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メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20160526(Thu)

[]台湾の作家・呉明益による短編集『歩道橋の魔術師』を読んだ。 台湾の作家・呉明益による短編集『歩道橋の魔術師』を読んだ。を含むブックマーク 台湾の作家・呉明益による短編集『歩道橋の魔術師』を読んだ。のブックマークコメント

■歩道橋の魔術師 / 呉明益

歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)

1979年、台北。西門町と台北駅の間、幹線道路にそって壁のように立ち並ぶ「中華商場」。物売りが立つ商場の歩道橋には、子供たちに不思議なマジックを披露する「魔術師」がいた――。現代台湾文学を牽引し、国外での評価も高まりつつある、今もっとも旬な若手による連作短篇集。

 現在の「ぼく」「わたし」がふとしたきっかけで旧友と出会い、「中華商場」で育った幼年期を思い出し、語り合ううち、「魔術師」をめぐる記憶が次第に甦る。歩道橋で靴を売っていた少年、親と喧嘩して商場から3か月姿を消した少年、石獅子に呪われ、火事となった家で唯一生き残った少女と鍵屋の息子の初恋……。人生と現実のはざまで、商場の子供たちは逃げ場所やよりどころを魔術師に求める。彼はその謎めいた「魔術」で、子供たちに不思議な出来事を体験させることになる。

 日本の読者には「昭和」を思い出させるような台湾らしい生活感と懐かしさが全篇に漂う。語り手の静かな回想が呼び込む、リアルな日常と地続きで起こる幻想的な出来事。精緻な描写力と構成によって、子供時代のささやかなエピソードがノスタルジックな寓話に変わる瞬間を描く、9つのストーリー。

知り合いには結構台湾旅行をしている人がいて、旅行の様子を聞いたり写真を見せられたりするにつけ、「台湾旅行も悪くないなあ」といつも思っていた。なにぶんオレ本人はデブの出不精が祟り、まるで実行に移す気配は無いのだが、そのうち台湾の地を踏むこともあるかもしれない。

連作短編集『歩道橋の魔術師』は、そんな台湾生まれの作家、呉明益が書いたものだ。台湾の作家というのも珍しいなと思い、ちょっと読んでみることにしたのだ。

物語の時代設定は70年代末期、舞台となるのは台北の目抜き通りに壁のように建ち並ぶ商店街「中華商場」。1961年から1992年の取り壊しまで実在したこの場所に行きかう、台湾の若者たちの青春の情景がこの物語のメインとなる(Wikipediaで「中華商場」を画像検索すると当時の様子をうかがうことができる)。

この連作短編には舞台である「中華商場」以外にもう一つの共通点がある。それがタイトルである「歩道橋の魔術師」だ。「中華商場」の歩道橋には多くの屋台が並んでいたが、その中に手品グッズを売る怪しげな男がいた。子供たちはその男の手品に魅せられていたが、稀にその男は、どう考えても手品であるはずがない超自然的な技を垣間見せるのだ。

とはいえ、この魔術師が短編集の中心的な存在という訳ではない。この短編集で物語られるのは、登場する様々な少年少女たちの、家族との諍いや事件、恋と別れ、性と死である。それらを大人になってから振り返った、苦くもあり甘酸っぱくもある思い出である。それらの多くは、遣り切れなく、そしてどうしようもできなかったことだ。魔術師の"魔術"は、そんな厳しい現実に、風穴を開けるもののように描かれるのだ。

読んでいて全体的に思ったのは、これは台湾の村上春樹なのかな、ということだ。『歩道橋の魔術師』には、多くの死と、ぶっきらぼうなセックスと、若さゆえの喪失感が描かれる。そしてそこに魔術的な超自然現象が加味されるというわけだ。これらは少なくとも初期の春樹小説の展開の在り方とよく似ている。ただ台湾在住でない自分には「中華商場」のノスタルジーといわれてもピンとこないし、"魔術"の扱い方も物語をとりたてて際立たせているようには思えなかった。台湾人作家が春樹小説に接近するとどういう物語になるのかを確認するにはなにかの参考になる小説集かもしれない。

yoyoshi yoyoshi 2016/05/26 12:31 自分もノスタルジーと言われてもピンときませんでした。台湾に思い入れのある人なら違うのでしょうか?装丁は素晴らしく、思わず手に取りたくなります。日影丈吉の台湾ものの方が引き込まれます。

globalheadglobalhead 2016/05/26 12:36 文学作品を多く読んでいるわけではないので春樹の名前しか出ませんでしたが、一回春樹と思い込んじゃうと読みながらずっと「ここも春樹あそこも春樹」といちいち指摘しながら読んでしまいましたね。

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20160525(Wed)

[]どうでしょう史上名作中の名作:『水曜どうでしょうDVD第23弾「対決列島〜甘いもの国盗り物語〜」』をやっと観た! どうでしょう史上名作中の名作:『水曜どうでしょうDVD第23弾「対決列島〜甘いもの国盗り物語〜」』をやっと観た!を含むブックマーク どうでしょう史上名作中の名作:『水曜どうでしょうDVD第23弾「対決列島〜甘いもの国盗り物語〜」』をやっと観た!のブックマークコメント

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この間水曜どうでしょうDVD第24弾「ユーコン川160キロ〜地獄の6日間〜」を観てオレはとんでもないことに気が付いたのである。「いかん、DVD第23弾を買い洩らしていた!」…そして慌ててこの「対決列島〜甘いもの国盗り物語〜」をHTBオンラインショップで注文したというわけで。いやあしかしHTBオンラインショップ、送料が823円もしやがったぜゼィハァ…。そして届いたDVDを早速観たところ、これが数ある「水曜どうでしょう」DVDの中でも群を抜いて面白く、そしてしょーもないものだったのである!

この「対決列島〜甘いもの国盗り物語〜」、「水曜どうでしょう」でお馴染みの大泉、鈴井、安田、そして藤村Dが登場し、「ミスター・大泉チーム」(大泉、鈴井)と「チームびっくり人間」(安田、藤村D)に分かれ、「甘いもの食い対決」をするというものだ。それもただ対決するのではなく、北海道から最終決戦地・鹿児島まで南下しつつ、ご当地ご当地の甘いものをネタに、全行程5泊6日で対決しまくる、という過酷というか実に馬鹿馬鹿しい企画なのだ。

とはいえ5泊6日で47都道府県全てを回る訳にもいかないので、北海道―鹿児島間で通過した県のみとなるのだが、再戦も含め全部で17もの対戦が描かれてゆくのだ。対決はポイント制となり、それぞれで勝利した都道府県の面積に準じてポイントが上下する。即ち北海道で勝利したほうが青森で勝利するより面積において有利なのだ。そして最終的に獲得したポイント総数で勝敗が決定する。つまり勝利した回数ではなく勝利した都道府県の面積が重要なのだ。だからこそ「国盗り物語」なのである。

この企画の発端となるのはミスターこと鈴井がもともと「甘いものが苦手」ということであり、さらに藤村Dが「大の甘いもの好き」ということにある。もはや企画段階で勝負にならないことがミエミエなのである。ゆえに見所となるのは「嫌いな甘いものを苦悶の表情で口に運ぶミスター」と「あたかも掃除機のように甘いものを吸いこみ続ける人間離れした藤村D」の鮮やかなコントラストである。さらに藤村Dチームには驚異の牛乳吸引マシーン安田さんが伏兵として控えているのだ。だからこそ「チームびっくり人間」などと呼ばれているのである。ミスターチームの大泉さんは今回なんの役にも立ってない(…あ…いつものことか…)。

しかし!最初から勝負が見えているように思わせながら、思わぬアクシデントが次々と続き、勝負は「ミスター・大泉チーム」が「チームびっくり人間」を大きく引き離しながら展開してゆくのだ。もちろん「チームびっくり人間」も執拗な追撃を繰り返し、次第に接戦となりながらグランドフィナーレと突き進む!この「全く読めない展開」が両チームの対決を思いもよらない興奮と面白さで盛り上げてゆくのだ!いつものダルいダベりと大泉・藤村Dの汚い罵り合いも花を添える!DVD2枚組、4時間半に渡って収録されている「水曜どうでしょう」史上名作中の名作と謳われる「対決列島〜甘いもの国盗り物語〜」、もんの凄く面白かったからあんたも観なさいよ!

(購入はこちら ※HTBオンラインショップ)

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(※公式プロモ動画ですがブログに貼ることは許可されていないようなのでYouTubeでご覧ください)

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20160524(Tue)

[]PS4の『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』はとても面白いぞ。 PS4の『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』はとても面白いぞ。を含むブックマーク PS4の『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』はとても面白いぞ。のブックマークコメント

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舞台は前作『アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-』から3年後。主人公「ネイサン・ドレイク(ネイト)」は共に冒険を歩んできた女性「エレナ」と結ばれ、幸せな生活を送っていた。結婚を機に危険なトレジャーハンター稼業を引退していたネイトだったが、ある日、死別したと思われていた兄「サム」が来訪し、冒険への協力を依頼される。

サムが持ちかけたのは、18世紀に存在した海賊王「ヘンリー・エイブリー」の秘宝が眠るとされる海賊たちの国“リバタリア”への冒険だった。苦悩の末、ネイトはエレナとの平和な生活を抜け出し、サムとの冒険に乗り出すことを決める。

世界中で秘宝に繋がる手がかりを探すうちに、やがて2人は“リバタリア”があるとされるマダガスカルの地へと導かれてゆくが…。

うおォン!『アンチャーテッド』の新作が遂に発売されたんだからこれはやらねばいけないじゃないか!?今作『海賊王と最後の秘宝』は「アンチャ」シリーズ4作目、PS4オンリー、さらにシリーズ最後の作品となるらしいんだ!これは気合が入っちゃうね!

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「アンチャ」シリーズはトレジャーハンター、ニック・ドレイクを主人公としたアクション・ゲームで、なにしろトレジャーハンターってぐらいだから前人未到の秘境や古代の遺跡を舞台にお宝探してアクションを繰り広げるというものなんだね。その基本は崖にしがみついて渡り歩いたり高い所をよじ登ったりジャンプしまくったりと、どこまでもひたすらキャンタマキューンなシチュエーションを乗り越えてゆかねばならないんだ!女子はどこがキューンてなるのかはオレには謎だけどね!さらに敵との銃撃戦やカーチェイスまで盛り込まれていて徹頭徹尾アクションがてんこ盛られてるんだね!

今作はタイトル通り"海賊王と最後の秘宝"を求めて大冒険を繰り広げるというものなんだ。しかし今作の主人公、実はトレジャー・ハンターから足を洗って前作までのヒロイン・エレナと幸せな家庭を持っていたんだよ。そんな彼を冒険の旅に赴かせたのは死んだはずだと思っていた兄が彼の元を訪れたからなんだ。兄であるサムは生命の懸かったワケアリの事情を抱えており、それでネイサンは冒険に旅立つことになるんだが、同時にネイサンは実は新たな冒険を心の底で望んでいもしたんだね。

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という粗筋なんだけど、この4作目、今までと何が違うかってなにしろPS4の美麗なグラフィックと、表現力の大幅なパワーアップだね。冒頭のリアルタイムレンダリングのムービーのシーンなんか相当力が入っている上に長いんだが、これはPS4だからこそできたことなんだろう。一方アクションのほうは特に大幅な変更はない。もともと完成されていたシステムだからあえて手を入れなかったんだろうけど、それでもより洗練されたものになっており、個人的にはキーレスポンスもより的確で軽快になっているように感じたな。

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こんな具合にPS4らしいデラックス版「アンチャ」とも思えるけれども、逆にこのPS4になったからこそやっと製作者が本来表現したかったゲームに追いついたともいうことが出来ると思うんだよ。変な言い方だけどストレスの無さがハンパない。こちらも1〜3までやりこんでるから操作なんてお手の物だし、なにをどうしたらいいか勝手知ったるものだけども、それでも新鮮な気持ちで全く飽きることが無くプレイできる。そして相変わらずキャンタマキューンてなってる。これは物凄いことだと思うな。

さらに今作では冒険の旅に兄のサムが同行することで、アクションにしろ戦闘にしろ協力プレイみたいな感覚でゲームを進めることになるんだ。これは要所要所でってことで、ゲーム全体が協力プレイってわけではなく、基本的なアクションはやっぱり一人で切り開いてゆくんだけどね。でもたまにヒントを出してくれるよ。で、アクションの合間に二人で声を掛け合ったり減らず口の叩き合いをしているのを眺めるのがまた楽しい。同じようにプレイしていてもピンでやってるのとまた別の面白さがあるね。

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というわけでシリーズ最高峰かつ最後の作品『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』、PS4持っているんなら絶対やるべきゲームだし、今までPS4を買いあぐねていた皆様にあられましてはこれを機会に本体ごと買っちゃうといいと思うんだ!さあさあ買っちゃえ買っちゃえ!そしてみんなでキャンタマキューンしようぜ!(女性はどうなのかは以下略)

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20160523(Mon)

[][]家族の再会が引き起こした大きな波紋〜映画『Kapoor & Sons (since 1921)』 家族の再会が引き起こした大きな波紋〜映画『Kapoor & Sons (since 1921)』を含むブックマーク 家族の再会が引き起こした大きな波紋〜映画『Kapoor & Sons (since 1921)』のブックマークコメント

■Kapoor & Sons (since 1921) (監督:シャクン・バトラ 2016年インド映画)

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カプールさんと息子たち

最初タイトル「カプール&サンズ」というのを見た時は「そうかそうかプリトヴィラージ・カプールから始まるインドの映画一家カプール一族のドキュメンタリーか、ランビール・カプールやカリーナー・カプールあたりは本人役で出て来るのか、いやポスター見るといないようだから代役と言うことなのか、でもそんなドキュメンタリーあんまり観たくないなあ」などと思っていたのである。ところがそれは全くの勘違いであった。映画一家とはまるで関係ない普通のカプール家を描くフィクションなのらしい、そう知ってやっと観ることにしたのである。

物語は何しろカプール家の人々を描いたものだ。インドのクーヌールという所にカプール家は家を構えていたが、そこのお爺ちゃんが心臓発作を起こす(実はこのお爺ちゃんはホントのカプール映画一族の出であるリシ・カプールが演じている)。お爺ちゃんと同居していたカプール夫妻、スニターとハルシュは急遽海外で生活していた二人の息子、ラーフル(ファワード・カーン)とアルジュン(シッダールト・マルホトラ)を呼び戻した。お爺ちゃんは一命を取り戻し、なんとか安心に見えたのだが、実はカプール家の面々はそれぞれに問題を抱えていて、彼らが一堂に会したことによってその問題が大きく吹き上がってしまうのだ。

■家族の再会

それぞれがばらばらに暮らしていた家族が、身内の入院やら不幸で再び再会し、そこで改めて家族としてのお互いを再認識する。こんなことが自分にも身に覚えがある。一昨年、郷里に住む自分の母親が入院して、それまで殆ど帰ってなかった実家へ里帰りすることになった。そこで10年振りくらいに弟や妹夫婦と会い、さらに叔父や叔母と、これはもう30年振りくらいに会うことになった。彼ら家族親戚とあれこれ話している中で、「自分の血縁とはなんなのだろう」と考える機会ができた。それまでいろいろと理解していなかったものが、するすると理解できるようになった。これまで避けていた血縁との再会は、結果的にはとても素晴らしいものになった。

ところがこの作品におけるカプール家はそうはいかなかったらしい。スニターとハルシュのカプール夫妻は考えの行き違いや女性問題などでギスギスした関係になっていた。ラーフルとアルジュンの兄弟は過去のちょっとした怨恨が収まったように見えながら、今度は地元で出会ったティア(アーリヤー・バット)との三角関係に発展しつつあった。こうして過去の問題と現在の問題がグジュグジュと化学反応を起こし始め、それは次第に大きな破局へと近付いてゆく。そんな中でただ一人、一家の長老であるお爺ちゃんが悲しい目をして右往左往することになってしまうのだ。

■非常に巧みなシナリオ

一見して非常に巧みなシナリオを持つ作品だと感じた。この物語では家族の多くが秘密を抱えている。その秘密は冒頭から様々な伏線を張りながら交錯しあい緊張感を高めてゆきながら、ある日嵐の中のダムのように決壊を起こす。この破局のポイントまでの構成が恐ろしいくらいに巧みなのだ。よくもまあここでここまで繋げたなあ、と思う。そしてこうした破局を経ながらもどうやってもう一度家族の輪を取り戻してゆくのかがこの作品の大きなテーマとなる。彼らの秘密は秘密のままであったほうがよかったものなのかもしれない。だがその秘密が発露したその先でさえも、あくまで誠実な家族同志であろうとするのがこの物語なのだ。

かつてインド映画といえば強権的な父を頂点とした家族主義の物語が多く観られたが、この作品では既にそういったヒエラルキーは存在しない。この作品ではそれぞれが時には間違ったこともする弱い個として描かれ、そして家族であるばかりにより一層強い感情を相手にぶつけ、親も子もなくいがみ合うことになる。ある意味インド的な家族主義が現代においてここまで解体されたと見ることが出来るのと同時に、それでもなお家族を乞い求めようとするする部分に決して変わらない家族愛の在り方を見て取ることが出来る。この物語性の豊かさは日本で公開されても十分受け入れられるものだと思うし、ハリウッドあたりでリメイクしても通用する秀逸さを感じた。

■(余談)ポップアップの女優の意味は?

ちなみにオレにもわかったインドネタを一つ。お爺ちゃんが愛でていた映画の名はラージ・カプール監督最後の作品『Ram Teri Ganga Maili』(1985)で、お爺ちゃんの持っていたポップアップは主演女優マンダキーニ。この映画、何が凄かったかって、当時ですら保守的なインド映画界でヒロインが堂々と乳房を見せちゃってる、という部分だった。ポップアップでのヒロインは白い衣装を着ているけど、本当はあの衣装のシーンではヒロインの乳房が透けまくっていたのだ。だからお爺ちゃんそこが大好きで忘れられなかったんだねー。

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20160521(Sat)

[][]奴の名はドン!ドンドンド〜ン!!〜映画『Don』【アミターブ・バッチャン特集 その7】 奴の名はドン!ドンドンド〜ン!!〜映画『Don』【アミターブ・バッチャン特集 その7】を含むブックマーク 奴の名はドン!ドンドンド〜ン!!〜映画『Don』【アミターブ・バッチャン特集 その7】のブックマークコメント

■Don (監督:チャンドラ・バロート 1978年インド映画)

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奴の名はドン!
壁に押し付けられて胸キュン!それは壁ドン!
滋賀県彦根市のユルキャラ!それはひこどん!
巨泉のクイズダービー!それは倍率ドン!
秘伝のニンニク醤油ダレを絡めた豚バラ肉を大盛りご飯にのせたスタミナとボリューム満点!それはすた丼!
いいやそうじゃない!ドンは暗黒街のボス!
インターポールの最重要指名手配リストに載る男!
奴を巡って巨大な陰謀が渦を巻く!
奴の名はドン!

ドンドンド〜ン!!

というわけでインド映画の皇帝ことアミターブ・バッチャン主演による1978年公開作品、アクション映画『Don』でございます。今回アミターブ演ずるのは悪の帝王ドン。響きのいい名前ですな。ドン。なんだかドンドコド〜ン!って感じじゃあーりませんか。ドンといいますと尊称だったりマフィアの首領の意味だったりしますから、本名というより「組長」「大親分」みたいな意味なんでしょうな。この作品は大ヒットを飛ばし、2006年にシャー・ルク・カーン主演作『Don 過去を消された男』としてリメイクされております。でもこっちのリメイクまだ観てませんが…。

さて物語です。悪の帝王ドン(アミターブ・バッチャン)はその名にし負う冷酷で狡猾な男。周りにはいつも凶暴そうな顔の男たちが取り巻き、悪事の計画に余念がありません。警察はドンの組織を叩き潰すため包囲網を敷き、ドンを追い詰めてゆきます。そして激しいカーチェイスの末、ドンは遂に警察官に射殺されます!ええ!?話終わっちゃうじゃんかよ!?いや、実は物語はここからなんです。副警視デ・シルヴァ(イフテーカル)は組織の残党を逮捕するため、ある計画を秘密裏に推し進めます。それはドンと瓜二つの男、大道芸人のヴィジャイ(アミターブニ役)をドンに仕立て上げ、組織に送り込むこと。しかし最初は上手くいっていた計画は次第に綻びを見せ始めるのです。

非常に楽しめる作品でした。まず悪党ドンの黒光りした悪辣ぶりと惚れ惚れするような不敵さです。こんなドンだけでニヒルなピカレスク・ロマンを1本撮っても成功したかもしれません。そしてこのドンが死んだ後に身代わりで立てられた大道芸人の男、ヴィジャイの素の姿がひょうきんで愉快なんです。なんかもうコテコテなんですね。ビジャイ登場時の歌と踊りが楽しく、この二役を演じたアミターブの演じ分け方が実に光ってましたね。ビジャイは巧みにドンに成り済ましますが、ボンベイの洗濯場で酔っぱらって素に戻ってしまい、ここで歌って踊る姿がまた楽しかったりします。また、「俺はドンだ!」と歌って踊るシーンでは、周りがドンを指さし「ドン!ドン!ドン!」とかやっていて妙に可笑しかった。

そして脇を固める面子が一癖も二癖もある連中ばかりなのがまたいい。まず冒頭でドンによって悪の道に引き込まれてしまうサーカスの軽業師ジャスジート(プラーン)。数奇な運命に弄ばれる彼はドン/ヴィジャイの敵となるか味方となるか!?そしてドンに復讐を誓う娘ロマ(ズィーナト・アマン)はジュードー・カラテを会得して組織に侵入します。いやーなにしろジュードー・カラテですよ。日印友好ですね。彼女は最初ヴィジャイをドンと思い込み命を狙いますが、常に殺意を浮かべた目つきにはシビレさせられます。他にも、ドンの取り巻きとなる悪党どもは誰も彼も実に悪い顔をした俳優ばかりで、よくこれだけ集めたなあと観ていてニンマリしてしまいました。

こうして物語はドンに成り済ましたヴィジャイと、彼を取り巻く悪党、密かに彼の命を狙うロマ、さらに副警視デ・シルヴァの思惑などが絡み合いながら二転三転してゆきます。常に予想を覆し危機また危機がヴィジャイを襲うシナリオはよく練り込まれていて、息を付く暇さえないほどです。アクション・シーンはどれも派手で見応えがあり、この時代のインド・アクション作品としても高水準だったのではないかと思わされます。歌や踊りはあってもオチャラケやロマンスで本筋から外れることが無く、クライム・ムービーとしての緊張感を常に保っています。こうして並べてみると実に完成度の高いアクション作なんですね。アミターブ出演作は『Sholay』が何しろ最も有名ですが、痛快娯楽アクションとしてこの『Don』もお勧めしたいぐらいに傑作でしたよ。

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[][]アミターブ・バッチャン特集まとめ アミターブ・バッチャン特集まとめを含むブックマーク アミターブ・バッチャン特集まとめのブックマークコメント

このブログで書いたアミターブ・バッチャン出演作品を挙げておきます。

二人は泥棒カップル!?〜映画『Bunty Aur Babli』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

インド富豪一族の愛と確執〜映画『家族の四季 愛すれど遠く離れて』【SRK特集その3】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

その二つの名は同時に呼ばれてはならない〜映画『Veer-Zaara』 【SRK特集その10】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

口のきけない俳優と美声を持つ負け犬男との二人羽織〜映画『Shamitabh』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

盲ろうの少女とその教師との心の交流〜映画『Black』【バンサーリー監督特集その2】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

不機嫌な娘と偏屈な父、それに巻き込まれた男とのロードムービー〜映画『Piku』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

【インド名作映画週間その2】『Amar Akbar Anthony』『Deewaar』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

【インド名作映画週間その3】『Sholay』『Guide』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

ボンベイな映画を3作観た〜『Bombay』『Salaam Bombay!』『Bombay Talkies』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

「早老病」の少年を見守る家族を描いたユーモラスな感動作〜映画『Paa』【ヴィディヤー・バーラン特集】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

娘を殺された二人の男が挑む巨大な陰謀〜映画『Wazir』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

俺たちゃ仲間さ!アミターブ、ラジニカーント、ゴーヴィンダ共演作!映画『Hum』【アミターブ・バッチャン特集 その1】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

炭鉱大パニック!『Kaala Patthar』 / 親の敵を成敗だ!『Naseeb』【アミターブ・バッチャン特集 その2】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

極悪犯罪組織と戦う正義の兄弟!『Shaan』 / 病魔に冒された患者と医者との友情『Anand』【アミターブ・バッチャン特集 その3】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

悪党への復讐に燃える元警官!『Zanjeer』 / 禁じられた不倫のゆくえ『Silsila』【アミターブ・バッチャン特集 その4】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

引き裂かれたカップルの、その20年後〜映画『Kabhie Kabhie』【アミターブ・バッチャン特集 その5】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

ギャングの兄、警察官の弟、そして変な悪党が大乱戦!『Parvarish』【アミターブ・バッチャン特集 その6】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

奴の名はドン!ドンドンド〜ン!!〜映画『Don』【アミターブ・バッチャン特集 その7】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

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20160520(Fri)

[][]ギャングの兄、警察官の弟、そして変な悪党が大乱戦!『Parvarish』【アミターブ・バッチャン特集 その6】 ギャングの兄、警察官の弟、そして変な悪党が大乱戦!『Parvarish』【アミターブ・バッチャン特集 その6】を含むブックマーク ギャングの兄、警察官の弟、そして変な悪党が大乱戦!『Parvarish』【アミターブ・バッチャン特集 その6】のブックマークコメント

■Parvarish (監督:マンモーハン・デーサーイー 1977年インド映画)

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■ギャングの兄!警察官の弟!

ギャングになった兄と警察官になった弟!善の悪との対立!という1977年のインド映画です。ん?なんか聞いたことのあるようなプロットじゃない?アミターブの『Deewaar』(レビュー)もそんな話だったよね?と思われる方もいるかもしれません。しかしこの作品、なーんだか妙におかしい描写が味わい深くて実に楽しめたんですよね。主演はアミターブ・バッチャン、そして『Amar Akbar Anthony』(レビュー)でも共演したヴィノード・カンナー(今調べて知ったんですが『ダバング 大胆不敵』でチュルブルのお父さん役もやっててたんですね!?)、さらに往年のインド名男優シャンミー・カプールが出演しております。

物語は警察官シャムシャー(シャンミー)が盗賊マンガル・シン(アムジャッド・カーン)を追い詰める場面から始まります。マンガル・シンは逃走しますが、シンの身重の妻が子を産んで死んでしまいます。シャムシャーは子供を哀れに思い自宅に引き取り、本当の息子と共に育てることにします。それから幾年月、二人の息子は大きく育ちます。マンガル・シンの息子アミット(アミターブ)は警察官となり、シャムシャーの本当の息子キシャン(ヴィノード)は密かにマフィアの構成員となっています。実はこのマフィアのボスというのが盗賊マンガル・シンであり、キシャンのほうを自分の本当の息子と間違え、キシャンもまたマンガル・シンを実の父と間違えて仲間になったのです。そんな中、盗賊を追い詰めていたアミットが、その盗賊というのが兄であるキシャンであることを遂に知ってしまうのです。

■何だか変だよ悪党のアジト!?

とまあこんなお話なんですが、兄と弟、善と悪、という以外に「悪玉の息子が善良な警察官になる」という要素と「警官の息子が悪玉を本当の親と間違える」という善悪の逆転した「取り替えっ子」の変形パターンがあるんですね。ただしここまではまだ設定であり、ある意味普通といえば普通かもしれません。でもこの物語の本当の面白さは他の部分にあるんですよ。

この『Parvarish』、まず最初に「なんじゃこりゃ?」と思ったのは盗賊マンガル・シンのアジトです。登場時は単なる山賊だったんですが、その後業務規模を拡大したのか、なんだか『007』にでも出てきそうな悪の秘密基地を構えてるんですよ。で、この秘密基地がスゴイ。巨大なホールの一方の壁が赤いスクリーンになっていて、その背後でシルエットになった女性たちがいつもゴーゴーダンスを踊ってるんです。しかも音楽無しで。なんかこうアンモラルな雰囲気を出したかったのかもしれないですが、悪い顔して「ぐふふ…」と黒い笑みを浮かべるギャングの後ろで踊り狂う女性たち…ってなんかもうとってもシュールなんです。それだけではなく、ホールの中央には底なし沼まである!さらにマンガル・シン、なんと潜水艦を持っている!持っているんだけど、どういう目的で持ってるのか全く分からない!そしてその中でわざわざ悪の企みを巡らす!きっと「潜水艦まで持ってるすっごいワルモノ」を演出したかったのでしょうが、全く無意味なのがおかしい!

■ズベ公ヒロインの登場!そして荒唐無稽な展開!

そしてこの物語、一応二人のヒロインが出てくるのですが、これがインド映画ヒロインによくあるような明るく快活なサリー美人とかそういうのでは全くなく、縦から見ても横から見てもまるでヤンキーあがりみたいな姉妹!おまけに次々に時計やら財布やらをかすめ取るプロ級のスリ・コンビ!なんかもう昔の東映の『ズベ公番長』とか日活の『野良猫ロック』みたいな女チンピラなんですよ。腕とかよく見たら根性焼きの跡とかがあるかもしれません。こんなヒロインってインド映画じゃ珍しくありません?で、この二人が主人公二人と絡み、恋愛までしてしまうんです。最初は主人公らにフラれるんですが、ここで展開される歌と踊りがとんでもなくおかしい。「もう死んでやる!」とばかりに首つりや飛び降り自殺を図る女性二人を、寸での所で主人公たちが助けてあげる、という様子がミュージカルぽく描かれるんです。いやあ、断然変だなあ!楽しいなあ!

こんなですから、「善と悪に分かれた兄弟二人!」という設定なのに全くシリアスな方向に行かないんです。むしろ荒唐無稽といってもいい。ユーモラスさは多分にありつつオチャラケたコメディに走ることは無く、マサラ・ムービーらしい脱線も殆どせず、物語の要点を押さえながら骨太な演出で見せるべきところをガッチリ見せてゆく。あれもこれもと手を出さず演出が非常に明快なんですね。だから観ているこっちも雑念を沸かすことなくグイグイ引っ張られて観てしまう。娯楽映画の見本みたいな良質さが籠ってるんですね。物語は終盤に向け、善悪に対立する兄弟同士の様子から、悪に染まった兄を気に掛ける弟と、弟の為に悪の道から足を洗おうとする兄、そしてマフィアに捕えられたヒロイン二人の奪還へと盛り上がってゆくんですよ。いやこれ、アミターブ作品の中では他の有名作よりも気にいったな。

20160519(Thu)

[][]引き裂かれたカップルの、その20年後〜映画『Kabhie Kabhie』【アミターブ・バッチャン特集 その5】 引き裂かれたカップルの、その20年後〜映画『Kabhie Kabhie』【アミターブ・バッチャン特集 その5】を含むブックマーク 引き裂かれたカップルの、その20年後〜映画『Kabhie Kabhie』【アミターブ・バッチャン特集 その5】のブックマークコメント

■Kabhie Kabhie (監督:ヤシュ・チョープラー 1976年インド映画)

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最初に愛しあう恋人同士が描かれる。男の名はアミット(アミターブ・バッチャン)、女の名はプージャ(ラーキー・グルザール)。続いて画面に登場するのは、悲しげな顔で何かを見つめるアミットの姿だ。彼の視線の先では結婚式が行われている。それは彼の恋人プージャと見知らぬ男ビジェイ(シャシ・カプール)との結婚式だった。

1976年にインドで公開された映画『Kabhie Kabhie』は、親の決めた結婚により引き裂かれたカップルの物語である。しかしインド・ロマンスではお馴染みのシチュエーションを持ちながら、この物語はさらにその未来を描く、という独特の構成を持っている。出演者は他にリシ・カプール、ワヒーダ・ラフマーン、ニートゥ・シン、ナシーム、シミ・ガーレワール。監督はロマンス映画の大家ヤシュ・チョープラー。

この物語の独特さは、”引き裂かれたカップル”の、その20年後を描くという部分にある。20年の間にアミットも結婚し、子供をもうけている。プージャとビジェイの間にも子供がいる。生活は落ち着いており、彼らは皆相応に年老い、髪にも白いものが混じった容貌で登場する。アミットとプージャの中で”引き裂かれた”ことによる懊悩は、決して消え去るものではないにせよ、20年という歳月は、それを「遥か過去の思い出」として風化させているのだ。要するにこの物語、かつて”引き裂かれたカップル”の、「焼けぼっくいに火が付いた」話では全く無いのだ。

そして登場するのは若者たちの姿だ。それはプージャの息子ヴィッキー(リシ・カプール)、彼の恋人ピンキー(ニートゥ・シン)、ヴィジェイ家の娘スウィーティー(ナシーム)だ。彼らの三角関係がこの物語のもう一つの軸となるが、”引き裂かれたカップル”の子供たちが同士がまたしても恋に落ちる、という設定が面白い。また、ピンキーは出生の秘密を抱えており、実はそれがヴィジェイ家に関わるもので、物語にじわじわと波紋を投げかけることになる。さらにアミットとプージャは20年ぶりの再会を遂げるが、彼らにとって愛は"昔の話"なのにもかかわらず、プージャの夫ビジェイはあらぬ嫉妬に身悶えることになる。

これらストーリーだけを掻い摘めばよくあるメロドラマということになるが、しかしこの作品は凡庸さに堕することなく美しいドラマとして結実している。それは作品のテーマとなるものが「過去にこだわらず未来に目を向けて生きて行こう」という部分にあるからだ。登場人物たちはそれぞれが直面する「過去の事情」に、最初戸惑いや苦しみ、そして怒りを覚える。だが誰もがそういった葛藤を軽やかに乗り越え、よりよい今を選択し、未来に繋げようとする。素晴らしいほどに前向きなのだ。そしてそういった前向きさが感銘を生むのだ。

同時に、やはり監督であるヤシュ・チョープラーの映画的な話法、見せ方がとてもいい。以前観たチョープラー作品でも端正で清々しささえ感じる映像を見せられたが、この作品の空気感にも同様なものを感じた。それと伝統的なインドにこだわらない、どこかヨーロッパ的とすら思える情景描写だろうか。チョープラー作品はそれほど観ていないのでこの作品が彼の作品史のどの部分に位置するものなのかは分からないが、中盤の若者風俗の古臭ささえ気にしなければきちんと作られた良作なのではないか。

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