える事で"青く光る"ように見える山を紹介するが、確かに「奇界」の名に恥じない異様さ。同時にここで働く人たちの過酷さも伝わってくる。<特別収録>丸山ゴンザレス&佐藤健寿「DVD発売記念イベント」では「クレイジージャーニー」DVDの人気の程が伝わってファンとしても嬉しい。

奇界遺産

奇界遺産

「神秘とロマンの沈船探索」は第2次大戦の最中海に沈んだ日本海軍の"沈船"を撮り続ける水中カメラマン鍵井靖章のレポート。それほどクレイジーというものではないが、カメラマン鍵井のキャラが妙に爽やかな部分が逆に面白かった。

夢色の海

夢色の海

「アフリカの少数民族を愛する女性写真家」 は「アフリカ愛」が強すぎてカメラマンになってしまったヨシダナギのレポート。今回は「エチオピアで最もお洒落な民族・スリ族」の写真を撮りに行く。女一人でアフリカの奥地に出掛けるタフさも凄いが(ガイド等は同行する)「現地人と心の距離を縮めるため現地人と同じ格好をする(場合によっちゃ脱いじゃう)」という肝の座り方もいい。そんな彼女の撮る写真がまた素晴らしい。それにしてもエチオピアって高地だから首都アジスアベバあたりは平均気温が20度ぐらいだったりするんだな。勉強になった。

SURI COLLECTION

SURI COLLECTION

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20160621(Tue)

[]『クローバーフィールド』フランチャイズの低予算SFパニック映画『10クローバーフィールド・レーン』 『クローバーフィールド』フランチャイズの低予算SFパニック映画『10クローバーフィールド・レーン』を含むブックマーク 『クローバーフィールド』フランチャイズの低予算SFパニック映画『10クローバーフィールド・レーン』のブックマークコメント

■10クローバーフィールド・レーン (監督:ダン・トラクテンバーグ 2016年アメリカ映画)

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怪獣POV映画『クローバーフィールド』の続編とか言われている映画『10クローバーフィールド・レーン』を観てきました。しかしゴロの悪いタイトルですな。Twitterあたりではもうすっかり「テンクロ」なんていう「ももクロ」のバッタもんみたいな呼び方されておりますな。

内容のほうはと言うと、予告編だけからネタバレしない限りに申しますと、核シェルターの中にいる3人の男女の疑心暗鬼な心理劇ということになってます。シェルター作ったおっさんは「世界が大変なことになった!」と息巻いているけど、事故で意識不明のまま連れ込まれた女は「こいつ嘘言ってんじゃない?」と思ってるし、もう一人いる男は「おっさんの言ってる通りなんじゃないんすか?あれ?」という優柔不断だし、じゃあホントの所どうなの?というのがザックリした内容です。

で、まあ続編か?と言われると、いやあ別に続編だって言われなきゃあなんにも関係ない映画で通っちゃうよなあ、という内容だし、世界観も繋がっているようで繋がってないような気がするし、一体何なんだ?とは思うんですが、これはきっと誰か事情通の方がどこかで説明してくれてるのでしょう。個人的に思ったのは『クローバーフィールド』のフランチャイズで低予算のSFパニック物を作る、というのが製作のJ・J・エイブラムスの頭にあったのかな?ということです。

これは1作目が2500万ドル(約27億円)というハリウッドでは比較的低予算の製作費で1億7千万ドルという物凄い興行収入を上げたのにならい、この2作目は1500万ドル(約16億円)というさらに低い製作費で作られている所から感じたんですよね。『クローバーフィールド』のフランチャイズなら1作目以上の製作費を掛けてあの作品の物語的な続編を作ったほうが、話題性も併せてより高い収益を見込めそうに思うじゃないですか。そうじゃなくてあくまで低予算にこだわったのがこの作品なんじゃないかと思うんですよ。

でまあ、映画としてどうだったかというと、楽しめたことは楽しめたけどまあフツーかな、という出来ではあったんですけど、そこには『クローバーフィールド』の続編だっていうなら何かあるんじゃないか、という期待が肩透かし食らった、という部分もありますね。監禁サスペンスパートにしてもSFパートにしても悪くないとはいえ同様のジャンルの中で比べるなら特別新しいことをしているわけでもない。あと予告編で殆ど内容見せすぎていて、あれ以上でも以下でもなかった、というのもある。予想の範疇を超えるものが無くて、もっと「え、こんな展開だったの!?」と思わせてくれる部分が欲しかったというか。オレはあの予告編は実はフェイクで、ホントは全然違う話が展開するんじゃないか、とすら思ってたんですよ。

とはいえ、良いか悪いか、上手いか下手かは別として、J・J・エイブラムスにはコロッと騙された、という気は十分しましたね。意外とこのパターンで『クローバーフィールド』フランチャイズの作品をまた作っちゃうんじゃないか?という気すらしますね。次回がまた低予算かどうかはわかんないですが。あとは主演のメアリー・エリザベス・ウィンステッドがよかったかな、7人の邪悪な元カレがいる上にジョン・マクレーンの娘なのでやっぱり強いですが、やっぱりあの下着な姿に一番グッときましたね。

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20160620(Mon)

[]ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』を観に行った。 ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』を観に行った。を含むブックマーク ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』を観に行った。のブックマークコメント

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先日6月17日は相方さんと二人で渋谷の東急シアターオーブで公演されているブロードウェイ・ミュージカル、『ドリームガールズ』を観に行きました。丁度相方さんの誕生日が前日だったので、バースデー・プレゼントもちょっと兼ねていました。

実はブロードウェイどころかミュージカル自体これまで観に行ったことがなかったオレが、なんでまた今回観に行くことにしたのかというと、『ドリームガールズ』自体を映画で知っていたこと、ソウル・ミュージックが中心となる今作の曲を本場のブロードウェイ・アクターがソウルフルに歌うのを体験してみたかったこと、バックの演奏が生であるらしいということ、というのがありましたね。知らなかったんですが歌詞や台詞も字幕が付くというじゃないですか。

ドリームガールズ』は60年代のアメリカ・ショウビジネス界の裏と表を舞台に、ある黒人女性ボーカル・トリオの栄光と挫折を描いたものです。モデルとなっているのは伝説のR&Bヴォーカル・トリオ、シュープリームス(調べたら今は「スプリームス」って言うんですね?)。

ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』は、『コーラスライン』の振付・演出を手掛けた天才マイケル・ベネットの遺作ともなった、伝説的ミュージカルです。ある女性トリオのサクセス・ストーリーを基に、華やかなショービジネスの裏側にある人間模様、栄光、挫折、中傷、友情、野望をドラマティックに描いた傑作です。

2006年、ビヨンセジェニファー・ハドソンジェイミー・フォックスエディ・マーフィら豪華キャストで映画化され、世界的なドリームガールズ旋風を巻き起こしました。

JIM BEAM presents ブロードウェイ・ミュージカル ドリームガールズ | 東急シアターオーブ|TOKYU THEATRE Orb

舞台は6時開演で、第1部が70分、休憩が20分、第2部が60分という構成でした。帰りは9時ぐらいになっちゃたかな。

初めてのミュージカルだったんですが、やはり生の歌は圧巻でしたね。生歌というならコンサートも同様なんですが、ミュージカルは1曲1曲聴くというのではなく、物語を追いながら観ていくので別の面白さがありました。全編にわたって歌と音楽が殆ど途切れることなく演じられるてゆくというのも独特の緊張感を生んでいて面白かったです。また、舞台背景にはLEDが使われているらしく、カラフルで変幻自在な効果を生んでいて目を奪われました。生演奏のほうはバックでやられていたようですが、これはカーテンコールの時にスタジオの映像が出てきてミュージシャンたちの姿を観ることができました。

なにより凄かったのは主演のエフィー・ホワイト役モヤ・アンジェラのパワフル極まりないソウル・ヴォーカルですね。いやこんな声をよく出せるもんだなあ、と圧倒されまくりでした。

映画『ドリームガールズ』と舞台との違いはこのエフィー役の扱いでしょう。映画版ではダイアナ・ロスをモデルとしたディーナ・ジョーンズ役が中心となっており、さらにビヨンセが演じたということも相まって、「ヴォーカル・グループ"ドリームス"から外された女」であるエフィーは物語の中心という訳ではなかったんですよね。しかし舞台ではこのエフィーを中心とし、我が強いばかりにグループから外され孤独と挫折を味わいながらも、最終的にそんな自分を乗り越えグループと和解し友情を取り戻す、といった内容になっていました。

物語の内容がショウビズ界のドロドロした裏側や人間関係が中心となっており、「とても楽しかった!」というようなものではなかったにせよ、こういった形で友情の復権を描いて見せた所が自分としては新鮮でした。

DREAM GIRLS/ドリームガールズ 2016 公式ホームページ / チケット情報など / 2016年6月上演

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20160617(Fri)

[][]インドのリーサル・ウェポン、サニー・デーオールが暴れ狂うアクション映画『Ghayal Once Again』! インドのリーサル・ウェポン、サニー・デーオールが暴れ狂うアクション映画『Ghayal Once Again』!を含むブックマーク インドのリーサル・ウェポン、サニー・デーオールが暴れ狂うアクション映画『Ghayal Once Again』!のブックマークコメント

■Ghayal Once Again (監督:サニー・デーオール 2016年インド映画)

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サニー・デーオールといえばオレの中では映画『Gadar: Ek Prem Katha』(2001)がなにより記憶に残っている。印パ分離の悲劇を狂ったような大殺戮アクションに変えてしまったトンデモストーリーにも唖然とさせられたが、なによりサニー・デーオールの手負いの熊みたいな手の付けられない激情ぶりに度肝を抜かれたのだ。なんなんだこの俳優は……と思っていたがどうやらそういった激情タイプのトンデモアクションを得意とする人なのらしい。

そのサニー・デーオールの久々の新作アクションが到着したというからこれは観ねばなるまい、と思った次第である。ただし今作は『Ghayal』(1990)という作品の続編なのらしいがそっちは観ていない。

《物語》過去の恐ろしい事件(これが前作なのらしい)により精神を病み療養していたアジャイ・メーラ(サニー・デーオール)はなんとか社会復帰できるまでに回復し、今は新聞社に勤めていた。そんな彼は社会の敵を撲滅する秘密結社で働くというもう一つの顔も持っていた。ある日彼の恩師である警察官ジョー・デスーザ(オーム・プリー)の交通事故死を知り涙に暮れるアジャイだったが、実はそれが事故に見せかけた謀殺だったことを知る。その殺人現場をたまたま撮影していた若者たちがいたのだ。しかしその殺人に関わっていたのは州首相のラージ・バンサル(ナレンドラ・ジャー)とその息子であり、証拠隠滅の為にビデオを持つ若者たちの誘拐を私兵たちに命じていた。アジャイは絶体絶命の危機にある若者たちを救うことが出来るのか、そしてビデオを手に入れられるのか。

実に痛快なアクション娯楽作だった。前半まではアジャイの過去の事件に対する葛藤や、フラッシュバックに苦しめられる様子が描かれ、この辺前作の経緯を知らない自分は若干置いてけぼりを食らったが、「なんかいろいろ辛いことがあった」程度のことは理解できた。また、裏の秘密結社の様子もこの前半部では物語られる。ただしここまでは状況説明に終始してしまう為にもっさりとした展開が暫く続いてしまうのは否めない。しかし、中盤も間もなくになり、州首相バンサルの悪事が発覚し、こいつが己の権力をあらん限り駆使して証拠隠滅に走り出す頃から物語に強烈なドライブが掛かり始める。なにしろこのバンサルという男、政府機関を私物化し、さらに黒スーツに身を包んだ私兵まで擁しているから始末に負えない。身の危険を察したブロガーの少年少女は逃走を始めるが、バンサルの魔の手は執拗に彼らを追跡する!

そしてここからの止められない止まらないアジャイのノンストップ・アクションがとてつもなく素晴らしい!GPSや監視カメラを駆使した悪党どもの追撃とカーチェイス、追いつめられるブロガー少年少女、そこに登場したアジャイによる反撃、そして一個のHDを巡っての、アジャイと残忍な私兵たちとの市街を縦横無尽に駆け巡る追跡逃走劇が展開する。車にはねられ電車に接触し、しまいには突き進む鉄道に飛び乗っての鉄拳の応酬、このシークエンスだけでなんと30分以上だ!アクション演出は手堅くそつがなく、インドアクションにありがちな大袈裟で見栄えのいいワイヤーやCGに頼ることなく、ただひたすら肉体の限界に挑み拳のパワーを駆使しながら、満身創痍になりつつも走り飛び敵に鉄拳を打ち込む!もう王道とも言えるアクションが展開しているのだ。

確かに物語には新しいものは無く、地道なアクション描写はとりたてて画期的なものだということはないにしても、この手堅い王道さにはちょっと昔のハリウッドB級アクション作品の爽快さを感じてしまったのだ。実の所インドアクションは飛び道具的な面白演出はあっても通常はどこか一本調子で、ボリウッド大御所出演作を除けばこういった作り込まれたアクションはこれまで少なかったように思う。これをしてハリウッドに追いついたような言い方はしたくないが、それにしてもよく研究してここまで遜色のないアクション演出まで到達することが出来なたあ、と感心したのだ。そういった部分でこの『Ghayal Once Again』はインドアクションの新たなる叩き台として非常に価値のある作品だと感じたのだ。

そしてなにより主演のサニー・デーオールがいい。熊みたいなもっさり体形のしょぼいオッサンが、髭面の顔を苦悶で歪ませ、生傷だらけの身体を限界までふりしぼりつつ敵を追い続ける!この、「見た目はしょぼいがやるときはやるオッサン」の雄々しさが、画面の隅々から臭いたってくるのである。もとより、サニー・デーオールのどこか草臥れたその風情は、フランスのノワール映画にしょっちゅう登場する小汚いヨーロッパ人主人公と相通じるものを感じるのだ。なにも映画の主人公はジムで作ったガチムチ体形をみせびらかす水も滴る若い男ばかりである必要などどこにもないのだ。そしてこの映画における主人公アジャイの石に齧りついてでも敵を追い続けるしつこさと体力は、ある意味オッサンの持つしつこさと持久力に他ならないのではないか。こういった「小汚く素晴らしいオッサン」像としてサニー・デーオールは輝いていた。

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20160616(Thu)

[][]栄光を掴むため戦いに挑む負け犬コーチと新人女子ボクサーのスポ根ムービー『Saala Khadoos』 栄光を掴むため戦いに挑む負け犬コーチと新人女子ボクサーのスポ根ムービー『Saala Khadoos』を含むブックマーク 栄光を掴むため戦いに挑む負け犬コーチと新人女子ボクサーのスポ根ムービー『Saala Khadoos』のブックマークコメント

■Saala Khadoos (監督:スダー・コーンガー 2016年インド映画)

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負け犬ボクシングコーチと彼が見出した女子ボクサーとが、様々な困難を経ながら勝利への階段を上ってゆくというスポ根映画『Saala Khadoos』です。

主演となるコーチ役に『きっと、うまくいく』で眼鏡をかけた丸顔の青年ファラン・クレイシーを演じたR. マーダヴァン。でもその彼が大変身しているんですよ!そして女子ボクサー役にリティカー・シン。実は彼女、本当に総合格闘技とキックボクシングで戦うファイターで、今回オーディションにより主演女優に抜擢されたというわけです。だから格闘シーンはお手ものですね!それと今作、製作に『pk』『きっと、うまくいく』のラージクマール・ヒラニーが参加しているのも注目ですね。

《物語》デリーに住むアディ(R. マーダヴァン)は実力のあるボクサーだったが、ボクシング協会の腐敗した政治体質により選手生命を絶たれていた。10年後、女子ボクシングチームのコーチとなった彼だが、またしても協会の横槍が入り、チェンナイに飛ばされてしまう。しかしアディはその地で、素晴らしいボクシング素質を持った漁師の娘マディ(リティカー・シン)を見出す。始めはやる気を見せなかったマディだが、いつしかボクシングの魅力に目覚め、実力を開花させてゆく。しかし、陰湿なデリーのボクシング協会はそんな二人を見逃してはいなかった。

インド映画で女子プロボクシングというとプリヤンカー・チョープラー出演の『Mary Kom』(2014)という作品がありました。これは「インドボクシング界で最も成功した選手のひとり」と呼ばれる女性、マリー・コンの半生を描くスポーツ伝記ドラマで、「女性が格闘スポーツと家庭を両立させ、さらに社会から認められること」という女性映画的な側面がありました。

プリヤンカー・チョープラーが実在の女性ボクサーを演じる伝記映画『Mary Kom』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ (監督:オムング・クマール 2014年インド映画)

一方この『Saala Khadoos』は「事実からインスパイアされた」とありますが、基本的にスポ根モノの王道を行く作品ということが出来るでしょう。

まずなにしろマディのキャラがいい。負けん気が強く試合では闘志剥き出しの表情を見せる彼女ですが、普段はとても素直であっけらかんとした素顔を持つ陽性キャラ。余計な情念を持っていない部分もいいですね。コーチに恋心を抱いちゃうなんてエピソードも可愛らしいじゃないですか。もちろん試合中の動きは流石本物のファイターだけあって遜色在りません。演じるリティカー・シンは十分魅力的で今後彼女をどんな映画で生かすことが出来るか楽しみです。

そんなリティカーさんが本職のキックボクシング試合をしている映像はこちら!(映画じゃないですよ)

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一方アディは見た目通りどこまでも男臭く逞しく、有無を言わせぬ鬼コーチぶりを見せますが、ふと見せる包容力に溢れた態度に惚れそうです。そんな二人の共通点はかっとなり易くすぐ暴れ出すところ!まあなにしろ王道スポ根ムービーなので展開は定番通りに進みますが、やっぱりクライマックスに向かうにつれ物語はどんどん熱くなり試合は熾烈を極め、観ているこっちもすっかり物語にのめり込んで二人に歓声を送ることになります。途中「絶対あしたのジョー読んでるだろ!?」という展開があってニヤリとさせられますよ!

それと主な舞台となるのが南インド、チェンナイというのがいいですね。主人公マディはチェンナイの貧しい人々の住む地域で暮らし魚を獲ったり売ったりして生活していましたが、貧しいとはいえこの生活感がなんだか観ていて馴染むんですよ。チェンナイという場所の開放感溢れるロケーションがそう思わせるのかもしれません。最初はマディのボクシング生活に関心を持たなかった彼女の父親が、試合を経るにつれ娘に大歓声を送るようになる様は泣かせます。

それにしても何故チェンナイなのでしょう?Webサイト「THE HINDU」の「Rolling with the punches」という記事を読んだところ(英文)、もともと北チェンナイでは女子ボクシングが非常に盛んなのだそうなんですね。それは世界の様々なゲットーから生まれるボクサーと同じように、プロボクサーになることが、貧困から抜け出すことのできる大きなチャンスの一つだからだというのです。北チェンナイのボクシングはモハメド・アリ人気が手伝って70年代から盛んになり始めましたが、90年代後半から女子選手が現れるようになり、政府もそれに助成を行っているようなんですね。

そして最後に言いたいのは、なにしろ主演のR・マーダヴァンの変わりようですよ!『きっと、うまくいく』や『Tanu Weds Manu』の時はこんなだったのに、

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今回なんかこんな髭もじゃガチムチな上に、探したらこんな色男写真までありましたよ!?これホントにマーダヴァンなんですか?固太り体型のオレもこんな髭生やせば色男になれますかね……?

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