ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

15周年に際して現状を顧みる

繰り返すようですが、今日は結婚15周年(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121109)。
今年は1月から、突然日常生活が大きく変化した年でしたが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120115)、そうは言っても、これまで気になっていたことを改めて大きな時空間で考えさせられ、振り返る時になって、自分としては、思考と感情のよい整理およびよい刺激になったかとも思います。
11月3日と10日の二つの演奏会の記録については(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121104)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121106)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121109)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121111)、昨晩、NHK-FMラジオで、まだ来日公演中のゲルギエフ・マリインスキー歌劇場管弦楽団が中継で演奏放映されたので、今日こそは、上記の記念日も兼ねて、感想を記そうと思ったのですが、早速、短い時事的な訳文一つに取りかかっているうちに(http://www.danielpipes.org/blog/12217)、予定が変更されてしまいました。
とはいえ、もっと音楽に詳しい方達のブログも、かなり日数を置いてから書いていらっしゃるので、皆さん、昨今は時間配分に苦労されているんだな、と思います。
先日も書いたように、15年前と今とでは、私自身や我が家の境遇のみならず、日本社会や国際情勢なども大きく変更されました。今朝も考えていましたが、結婚直後から、いろいろな場に積極的に出て行ったり、多くの方達に相談をしたり、専門外にも多くの本を読んだりして、(どうも合わない)(これが自分のしたかったことではない)と模索しながら、選択の末、今があるのだと思います。
それに、何も自分だけが路頭に迷っているのではなく、主人も大変な身ながらも何とか仕事を続けているし、また続けさせていただいているし、本当にそれは感謝なことだと思います。
住む場所についても、それほどパッとしたところではないにしても、「静かで水質がよく、緑豊かで環境がいい」というのは、健康維持にもってこいだと思います。また、結婚当初、すごく自信に満ちて張り切っていた主人が、「今より数万円家賃の高いところでもいい」なんて気を遣ってくれていましたが、今振り返ると、子どもの時に母から非常に厳しく節約観念を躾けられたことは良い習慣となり、今では無理せず、ここに住み続けて正解だったとは思います。

夕方、ささやかなお祝いの品を買おうと町に出たついでに、書店へ寄って、最近新聞で話題になっていた本を立ち読みしてきました。アメリカの国力衰退についてです。

http://www.amazon.co.jp/dp/4532168457/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1353065733&sr=1-1

かつての超大国アメリカ―どこで間違えたのか どうすれば復活できるのか


トーマス・フリードマン(著)マイケル・マンデルバウム(著)伏見 威蕃(翻訳)日本経済新聞出版社2012年9月


本書は、私たち日本人(そしてあらゆる先進国)がいま直面し、さらにこれから対峙せざるをえない諸問題が描かれています。教育の質の低下、仕事の消滅、膨らむ政府の借金、社会保障制度の破綻……本書に登場する「アメリカ」を「日本」に置き換えてもおかしくないほど、先進国の問題は共通しています」。


先進国が抱える『4つの大問題』


(1)グローバリゼーション(2)IT革命(3)巨額の財政赤字(4)エネルギー消費の増加と気候変動


アメリカの「決められない政治」


アメリカでは二大政党制が単なる大衆政治に成り下がり、互いの政策を譲らず、減税や社会保障の拡大といったバラ撒き政策ばかりが採用され、問題の先送りで『将来にツケを回す』政治が横行しています。この政治の停滞に対し、著者らは独立派(第三極)の大統領の必要性を論じます」。


・仕事の消滅、ミドルクラス崩壊、教育改革


・「アメリカの後を追ってこれまで発展してきた日本も、まさに同じ問題に直面しています。どうすれば、ゆるやかに衰退するアメリカを他山の石とできるのか。国力低下が心配される日本にとって、これ以上ない知見を与えてくれる一冊です」。

宣伝なので、「決められない政治」などと何だか人ごとのような無責任な表現が腹立たしいのですが、ポイントはついた文章です。
他に印象に残った点としては、カリフォルニア・バークレー校は今では政治的急進派の牙城であること、共和党民主党イデオロギーの対立と分裂は深い二分をアメリカ国内にもたらしていること、インドや中国の有能な移民達が「家族と一緒に住めるから」と、ある程度で見切りをつけて国に帰っていく現象、9.11によるイラク・アフガン戦争については、確かに大事ではあったが、国家の政治配分としては偏りがあったこと、その間に、上海や香港やシンガポールなどが教育水準や生活レベルも最上位に位置するほど力をつけてきたこと、欧州は疲弊しているので、アメリカもそうならないよう留意する必要があること、いつまでも憲法を読み直してアメリカの例外主義に浸っていては(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121105)現実を見失うこと、優秀な移民を引き寄せたので繁栄したアメリカであるが、今は教育水準の著しい低下が観察されること、です。
ダニエル・パイプス氏が面識もない私に訳文を依頼されるほどなので(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120401)、これらは非常に合点がいくところでもあります。ただし問題は、指摘はごもっともとして、現状および今後をどうするのか、ということです。
「教育が大事」とはいえ、大阪のこの周辺では、世界最先端の教育事情についていっているというよりは、メディアのあおりでか「格差はいけない」「いじめはいけない」など、大事な点ではあってもバランスに欠けた大袈裟な主張が前面に出ているような感覚があります。上記本で書かれていたのは、今は顔を合わせなくても、自宅でIT作業で簡単に首切りもできる仕事が増えたこと、自分だけの知識や創造性の開発が重要なこと、などでした。確かに、私のパイプス訳業を振り返ってみれば、パイプス氏にとっては、自分の時間の空いた時に短くメール返答をするだけで相手(私)は満足しているらしいし、日本人のたどたどしい英語を聞く煩わしさもなく、最低限でも、ただ指示した通りに日本語に訳してウェブ上で流してくれれば、自分に対する誤解や偏見が改まり、宣伝にもなり、何らかの形で影響を及ぼせるだろうということだったのだろうとは思います。(仮にそうだとしても、その割には、非常に親切だと感じていますが。)
それと、世界学力ランキングなどを見ていると、アジアで繁栄しているのは、かつての英国の影響下にあった小さな土地で、もともと勤勉で現実志向の強い華人人口が多数派を占めているところだとわかります。また、古くはキリスト教宣教師の活動が盛んだったところでもあります。それに比べて、英国支配ではなかったにせよ、日本も条件としてはそれほど大きく異なっているわけではありません。つまり、現在の日本の停滞と衰退は、敗戦後のアメリカの寛大な援助政策と、朝鮮戦争ベトナム戦争で特需があったこと、中国の文化大革命によって、その間に日本が前進できたことなどによる推移を無視して、長らく「先進国意識」に甘んじ過ぎたことも大きいのではないかと思うのです。
欧州が社会民主主義的になって衰退しつつあるというのに、ここに選挙区のある一人の女性政治家が「ようやく日本もヨーロッパ並みになってきたかな」と講演会で話していたのを思い出します(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100328)。
まだ私には望みがないわけでもありません。1990年からの友人である広東系マレーシア人のご夫妻が(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120123)「時間を空けておくから会おうね」と連絡をくださいました。戦時中の経験から、反日感情がまだ残っているはずの方達なのに、それでも私のような者にもいつも親身になって相談に乗ってくれたり、コマゴマと連絡をくださったりするのです。もう22年も経ち、印象が薄かったらそれまでの付き合いなのに、それでもこう言ってくださる関係を大切にしたいと思います。
それに、やはり、前向きに人生を受けとめ、たとえ困難にぶつかったとしても、エネルギッシュで勤勉で教育熱心で勢いのある国や地域や人々と交際することは、非常に重要だと思います。あまりにも「弱者の目線で」などと強調することで、どこか惑わすようなメディアや「誰もがわかるように」とレベルを下げる教育機関のあり方は、その意味で罪作りだと思うのです。
ルック・イースト政策だって、1990年代前半には、私の母校の先生が、「あれはマレーシア政府が悪い」「絶対に向こうに流されるなよ」と厳しい批判を投げかけていたのに、今ではいつの間にか曖昧になってしまい「それもありでは?」などという状態です(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080226)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080620)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100309)。当時ならば、友好協会レベルでやっていたようなことが、気がついたら今では、れっきとした大学あるいは大学院のレベルあるいは学会で、堂々と大衆映画を鑑賞していたりするのです。
その問題点は、異なる視点や見解の持ち主を、無言の内によそへ押しやっていることです。昔ならば、外交は外交、教育は教育、研究は研究、学問は学問と領域が分かれていて(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111217)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120126)、対立もあれば摩擦もあったかもしれないけれども、それなりに枠内で立場が明快だったことから、相互理解が成立していたようにも思います。今では、何もかもが連携で一つにまとめようとする傾向にあります。一見、好ましいようにも見えますが、お互いが一緒にいても、実は深くは理解できていないという悲劇も生じているのではないでしょうか。
中国やベトナムで経済発展が非常に著しい一方で、共産党支配が続いているために、秘密警察が今でも立ち回っていたり、言論や思想や信教の自由がなく、汚職とひどい格差(これこそ格差!)がはびこっている現状を見ると、「人はパンのみにて生くるにあらず」を痛感します。また、トルコも「公正発展党」のようなイスラーム主義が実権を握り、表向きは暴力を使わず、「公正」「正義」を看板に掲げて、経済は好調のように見えても、周囲の地域に悪影響を及ぼしたり、国内の少数派や世俗派を抑圧しているとするならば(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20101011)、それも長くは続かないでしょう。
つまるところ、アメリカの国是の根本原理を見直し、何とか軌道修正していただき、日本も見習うべきところは見習って、早く立ち直りたいというのが私の今日の結論です。