文藝春秋の新刊 2008年4月 「サインペン」 ©大高郁子


なんだか廉価な一品でございますね。昔から知ってる文具でホームセンターなどでまとめて買うとお安い。寺西化学工業という会社が作っているそうです。

http://www.guitar-mg.co.jp/top/index.htm

カッターのオルファとか関西方面にはなんだか楽しい創意工夫のメーカーさんがそこそこおられるようだ。大高作品で文具を扱ったものは系譜をたどれるほどあるわけで、まあ読者の皆さんもヘッダーからあちこち跳んでお探しください。わたしは“夜の鉛筆”が好きです。このたびの作品は安物をいかにも安物として描いているあたりリアリズムをモロに感じましたがそれでいいのか。
小川三夫 聞き書き 塩野米松「棟梁 技を伝え、人を育てる」という新刊を読みたかった。西岡常一棟梁の唯一の内弟子だそうですね。「ほぼ日」でのインタビューは読みました。下のURLはfinalvent氏の極東ブログ。宮大工というシステムから風土・文化への考察が描かれている。

http://www.1101.com/life/2005-07-05.html
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2008/04/post_7cf1.html

ところが書店で見つからないんですよね。中の上くらいの書店で大手書肆の新刊ならほとんど入っている店なんだが、探し方が悪かったようだね。建築の書架になかったので新刊エッセイなどのあたりを見回したけれど探せずに終わった。購入したのは小林信彦「映画×東京とっておき雑学ノート」。しかしね、このタイトル、少し問題あるんじゃないだろうか。間違えてゴールデンウィーク探索用に購入する人が…もちろんいないだろうけどさ。

文春新刊案内チラシ08年5月は“こちら”にあります

文春新刊案内チラシ08年3月は“こちら”にあります

 角川文庫 2008年4月チラシの紹介

與謝野晶子と与謝野晶子と、ふーむ、でも同じ角川なのだし統一してもいいのではないのか。與ってなかなか使う漢字じゃないけど、固有名詞でなら…いやそうすると総理候補といわれてる小沢昭一に似た政治家関連で問題あるかな、疑問票が増えて落選の危機があったりして。


発見。角川文庫 60th Anniversary

今月の新刊

発見。角川文庫 最新刊 毎月25日の発売です。
畠中恵
ゆめつげ

高杉良
迷走人事

滝沢隆一郎
第1回ダイヤモンド経済小説大賞受賞作
内部告発

齋藤孝
呼吸入門

池波正太郎
忍者丹波大介

久世光彦
曠吉の恋 昭和人情馬鹿物語

森博嗣
どきどきフェノメノン A phenmenon students

鷺沢萠
かわいい子には旅をさせるな

原宏一
姥捨てバス

山中恒
あばれはっちゃく

オーリー・ウォリントン 富永和子=訳
HEROES/ヒーローズ チャーリーを救え

赤毛のアン>生誕100周年
モンゴメリ 中村佐喜子=訳

赤毛のアン
アンの青春
アンの愛情

スチュアート・カミンスキー 鎌田三平=訳
CSI:ニューヨーク 冬の死


角川ソフィア文庫
矢野憲一
伊勢神宮の衣食住


源氏物語千年紀&晶子誕生130年
與謝野晶子
全訳 源氏物語 <新装版 全5巻>

与謝野晶子
与謝野晶子源氏物語
上 光源氏の栄華
中 六条院の四季
下 宇治の姫君たち


作家編集長フェア開催 4月の編集長 森絵都さん
最新刊 いつかパラソルの下で
森編集長が選ぶ、おすすめの角川文庫6冊


角川文庫チラシ08年5月は《こちら》にあります

 角川文庫 08年3月刊 馳星周 虚の王

虚の王 (角川文庫)

虚の王 (角川文庫)

ただの記号小説に陥っていて、中途でページを括る楽しみがどんどん失せていった。渋谷を舞台というと「狂気の桜」という若造対ヤクザ小説(映画)の秀作があって、それをこんな造作じゃとうてい追い越せない。
惹句や小説前半、主人公の造形を浦沢直樹「モンスター」とダブらせていて、出もそれが間違いだと知ると、読む側としてテンションがぐんと下がった。美少年として君臨しているのかと思ったのだけど、隆弘に殴られブヨブヨになってもやっぱり冷静でいられるなんてあたりがゲームとしても楽しくない。家庭内暴力みたいな部分がちょっと変わっているけど小説全体へ効果をもてるほどじゃない、もちろん栄司という主人公の狂気の過程をなぞってもつまらないだろうけど。
とはいえ、渋谷という若者の街という宣伝文句を利用しただけの古いタイプの犯罪小説でしかなく風俗さえ描ききれていないように思った。「不夜城」のほうが主人公のワルさが一般市民っぽく、読書の喜びを感じたな。時代が悪いほうに傾いてるぶん、著者の筆圧が弱まってみえるのか。

 ハヤカワ文庫 2008年4月チラシの紹介


コラボ・タイアップ媒体。裏面に角川書店の単行本広告が載っている。
書籍以外の広告を載せることは他のチラシでもみられたし、映画、DVDなどは定番みたいではあったけれど、他の大手出版社の新刊案内広告がモロっていうのは、あまり記憶にない。栗本薫が媒介したわけですね。媒体はメディアだけど媒介は英語でなんていうのか。
でも本来広告というか書籍の案内というのはこうあるべきもののような気もするし、もっと親切気があってよかったかとも思うし、だからこれは文庫チラシの限界と可能性を感じさせる物件であるなと思うコレクターなのであった─って、おまえが威張るな。

早川書房の新刊案内 2008 4

ハヤカワ文庫話題の最新刊

フランク・シェッツィング 北川和代=訳 深海のYrr(イール)


ハヤカワ文庫の最新刊 2008 4
ダールトン&エーヴェルス 渡辺広佐=訳
宇宙英雄ローダン・シリーズ 346 昆虫女王

エリザベス・ベア 月岡小穂=訳
サイボーグ士官ジェニー・ケイシー 2 SCARDOWN 軌道上の戦い

ジーン・ウルフ 岡部宏之=訳
カバーイラスト/小畑健

世界幻想文学大賞受賞
新しい太陽の書 1
 拷問者の影

マイクル・ムアコック 小尾美佐=訳
永遠の戦士フォン・ベック 2 秋の星々の都

栗本薫
グイン・サーガ 120 旅立つマリア

吉村萬壱
バースト・ゾーン 爆裂地区

高千穂遥
ダーティペアの大征服

エレン・カシューナ 井辻朱美=訳
剣の輪舞 増補版

パトリシア・ブリッグス 原島文世=訳
裏切りの月に抱かれて

ロバート・B・パーカー 奥村章子=訳
女性探偵サニー・ランドル 殺意のコイン

ブライアン・マギロウェイ 長野きよみ=訳
国境の少女


2大超大作映画化作品
シルベスター・スタローン他 横山啓明=訳
ランボー 最後の戦場

ジェイムズ・ローリングズ 漆原敦子=訳
インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国


早川書房の最新刊
栗本薫 渾身の大作 嘘は罪
 図説 銃器用語事典


 中公文庫 2008年4月チラシの紹介

中公文庫 新刊案内 2008 4

宮本輝 にぎやかな天地 上・下

今月の新刊
西村京太郎
雲仙・長崎 殺意の旅

池田あきこ
池田あきこのねこ話

フジモトマサル
こぐまのガドガ

辻邦生
春の戴冠 1


コミック文庫
古谷三敏
寄席芸人伝 1 <新装版>


世界の歴史 文庫版 毎月刊行中
五十嵐武/福井憲彦
20 アメリカとフランスの革命


スカイ・クロラ シリーズ最新刊
森博嗣
クレイドゥ・ザ・スカイ


堂場瞬一 刑事鳴沢了シリーズ
5月の新刊


中公文庫新刊案内チラシ 08年5月は《こちら》にあります

 創元推理・SF文庫 2008年4月チラシの紹介


東京創元社 新刊案内 2008 4

新刊 ジョナサン・キャロル 市田泉訳 薪の結婚

創元推理文庫
フレッド・ヴァルガス 藤田真理子=訳
論理は右手に

コナン・ドイル 北原尚彦・西崎憲=訳
ドイル傑作選 4 陸の海賊

キャロリン・キーン 渡辺庸子=訳
ナンシー・ドール・ミステリ 3 バンガローの事件

ジョナサン・キャロル 市田泉=訳
薪の結婚

フランチェスカ・リア・ブロック 霜島義明=訳
ウィーツィ・バットブックス キスで作ったネックレス


創元SF文庫
田中芳樹
銀河英雄伝説 8 乱離篇


ミステリーズ vol.18
単行本 新刊案内

海外MYSTERY通信
ヴァルガス『論理は右手に』はCWA賞受賞の『死者を起こせ』に続く〈三聖人シリーズ〉第2弾! 変人大活躍の傑作。少女探偵ナンシー・ドルー第3弾、キーン『バンガローの事件』や、スポーツ小説や冒険小説を集めたコナン・ドイル『陸の海賊 ドイル傑作集4』もあって、今月も翻訳ミステリ部門はにぎやかです。
国内MYSTERY通信
これぞ、大倉崇裕の新境地にして新たなる代表作。これまでにも「生還者」「捜索者」などの短編はありましたが、4月刊行の『聖域』は、大倉氏が初めて放つ長編山岳ミステリとなります。山岳ミステリといっても、山は単に舞台となるだけで、山と事件はほとんど関係がない──という作例も多く目につくなか、氏が目指したのは動機や事件の背景などすべてが山に直結する、全編山の匂いに満ちた本物の山岳ミステリ。大学時代、山岳系の同好会に所属していた氏が、デビュー前から温めていた構想を遂に作品化した、渾身の一作です。
FANTASY通信
『蜂の巣にキス』では精巧な推理小説という新境地を披露したキャロル。新作『薪(たきぎ)の結婚』はデビュー作『死者の書』を思わせる戦慄と驚愕に満ちた、まさに鬼才の真骨頂。そして、あのウィーツィ・バットが大人になって帰ってきた『キスで作ったネックレス』。変わらずキュートなリア・ブロックの世界をお楽しみください。
創元ブックランド通信
今月のブックランドは、『シカゴよりこわい町』『シカゴより好きな町』でおなじみ、リチャード・ペックの『ホーミニ・リッジ学校の奇跡!』。学校ぎらいの少年と、代理教師になった口うるさい姉との攻防戦。『シカゴ』の元気なおばあちゃんを彷彿とさせる人物も登場。面白くて、ちょっぴりほろりとさせる傑作です。



東京創元社新刊案内チラシ08年5月は《こちら》にあります

 創元推理文庫08年2月刊 米澤穂信 犬はどこだ

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬の探偵業を開業したのに、主人公が犬の探偵をぜんぜんしないとはどういうことだ。でも人間を襲う野犬を処置したのだから探偵としては合格なのか。
前回感想文を書いた「クレイジーへヴン」もそうだったけれど、殺人を肯定している2冊ななわけそれって時代の流れなのでしょうか。あちらはクライムノベルだろうが、こちらは推理小説、それでこんなシェチュエィションってありなのかな。
松本清張だの社会派の時代、弱者が切羽詰って追いつめてくるものを殺し、でもその犯罪がいずれ破綻するという筋書きがあって、それは高度成長以降も公害や学生運動オイルショックバブル崩壊の低成長期にあってもまあ守られてきたわけ。だからわたしのような50年間生きてきた人にとってこういう結末はもちろん相当ショックである。
この作品“悪い奴ほどよく眠る”というような犯罪ドラマではなく“窮鼠猫を噛む”のパターンで加害者に同情はするけれど、それにしてももうすこしひねりというか小説的決着があってもよかったのではないか。
ああ、そういえば同じ作者の「…トロピカルパフェ…」も、弱者による綿密な復讐譚ではあった。でもあちらの場合小山内さんの巧緻を見破った小鳩くんが彼女を諌めるという儒教的なエンディングだし「ロング・グッドバイ」のマーロウの苦いため息もあった。でもこちらではそれら本来なら魅惑的なドラマを無視し、社会的な風潮を含めた形での「復讐するは我にあり」を肯定しつつ主人公をニュートラルな位置にすばやく押し戻す手管に驚くほどで、やっぱりすこしアモラルな読書体験のように思える。もちろん社会的な要請がこの犯罪ドラマを流通させたのだということは分かるんだけどね。
ハンペーというワトソン役とも違うか、部下か。彼のスタンスも最後に破綻しているようだ。本当の部下として扱うほうがよかったのでは。モース警部シリーズ中で、警部と部下のパスコーとが、同じ家を訪問しているはずなのに実は隣だか裏だかの家の話をしていたという、ちょっと呆れたトリックがあったけど、それに近いようですこし楽しくイライラした。巧みに使えば物語がもっと重層的になれたはず。