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2014-02-19

紙copi」についてのメモ(Windows8でユーザー登録できない現象)

結構長い間、テキストエディタ「紙copi」の有償版を使っている。簡単なテキストデータを分類管理できるのが便利なことと、タイプした文章をその都度自動保存してくれるので、「フリーズして文章が消えたああ」を経験せずに済むからだ。まあ、最近ではフリーズの機会もなくなってきたんだけど、慣れたソフトというのはなかなか変えられないよね。今でも、原稿などは「紙copi」で書き上げてから、他のファイルに張り付けて編集者に送っている。


ところが、PCを買換え、Windows8で「紙copi」を活用していると、ユーザー登録をしているにも関わらず、「試用期間の読み込みに失敗しました」というエラーメッセージが表示され、「支払ボタン」とアラートが点灯する。何度、購入したコードを入力しても音はやまず。起動するたびに、同じエラーメッセージが表示される。何度やっても同じ。あれれ、ライセンスキーはあっているのに。ユーザー登録できないぞ。やり方はどうやるんだ。


公式サイトのQ&Aでは、Windows7については対処が掲載されている。

http://www.kamilabo.jp/faq/howto/000165.html


でも、Windows8の場合は書いていなかった。うーむわちゃわちゃと、対処に困っていたが、普通にセーフモードで起動した後にコードを入力したら、認識に成功したよ。なんだ、簡単じゃないか。


同じような報告をしている人は、他にもいたので、このやり方でいいみたい。

http://w8.vector.jp/detail.php?s_no=234960


同じ現象に困っている人が検索するかもしれないので、メモして公開。

2014-01-08

ブログ更新しなさすぎワロエナイ

いやはや、ついに1年以上ブログ更新しませんでしたね。chikiです。今年も言っておきますが、荻上チキとちきりんは別人です。マジで。あけましておめでとうございます、ですら、一回分すっとばしているっていう。媒体執筆やラジオやSynodosなどをやったうえで、さらにブログでこそ更新したいネタみたいなものが減り、なおかつ短文ならTwitter、内輪向けなら友人限定Facebookで済ませるようになったうえ、それなりに毎日を忙しく過ごしており、さらにはブログではたぶん報告していなかったであろう二人目の子の誕生もあって、時間が余ったら余ったで子どもとの時間に使いたいわい、という感じになっているわけです。でもあれね。はてな記法とかまだ覚えているもんですね。まあそりゃそうです。更新が減ったとはいえ、このブログを開設してもう10年が経つわけですし。会長の件は悲しい出来事でした。


一時期はsynodosでもニコ生で番組をやってたのですが、ブロマガ化してからやめてます。震災以降特に、ニコ生が担っていたメディア機能の側面を捨て、あくまでプラットフォームなのだという形にシフトしたことにより、番組作りのコストがあがったので、じゃあちょっとそこに時間は割けないなっていう感じでして。それに伴い、タイムシフト予約してまで見たい番組もなくなったので、ニコ生のプレミアム会員も脱退しました。いまネット上の楽しみとかは特にないですね。暇があれば、取材にでかける日々でございます。


夜の経済学

夜の経済学


昨年は盟友の飯田泰之と、こういう本も出しました。今年も数冊の本を準備しております。それと、夜の経済学的な仕事は、イーダ君と続編を仕込み中。なかなかデータがとられない変わった統計を独自で取る、という活動は相変わらず続けております。気になる人は『週刊SPA!』内の連載企画をご覧ください。ひとまずリハビリ的更新と、簡単なご報告でした。

2012-07-04

「復興アリーナ」スタート。

シノドスで新しいサイトを作りました。


「復興アリーナ」

http://fukkou-arena.jp/


震災・原発事故関連記事は、こちらにまとめていきます。支援者インタビュー、記者インタビュー、ワークショップのテキスト化、被災地ローカルメディアの電子アーカイブ化、各種ディスカッションの模様など、様々な記事を掲載していく予定です。ご支援、何卒よろしくお願いいたします。

2012-06-18

「困ってるズ!」すたぁと

http://synodos.jp/komatterus

大野更紗×荻上チキ、シノドス×わたしのフクシ。障碍にまつわる「困ってること」を共有・発信するメルマガですよっと。『困ってるひと』発売一周年を記念しての試みでもあるよ。無料版と応援版とがあるので、おこのみでおねがいいたします。


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みすこそさんに似顔絵アイコンも描いて頂きました。うれしい。

2012-04-12

被曝対策、高齢化、医師不足――南相馬市立総合病院が取り組む課題

2012年2月18日。東京大学医科学研究所の上昌広氏の紹介を受け、南相馬市立総合病院を取材させていただいた。


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南相馬市立総合病院は、東京電力福島第一原子力発電所から23キロの場所にある。そのため、震災・原発事故以降、被災地医療および被曝医療の最前線となっている。


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病院に入ってすぐ、「ここは福島第一原発から23kmです」の文字が飛び込んでくる。ホワイトボードには、毎朝の線量が書き出されている。


今回、取材を引き受けてくださったのは、1980年生まれで、僕と同世代の若き医師、原澤慶太郎氏。原澤氏は現在、千葉県の亀田総合病院から出向し、南相馬市立総合病院にて医療活動を行なっている家庭医だ。現在の南相馬市の医療の課題について、丁寧に教えていただいた。その模様を掲載させていただく。


――被災三県などを取材しても、やはり福島県の場合は特に、原発事故の陰が大きいと感じます。医療の現場では、どのような課題があるのかを教えて下さい。


原澤 私は去年の11月から、南相馬の病院で働いています。南相馬はもともと、医者が少ない地域でした。そこに追い打ちをかけて、震災と原発事故が起きました。多くの方が避難をし、医者も看護師も一挙に減りました。


もともと7万人いた人口が、一時は1万人にまで減りました。それが今では約45000人にまで戻ってきたのですが、戻ってきたのは、ほとんどがお年寄りです。若い世代は会津や東京などに行ってしまいました。つまり、南相馬は、極めて短期間でいきなり高齢化したことになります。


これほど短期間で高齢化したわけですから、高齢化に対応できるようなインフラが整備されていません。原発事故は、多くの「唐突な社会変化」をもたらしました。産業構造も崩壊しました。現場もどうすればいいのかわからない状況が続いています。


――変化がゆるやかなら、コミュニティバスの充実や訪問医療・介護の拡充など、まだ準備ができたかもしれないが、確かにわずか1年では難しいですね。医師不足に加え、患者の数が増えている現状もあると。被曝の状況についてはどうなっていますか。


原澤 南相馬では、1月の下旬に一万人分の検査が済みました。でも45000人が帰ってきていますから、まだまだこれから頑張って続けなくてはなりません。それでも、一日に110人の規模で検査できる体制が整っているのは、日本でここだけです。


被曝については、一回検査をすればそれで済むというものではありません。検査は継続的に行わなくてはなりません。みなさんがいつでも検査を受けられますよ、と言える状況を作らないといけません。そのためには、さらに体制を整える必要があります。


例えば甲状腺の検査や内部被曝の検査を安価にするというのは、みんなが検査をするインセンティブを高めます。ただ、無料にすると、今の規模だと外来がパンクしてしまうかもしれません。行政の適切なバックアップも必要です。


被曝については、もちろん閾値というのは設定できませんが、医師の感覚でフォローが必要だと感じられるのは、数十人、という感じです。その方々を詳しく調べると、いくつか生活の中で、原因となる行動をとっていたりします。例えば、自分の畑でとれた作物を食べた老人の方がまずは多いです。それから、子どもたちの場合は、生っている果物を食べたりしていたりした子もいました。


そうした方々は、問診を通じて、そうしたケースを個別に改善をしていく必要があります。食生活を改めれば、被曝量にもしっかりと改善が現れます。


被曝データの出し方については、しっかりと検査をして出していく必要があります。単に「こんな症例がありました」「こんなウワサがありました」というのはしたくはありません。医師も科学者であるので、まとまったデータを、しっかりとした世界中の人が読めるジャーナルに掲載するというのが必要だと思います。その上で、わかりやすく丁寧にアウトリーチしていかないといけません。


――「これは放射能の影響……かも!」というような、断片的な情報を拡散するような動きもありました。放射能の健康問題も気になるために引き続き検査も必要で、同時に情報公開も必要になってきます。一方で、被曝以外の健康問題も発生していると伺っていますが。


原澤 高齢者の方は、避難したことによって運動量が少なくなり、高血圧や糖尿病など、成人病と呼ばれているものにかかっている方が多いです。低血糖を避けるために、甘めに料理を作るなどの対応をしたのが、裏目に出てしまった方もいます。また糖尿病は、しっかりと細かな栄養コントロールをしないといけないのですが、長期間診察が受けられなかったため、震災直後のイメージで食事を続けられたという方もいます。


運動不足に加え、被災地でどうしても大きな問題として考えなくてはならないのが、メンタルの問題です。浜通りには10万人くらいが住んでいますが、津波や原発、失業など、100%の人が何らかの精神的ダメージを受けています。そこには当然、ケアも必要になります。


精神的ケアについては、3段階くらいで考えられます。深刻なダメージを受け、死を考えたり、食事や薬を摂取できなくなっているような、専門医の紹介が必要な方。それから、保健師さんや社会福祉協議会の方が見守ってあげれば、なんとか立ち直れそうな方。そしてもう少し軽度で、地域で回復できるのではないか、という方。


今回、この真ん中、保健師さんが必要な方というのがとても多いのですが、人出が足りず、カバーしきれていません。でも、もうすぐ3月11日(※取材時は2月18日)、フラッシュバックする方も多いでしょうし、春先には不安定になる方ももともと多いですから、これからは前後のケアに本腰をいれていくつもりです。


――メンタルの話では、周囲の無理解などもストレス要因になりますね。


原澤 先程お話したように、南相馬には今、高齢者が多いんですね。高齢者の方は、若い年齢の方ほどは、放射能の影響を気にしている方は少ない。一方で南相馬は東京と違って、一家族の人数が多いんですね。六人家族とか七人家族とか。孫ひ孫と一緒に過ごしていたおばあちゃん、お嫁さんが一緒に台所に入ってくれて、孫が帰ってくればだっこして、そうした生活をしてきた方が、70年近く生きてきて初めて一人暮らしをすることになったり。


行政のサポートは入っているけれど、色々困ってもいるし、とにかく寂しがっていたり。同じような方がたくさんいるんですね。身体の健康上は問題なくても、そうした方へのケアというのも必要になっています。まだまだそのあたりができていません。


――被曝に関する相談は?


原澤 もちろん、よく受けます。今この病院では、坪倉正治医師が中心となって検査をしています。ただ被曝に関する情報をウェブにあげても、ここの住人にとってはほとんど意味がないんですね。そもそもネットができない、ケータイでさえ持っていない方が多い。なので坪倉医師は、検査と同時に、集会所などに通って、毎回数十人ずつの住人の方々に説明をしています。


最初の方は、「放射能は匂いがするのか」とか、「身体が水ぶくれになったりするのか」といった質問も多かったのですが、いまはだいぶ進んできたので、質問も具体的になってきています。特に、食べ物に注意すること、定期的に検診することが必要なこと、この二点を中心に、理解が広がってきていると感じています。


【参考】

「内部被曝と向き合う〜 東大医科学研究所医師 坪倉正治さんインタビュー 〜」

http://www.asahi.com/health/feature/drtsubokura_0301.html


――最初の頃は、被曝対策に関する様々なうわさ、流言も広がりましたね。イソジンがいいとか、米のとぎ汁がいいとか。


原澤 味噌、塩がいいとか、乳酸菌とか、色々ありましたね。


――あるいは代替医療とか。つまり、情報不足と不安のために、こうした情報に飛びつきがちな状況があったわけですね。丁寧な検診と注意を繰り返すことで、だいぶ改善されたということでしょうか。


原澤 そうですね。安全だ、安心だと言われても、そんなことははなから信用出来ないわけですね。住人の方と話していても、リスクを負わされたという意識は、みなさんから感じます。


一方で、この地域はもともと、救急医療がどこまでできるだろうという課題があったりしたため、「今までもリスクと隣り合わせだった。そもそもリスクがゼロだったわけではないんだよな」というように思うようになり、新たなリスクをどこまで受け入れるか、という点で選択が変わっている面もあります。これくらいのリスクなら住み続けようとか、とてもそんなリスク受け入れられないので出ていこう、といったように。


――東京大学医科学研究所の上昌広氏は以前、カルテが津波で流されて紛失してしまった患者さんが多くいるため、電子カルテのクラウド化も重要だとおっしゃっていました。医師不足もそうですが、もともと準備できて来なかった問題が山積みだと。


原澤 今、仮設住宅などを往診もしているのですが、歩けない方もいるし、病院に来ることがハードルが高いという人がいるのが、理由の一つとしてあります。もう一つの理由としては、高齢者人口が、ベット数に見合った規模では無いということです。そうなると、在宅医療のウェイトが大きくなります。


当病院では、4月から在宅診療部を立ち上げるのですが、在宅医療においては、電子カルテのクラウド化が重要になります。今は紙でやっているのですが、どこでもカルテにアクセスでき、どこでも閲覧できるということになれば、より往診がスムーズに行えます。クラウド化や電子化は、高齢化社会には必須だと思います。


往診自体の際は、訪問看護師の役割が重要になります。医師の役割は、急変対応や入院の判断などが重要になります。なので、医師不足だから在宅医療が成り立たないということでは必ずしもないのですが、看護師は不可欠になります。看護師の方には、休職中、離職中の方も多いんです。そこからいきなり、救急病棟などに戻るのは厳しいかもしれない。でも、ホームケア、在宅治療なら、戻りやすいかもしれません。


――いま、医者は何人いらっしゃいますか?


原澤 今は、常勤が10名です。でも、一番少ない時で4人でした。医師はこれからも募集していきますが、看護師さんの募集のほうが難しいです。何らかのメリットがなければ、雇用の継続性はありません。地域医療の場合だと、お金を多く出すだけで質が担保されるわけでもありません。そこは色々アイデアを出していかなくてはいけないと思います。


僕らの世代は、この問題に50年、これからずっと取り組んでいかなくてはなりません。とはいえ、若い世代、例えば30代で改めて動くというのは、現実にはなかなか難しいところですよね。


医学部を出て24歳ほどで医者になり、20代後半で初期研修が終え、後期研修が始まる。30代半ばで後期研修を終えて専門医になり、そこで一人前の入り口に立つ。その時にいきなり転職、南相馬などで地域医療を、というのは難しいですよね。意識としても、その人の専門分野に集中してやりたい盛りだとも思うので、そうした中で地域医療のようなジェネラルな仕事をというのも、結構ハードルが高いです。今は縦割りのスペシャリストが多いのは事実で、今後は家庭医を増やすということも重要になるとは思うのですが。


でも、例えば僻地医療なども、実際にやると面白かったりするんです。以前、私がシリアに訪問した際に、「うちは占い師が全部見てくれるんだよ。それで死ぬかもしれないんだけど、『お言葉』をちゃんともらえるから、満足なんだよ」という話を聞いて、医療とは何なのかとか考えさせられたりしたことがありました。もちろんそれは現代医療を否定するということではなく、自分の役割というものを改めて考えさせられる視点をもらったということです。


僕が外科医を志したのは、ロバート・キャパの写真集「Children of War, Children of Peace」を見たのがきっかけでした。ここでは、どこまでが医者の仕事なのかという線引きが流動的な環境でもありますが、いま南相馬で仕事していても、原点回帰をしているような感覚で仕事に臨んでいます。


僕は元々、心臓外科医でした。でも、いまは家庭医として、地域医療に入り、往診などを重ねています。そのことで本当に多く経験を得られています。いまは、奇しくも生まれた高齢化社会の南相馬で、適した医療モデルを作り、それを「南相馬モデル」として模倣されるようなものが作れればとも思っています。


――今はどういう患者さんを診ているのでしょうか。


原澤 色んな方がいますね。今は、新患の方が多いです。新潟に一時的に避難していた方が多いのですが、その後仮設住宅に入ったと。さらにその多くは、小高といって、避難区域の内側に住んでいた方々です。つまり、いままでかかりつけで通っていた病院が閉まってしまっているので、この病院に新患として来られた、という方が多いんです。


「血圧計は線の内側(避難区域内)に置いてきて、あれから測ってない」とか、「(震災以降)ご飯も食べられてない。生きても意味がない」というような相談を受けます。メンタルの悩みも合わせて聞く家庭医なので、トータルで話を伺うため、一人ひとりの診察の時間は長くなります。


でも、ここでは誰もがメンタルな悩みもあわせて抱えているので、そこまで踏み込んでうかがわないと、問題が解決しないことがあるんですね。薬を処方しても、「家族が亡くなった、自分もいつ死んでもいい」といって飲み続けてくれなかったり。「治療して、健康になる意味がない」と。そういう方と時間をかけて向き合っていく必要があります。


来院の方の診察、入院患者の方の診察、救急外来、往診。この4つが主な仕事ですが、あとは正規の意味での往診では無いですけれど、「死にたい」と言っているような方の見守りといいますか、保健師の方と連携とりながら、仮設住宅などを見まわったりしています。それに加えて、地域医療に必要なプロジェクトをその都度たちあげています。


この間までやっていたのは、集会所での集団的予防接種のoperation。いまやっているのは、仮設住宅の方に血圧計をお貸しして、血圧を測ることを習慣付けしていただこうという活動です。この活動には、業者の方も尽力いただいています。


あと、意外かもしれませんが、いま、はしかが流行しそうなので、対策を進めています。調べてみたら、住人の方々のはしかの予防接種率がものすごく低かったんです。日本ではだいたい9割近くの方がはしかの予防接種をしています。はしかの予防接種には四期あって、赤ちゃんの頃、小学校入る前、中1、高3といったタイミングで予防接種をするんですね。でも、この地域では震災の影響もあり、どの段階でも40%近くしか予防摂取していない。


いままではそれでよかったのかもしれませんが、今はボランティアさんを含め、これだけ多くの方が外からやってきている状況ですし、仮設住宅で密集して暮らしているわけですから、とても感染しやすい状況が整ってしまっています。なので、いまは啓蒙と予防接種のプロジェクトも行なっています。


――産婦人科の方がほとんどいないとも伺いました。


原澤 はい、数えるほどしかいません。元々少なかったのですが、患者さんも医者も、両方減ったんですよね。でも、妊婦の方は今もいらっしゃるので、どんなに患者さんが少なかったとしても、医師は必要になります。


――震災直後と今の課題に、変化は?


原澤 私は震災後にここに来たので、直接対応したわけではないのですが、看護師の方などからは話を伺います。この病院も津波がすぐそばまで来たのですが、津波の被害はほとんどがゼロかイチで、怪我などなかった人か、お亡くなりになってしまった方、というのがほとんどなんですね。だから、何も出来なかった、という話をよく聞きました。その後は、ご飯も入ってこない。患者さんのご飯もないけど、スタッフのご飯がない状況をなんとかやり過ごしたと聞いています。


そして、他の病院との、患者さんの受け入れ、支え合いですね。ここでは、行政の指示はほとんどありませんでした。医師や看護師の職業意識から、現場で対応した。それは素晴らしいことなのですけど、有事に対する国としての対応はあまりにも無防備だったなと思います。


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お話を伺った後、原澤医師が「健康管理の一番の要」と呼ぶ、WBCの実物を見せていただいた。


原澤 計測する時は靴を脱いで、中に立っていただきます。一回の検査は2分です。精度を上げたければ5分で測ることもできます。

――これは一台のみ?

原澤 そうです。例えば三台あったら、もっと助かるんですけど。

――一台いくらなのですか?

原澤 五〇〇〇万円ほどです。でも、今後の健康管理の一番の要になるものですから。

――現在の子どもが大人になるまで続けなくてはならないものですよね。

原澤 もちろん。院長は、100年間続けると言ってます。そのうち、技師も不要な、日常的なツールにしていけるようにする必要もあるでしょうね。

――身体測定の一環で測るような?

原澤 そうなると思います。残念ですけど、それがこれからの姿だと思います。食品検査も、すべての学校と、それから食品マーケットに置きたいですよね。例えばウクライナだと、食品を検査してシールを貼ったりしているので。

――ここで検査した結果は?

原澤 紙に出力し、外来の部屋で、データを渡して説明します。



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原澤 ここは元々リハビリルームだったんですよ。

――WBC専用の部屋が必要になるとは思わないですよね。


同WBCは、リハビリルームに設置されている。写真はWBCのカーテン裏にある歩行訓練用のプール。まさかWBC用の部屋が必要になるとは、誰も想像していなかった。


今も南相馬市立病院は、原発事故によって新しく生まれてしまった多くの課題と向き合っている。その仕事は、これから何十年以上と続いていく。これからも折りに触れ、そのニーズの変化を取材していきたいと思う。



【関連エントリなど】

震災のあった長野県栄村を取材してきました

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110423/p1

福島県二本松市郡山市での取材記録

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20120329/p1

福島市「常円寺」による除染活動を取材しました

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20120331/p1

ルポ・遺体安置所が語りかけるもの

http://nikkan-spa.jp/88516

釜石&大槌ルポ:「和」Ring-Projectの広がる和

http://nikkan-spa.jp/130543

石巻ルポ:「希望の缶詰」が開いた再生への道筋

http://nikkan-spa.jp/102695

女川ルポ:子どもたちに笑顔を! 『リアスの戦士★イーガー』プロデューサーの軌跡

http://nikkan-spa.jp/110175

柏市で再生される「信頼」のかたち ―― 「農地を測る / 農地を見せる」で何が変わるか

http://synodos.livedoor.biz/archives/1913579.html

原発震災に対する支援とは何か ―― 福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理

http://synodos.livedoor.biz/archives/1891136.html

2012-04-01

「福島さんちの2011年原子力防災カレンダー」

常円寺を取材させていただいた際(http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20120331/p1)、原発事故前に配布されていたカレンダーを見せて頂いた。福島県が発行した、「福島さんちの2011年原子力防災カレンダー」 というタイトルのカレンダー。事故後、和尚のもとに、怒りながら持ちこまれたものだそう。


「すごいカレンダーでしょう」と和尚。確かに、今見ると、シュールなブラックジョークのようにしか見えない。とりいそぎ、その場で撮影させていただいた。いくつかの媒体では既に紹介されたとのことだけれど、記録も兼ねてエントリー化しておく(全ては記事にできていないが、和尚には他にも、実に様々な情報を丁寧に教えて頂いた)。



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「【福島県】このカレンダーには、万一、原子力発電所に緊急事態が発生した場合に、地域のみなさんが取るべき行動が書かれています。ぜひご家族で内容を確認し、行動について話し合い、全員がよく見える場所に貼って、みなさんのお役にたててください。」


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「事故がおきた場合に備えて、いろいろな対策が決められているよ。」


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「原子力発電所で事故などがおこったときは、様々な方法で知らせてくれるよ。」「デマなどに惑わされないように気をつけ、自分勝手な行動はつつしみましょう。」


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「屋内退避の指示は、防災行政無線などで知らされるから、よ〜く耳を傾けてね。」


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「避難の指示が出たら、情報をきちんと確かめて、あせらず協力し合って避難しよう。」


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「避難所では健康相談や応急手当も行われるよ。困った時は、係の人に相談を!」


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「屋内に保存されている食べ物は安全だよ。日頃から保存食を準備しておこうね。」「飲食物摂取制限時には、屋内に保管してあるもの以外は飲食しないようにします。たとえ自分で作ったものでも、屋外で作ったものは飲食してはいけません。」


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「屋内退避 避難の解除 屋内退避、避難が解除されても、引き続き皆さんの健康維持や地域の復旧を支援します。」「事故後も、国・県・町は協力して、みなさんの健康維持と地域の復旧に取り組みます。」


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「緊急時に役立つ準備品」「もしもの時の集合場所と連絡先」


【このカレンダーについて言及しているブログ】


「福島さんちの2011年原子力防災カレンダー」 お見せします。/ あなたに元気をあげたくて!!

http://blogs.yahoo.co.jp/y58122001/52574435.html

中身がとても充実していて、事故後東京電力が「事故は想定外」と話していたのに何故かスッキリしないのです。


原発事故検証 つるりん版 その1 / つるりん和尚のああいえばこうゆう録

http://blogs.yahoo.co.jp/oharuzizo/archive/2011/12/22

以前にも「福島さんちの2011年原子力防災カレンダー 」なるものが何も役に立っていなかったことを『福島復興プロジェクトチーム「花に願いを」』のブログで紹介しました。

これの最終ページに記載されているいざという時の避難場所に向かった人でさえ、まともな対応はとられず結局は自家用車で避難することになり・・・

受け入れ先も設置されていなかったので、個々に知人を頼って身を寄せました。

しかも「スピーディ」が使われなかったことにより、福島市方面に逃げた人も大勢いました。


福島さんちの2011年原子力防災カレンダー / 人生は365歩のマーチ

http://ameblo.jp/hananinegaiwo/entry-11025628800.html

2011年のカレンダーっていつ発行するんだろう。

へぇ〜。想定外ねぇ〜。 (°д°;)

2012-03-31

福島市「常円寺」による除染活動を取材しました

2012年2月18日。この日は、福島県福島市にある「常円寺」の阿部光裕住職(僧侶名が鶴林=かくりんのため、ついたあだ名は「つるりん和尚」)と除染ボランティアの方々を取材した。


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和尚は原発事故後、地元の除染活動をしながら、線量が高い土を、人気のない所有地の一角で一時的に預かっている。和尚にはお忙しい中、活動のいきさつや内容などを、丁寧に教えていただいた。


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和尚「今回、原発事故が起きました。これはもう、どうしようもない。現実に降り注いできている。手も足も出ない。なんとかしよう、というレベルまでなかなかいかない。でも、やれる努力はやろう。しょうがねえなあ、って言いながら、やれる努力だけはやっていこう、と。

『除染なんてやってもムダだ』って言う人もいるじゃない。わあった。あなたは言ってろと。俺達はムダだって分かってる。だから、参ったなあってため息つきながら、でも、(線量の高い土を)ほうっといたってしょうがないだろうって。そしたらば、これをとって、人が住んでいないところに一旦置くくらいは、させろよって話なんだよ。

『ムダだ』って言うのはいいけど、それを選択してやってる以上、それくらい、させてくれって。『そんなことしたら被曝するぞ』、そりゃするよ。でも置いておきゃそれでも被曝するんだから、運ぶくらいはさせてくれって。

私は仏教だから、無常観、だね。喜びは続かないけれど、哀しみも続かない。絶えず入れ替わって変化していく。思い通りに行かなくて深いため息をつく、しょうがないなって言いながら、(除染を)やってくっていう選択をしている」


かつて病気で入院している旦那さんを支えながら畑仕事を続けてこられた、80歳ほどになる檀家さんのおばあちゃんがいる。和尚が「ばあちゃん、偉いねえ」と言うと、「偉くもなんともねえ。旦那がせっせとやってきた、あの畑を荒らしとくわけにはいかねえ」「身体が持つ限り、この畑を耕すんだ」と返すような方だ。旦那さんを看取ってからも、おばあちゃんは畑仕事を続けてきた。


その元気だったおばあちゃんが、原発事故後、「こんなことになるんだったら、こうなる前に死にたかった」と和尚に言ってきた。この話は象徴的なんだと、和尚は語る。


和尚「そこの土地は単なる土地ではなくて、先祖伝来、人の命がそこにあったというもの。理屈としてではなく、感覚として持ってる。それが、こんなことになって、『作るな』とか『作れ』とかって争いが日常になって。(そこにきての)その言葉は、とても重い。(でも)こういうおばあちゃんの感覚と、いま子育てしているお母ちゃん(の感覚)とは、やっぱあわないんだわ。(お母ちゃんは)「今こんな状況で作るなんて、信じられない」というわけ。でも、その気持も分かるわけ。(でも)作ってきた方の気持ちも分かるわけ。日常の中で、色んな対立の構造を生んでいって、それに荒らされてきたのが今の福島の現状で。非常に辛いよね、毎日がそれだから」


そこにあるのは、「ただの土地」ではない。特に、年齢が上の方になるほど、ふるさとや土地への愛着は強い。そんな中、自分たちが手を動かすことで、少しでも現状を改善し、そのうえで「行政をその気にさせる」のだという。


※参考:福島大学が行った避難住民へのアンケートでも、高齢者ほど「元の居住地に戻る意志」がはっきりと高いことが分かる。


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※元データはこちら→「双葉八町村災害復興実態調査」 http://bit.ly/Hu9ADN

※報道された記事→「『故郷に戻らない』4人に1人 原発事故避難8町村調査」 http://www.asahi.com/national/update/1108/TKY201111080497.html




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和尚は車で、仮置き場の場所へと案内してくれた。除去した土は袋に入れられ、大きな缶の中に密閉されて保管されている。


和尚「6月時点で、こうして(自分の敷地に)置きだしたの。(…)感覚的には、(みんな)生活圏に置いておくというのは嫌でしょう。だったらこういうところに(除染した土が)あったほうがいいというのが、私たちの判断なの。仮置くぐらいならね。永久に置くってなったら、話は別だけど」


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和尚「この缶に近づくと……(ピーピーとアラーム音がなる)こうやって線量計が鳴る。でもこうして(一メートルほど)離すと……(アラーム音が止まる)こうやって、鳴り止む。缶の上でこうして測ると……12〜13μs/h前後だね。この缶の蓋をあけると、(土が)袋に入ってる。この土の上で測ると、15…16…まだあがるね。17μs/h。だいたいこのあたりだね」

――この缶にはどれくらいの量が入るんですか?

和尚「200だね、200キロリッター。重さにするのは難しいかな。水分含んだりで、結構変わるからね」


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土の真上で測ると、多くの線量が計測されるが、1メートルほど離すと、それだけで1μs/h前後まで下がる。さらに10メートルほど離れると、1μs/h以下に。数センチ、数メートルの距離で、線量が大きく変わることがとてもよくわかる。


和尚「ちなみに、寺だけに、<TERAA>っての使ってるの(笑)」

――本当ですか?(笑)

和尚「当然(笑)。いや、色々使ってみたんだけど、これがなかなかいいんだよね。精度もいいし、時間もいい、すぐ(数値が)出てくれるからね」


和尚はたまに、こうした冗談を言うので愛らしい。


仮置き場に続き、和尚には除染活動の模様を取材させていただく。


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取材時は、朝の9時頃。数人のボランティアの方が、朝から活動していた。


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写真は、除染ボランティアの方々が作った、移動しながら線量を測るためのカート。キャリーカートや距離計などを活用し、クリップ、量り売りされているチェーンに、手頃な箱で自作。


――普段はどういうお仕事を?

A「普段は主婦をしています」

――カウンターの使い方は震災後に覚えた?

A「はい。普段使わないです。でも、必須科目になっちゃうかもしれないですね。もう小学生にも必須でいいと思うんですよね」

――普段はどういうお仕事を?

B「普通の会社員です。エンジニア」

――カウンターの使い方は?

B「震災後ですね」「日本中でこんな調査が必要になるなんて誰も思わないから。こんな(自作の計測)道具、もともとないからね」


ボランティアの方々は、みなさん震災後に、計測の方法や除染の方法を覚えた方ばかり。ちなみにこの時、マスク無しで取材していたことを、除染ボランティアの方に叱られてしまう。すみませんでした。



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側溝や、水の流れやすい場所など、線量が高いところを探し、数字をチョークでマーキング。数値が高めのところにはゼオライトをまく。ゼオライトは、「ここは線量が高いぞ」という注意喚起にもなる。こうして、少しでも「ホットスポット」を「見える化」していく。


学校側には、子どもたちに、「ゼオライトを見たらそこから離れて歩くように」と指導するように依頼。土やゼオライトは、後ほど剥がし、袋につめ、缶の中へ入れ、仮置き場へ。


和尚「側溝なんかは、子どもが探検気分でよく歩くでしょう」「こういうところはどうしても高くなる」「子どもは道の真ん中を歩かないですよね。端っこを歩くでしょう。で、これ(高い線量の状態)がずっと続くと、バッジにきちっと現れちゃうので」「子どもが通う以上は、そこを少しでも下げてやろうと。それだけのことなんだ」「重機が入る行動は行政がやってくれるだろうけれど(入り組んだ山道はやってくれない)。でも、そういうところが、高くなるわけだから」


今でも地元の学校には、多くの子どもが通う。だからこそ、通学路などの子どもたちがよく通る道は、優先的に、丁寧に除染する。「全部(の道路)はできないんで、とりあえず子どもが通学するところだけはなんとかしようと」。通学路の一つは、かつては約60μs/hほどもあった。場所によって大きく数字も変わるため、高めのところを丹念に探し、線量を下げる努力を続ける。「行政から見たら笑っちゃうようなことでも、我々にできることって、そういうことだからね」と和尚。


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除染に使う道具の一部


「ボランティアに除染をさせるなんて」という声も多い。ただ、除染ボランティアの方は、「子どもたちのために」とこうした作業に自発的に参加する人も多く、また一方で、現状の「ゼネコン除染」「行政除染」に疑問をぶつけるボランティアの声もある。曰く、除染方法が雑である、運搬の時にシートを被せるなどの配慮が足りない、運搬先の仮置き場は災害時に土砂流出の可能性が指定されている場所である、きめ細やかな動きができていない、といった批判だ。


和尚による、「ゼネコン除染」「行政除染」批判エントリ

http://blogs.yahoo.co.jp/oharuzizo/archive/2012/03/16


雑な除染では、むしろ逆効果にもなる。また、いくら行政が「やるやる」といっても、道路によって管轄が異なるなどの理由で、対応が遅れることも。「だからやるわけですよ。ここにあるより、あそこ(仮置き場)にあるほうがいいじゃない。そんだけのこと」「(これを)ほっとけ、黙ってろって言われる方が、苦痛でしょう」(和尚)。


和尚と車で移動中、つけていたラジオ(ラジオ福島)から、一度は子どものために避難したが、結局は福島に帰ってきたという方の話が流れていた。


その方は避難先で、「浪江とかならともかく、線量が低い福島市なんだから、福島市に帰れ」と言われ、グサッときたという。「そういう思いをして避難生活を続けるのと、福島市に戻ってくることと、どっちが我々の健康にとっていいのか、悪いのかと考えると、やっぱりストレスを我慢するほうが、直接的に体調に現れるんですよね」。そのため、たった五ヶ月で避難生活を終え、福島市に戻ってきたという。


福島市内では、線量の高さは気になるし、食べ物にも気をつかうけれど、住み慣れた場所なので、リラックスして暮らせる。避難する人、避難しない人、非難したけど戻ってきた人といるけれど、どの選択をしても簡単ではない。それぞれの選択に、それぞれの苦労がある。ラジオ番組で其方は、そのように語っていた。それを車中で共に聞いていた和尚は、「(自分と)同じようなこと言ってるね」とつぶやく。見えにくい問題が、まだまだ山積みだ。


※なお、後で調べてみたところ、この番組はラジオ福島の『獨協の絆』という番組だった。検索したところ、podcastが見つかった。「第7回/平成24年2月18日放送」というところで聞ける。

http://www.dokkyo.com/news/030/001761.html


和尚は取材中、次のようなことを語った。


和尚「しょうがないんだよ。影響があっても、甘んじて受け入れなきゃって状況だから。それが嫌なら、出ていってもいい。それは悪いことじゃないからね、ちっとも。だけど、とどまってそれを受け入れるという選択も、別に自殺行為でもなんでもないんだよ。人間が過ちを人間が受け止めるということだから。」


また、和尚は僕が取材をさせていただいた翌日のブログで、次のように記していた。


今日も除染活動をします。

悲しいけれどさせていただきます。

自然に濃縮されてできてしまったホットスポットのみを除染します。

それは儚い行為かもしれませんが、

生きていくために最小限必要ではないかと思うものを

とりあえずさせていただきます。

http://blogs.yahoo.co.jp/oharuzizo/archive/2012/02/19


そして、その次の日のエントリーでは、以下のような記述がありました。


生活区域、特に子供目線で行動範囲を考えて計測します。

見つけた場所にはゼオライトを撒き、

小学校などを通じて子供たちが近寄らないように注意を促してもらっています。

そして、ボランティアの皆さんと除去していきます

(…)

子供を避難させる親の気持ちが十分過ぎるほどに解ります。

留まることを選択した人は、防護のための徹底した智識の習得も必要です。

なおかつ、精神的負担の軽減を図ることも大事です。

そのいずれも中途半端にしか支援しない行政は必要ありません。

自分たちの理屈だけで、民間人の意見をほとんど集約できない

温室育ちに何を言っても無駄かもしれませんが、

それなら邪魔だけはしてほしくないと思うのです。

まだ福島は非常事態中なのですから・・・


「避難か除染か」と単純化できるわけではない。避難する人も、留まる人も、それぞれの選択に、それぞれの事情と苦労を抱えている。除染活動も、今回のような方法論だけではない。場所や担い手などによっても様々で、除染活動の実態や事情でさえ一括りで論じることは難しい。


参考:「除染ボランティア」はこんな活動をしている

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20111114/223830/


でも、「外」からの大雑把な論議が止むことはない。このギャップを埋めるためにこそ、まだまだ報じるべきことはたくさんあると思わされる。



【リンクなど】

常円寺のウェブサイト

http://www.oharu-zizo.jp/


「つるりん和尚」のブログ

http://blogs.yahoo.co.jp/oharuzizo


和尚の除染活動を取材した方のブログ

http://asama888.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-62ee.html


福島の「見えない雪」は今:ロイター通信

http://bit.ly/zIE1jF


原発震災に対する支援とは何か ―― 福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理 猪飼周平

http://synodos.livedoor.biz/archives/1891136.html


福島県二本松市郡山市での取材記録:荻上式ブログ

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20120329/p1


youtubeに、和尚を取材した方の動画があがっていたので紹介。

D

2012-03-29

福島県二本松市郡山市での取材記録

以下は、2012年2月17日時点における、福島県二本松市、郡山市での取材記録です。


この取材は、NHK教育テレビの「ニッポンのジレンマ」という番組内で報告するためのもので、撮影スタッフと共に行った取材でした。既に番組(ニッポンのジレンマ2 講義編)は放送され、その際に放送されたのは取材模様のごく一部であったため、せっかくなのでひとつの情報発信として、あるいは番組をご覧頂いた方のサブノートとして、取材メモや写真などをいくつかクリップしていきたいと思います。既にFacebookでは、これまでの取材時に撮影した写真の一部などはクリップしているのだけれど、エントリー化したほうが見やすいと思うので。


2月17日は、社会学者の開沼博氏と共に、NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹氏の視察に同行。NPO法人フローレンスが運営する、放射線被曝を気にせず遊ぶための施設「インドアパーク」。第二、第三のパークを作るために候補地を視察する駒崎氏に張り付きつつ、取材。


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福島県、二本松市の公園(安達ケ原公園)に設置されていたリアルタイム線量測定システム。同様のものが、数千台が学校や公園に設置されてる。


関連記事:「線量リアルタイム測定システム」10分ごとの結果公開

http://www.minyu-net.com/news/news/0222/news5.html


この時の数値は0.326μs/h。この広い公園は、以前に表面の土と入れ替えたものの、この日は利用者の姿はなし。管理している方の話によれば、震災後、外で遊び利用者は目に見えて減っているとのこと。


この公園には、屋内遊戯場があり、そこでは数組の親子が遊んでいた。それぞれのお母さんに少しお時間をいただき、お話を聞く。


■二本松市内の屋内公園にて。おばあちゃんと一緒に子どもと3人で遊びに来ていた、2歳6ヶ月の女の子を持つお母さんとのお話

「この公園に来るのは初めて。子どもを持つお母さんに聞いて、初めて来たんです」

――屋内で遊べると聞いて?

「そうですね」

――外では遊べない?

「震災後、まったく外には出してないですね。近くに、保育園に併設している屋内施設はあるんですけど、今(2012年2月)はインフルエンザが流行ってるので、そこでも遊ばせられなくて。(普段は)家でほとんど遊んでたんです。みんなどこに行ってるのかわからないですけど、外で遊ぶ人はそんなには見ないですね」

――こういう屋内の施設があると分かったら、もっと来たいと思いますか。

「テレビで、福島市や、赤十字などが施設を持ってると聞いたんですけど、混んでいるとなかなか行きたくなくて」

――子どもを遊ばせられないからと、二本松から出ちゃう方もいる?

「友人では、山形のアパートを借りて行ったり来たりしている人もいるし、郡山の方だと、新潟の方に借りている人もいますね。いろいろですね、家庭環境によって。うちも本当は避難したいけれど、主人の仕事の関係とか、年をとっているおじいちゃんおばあちゃんもいるので、置いてはいけないし。避難したいけど、できないっていうのもあるし」

――お母さんはマスクをしていますけど、それは、対策?

「あ、これはインフルエンザです(笑)。どこかからもらったり、娘にうつしたりすると心配で」

――周りでは、マスクはどうですか?

「園のセンターなんかに行くと、お母さん方はけっこうつけてますね。でも、子どもは、はずしちゃうんで。うちの子はまだ、マスクを渡しても外して遊んじゃうので、マスクはできないですね」

――保育園以外のお出かけは?

「食料品を買いにスーパーに行く時に連れて行って、その時にスーパー内を少し歩かせるとか。そのくらいです」

――2歳6ヶ月くらいですと、砂遊びとかもしたい年頃ですよね。

「そうなんです。でも、(この子は)まったく砂遊びをしたことがなくて。(……)できれば、(保育園併設の施設とかに)行かせるようにはしています。うちの子、まだあまりお話が、ゆっくりめで。他の小さい子と一緒に一緒じゃないからかなとも思って」

――僕の子も同じくらいで、やっぱり言葉の遅れとかは気になったりしますけど、他のお母さんと話すと「うちもそんなもんよ!」とか言ってくれるんですね。そういう安心のためにも、ママ同士のつながりも必要ですよね。

(……育児話……)

「保育園や幼稚園に預けていないお母さんは、外では自由に遊ばせてはいないですね。放射能がどういう影響があるのかわからないので、好んでは遊ばせないですね。屋内施設ができたらいいなとは思いますが、できるのがみんな、福島とか郡山なんで、毎日行くわけにはいかないんですよね」


■4歳の男の子と一緒に屋内公園に来ていたお母さんのお話(Aさん)

――他の屋内施設にもよく行かれるんですか?

「この間は、本宮の「えぽか」に行ったりしました。でも、この子の下にもちっちゃい子がいるので、だいたいは家で遊んでます」

――普通の公園では遊ばない?

「遊ばないですね。今は寒いからというのもありますが、やっぱり心配なので」

――線量が。

「そうですね。今日は、友だちと一緒に来たんです。こういう施設があるって聞いたんで」

(…)


■1歳半の女の子と一緒に屋内公園来ていたお母さんのお話(Bさん)

――いつもはお家で?

「そうですね、いまは」

――外の公園では遊びます?

「外では、遊ばないですね。実家が二本松なんですけど、今は郡山に住んでいるので、新しくできた「PEP」に行ったり、「ニコニコこども館」に行ったりしてますね」(※いずれも屋内施設)

――他のお母さん方と相談したりしますか。

「そうですね、他のお母さん方も、やっぱり「(外では)遊ばせられないね」って話してますね。「ニコニコこども館」も、子供の人数が多いので、いまだとインフルエンザが心配で遊びに連れて行ってあげられなくて。前は保育園に行ってたんですけど、園でも外で遊ばせられないので、中で遊ばせてましたね」

――いま心配していることは?

「やっぱり、今後の(子どもの)健康状態は一番心配ですね。県で18歳未満の医療費とか無料化っていうことで検討されていると思うんですけど、そうなってもらえると、病院に行く回数が増えても、少しは安心していけるかなって。子どもだけじゃなくって、大人の方は大丈夫なのかなって心配も少しあります。食べ物とか、水とかも、すごい気を使ってますね。大変ですね」

――子どもは、やっぱり外に出たがりませんか?

「しますね。雪とかが好きなので、触りたがるのを、「ちょっと待って」って止めたり。「大丈夫だ」って言われてますけどね、本当に大丈夫かはわからないからね、って思っちゃって」


■上述、AさんとBさん、合流してのお話

――周りで避難されている方は?

A「結構いますね。年賀状で、「住所変わりました」って書いてる人が結構いるなって」

B「震災の日からすぐ、もういないって方が多かったですね。やっぱり、そうやって行ける場所があっていいなって思いますね。実家も福島県、とかだと、どうしても行く場所がないし、仕事もないし、生活できない。だから避難できない」

A「避難しても、どういう生活できるのか、不安だしね。そんなだったら、家の中にいるしかないのかなって」

B「転々とされている方も多いですよね。避難しても、定まらなくて、あちこち、「いまはここにいる」みたいな感じで。そうすると、お金大変だろうなーって、すごい思いますけれどね。保証されるわけじゃないしね、自費だから。でも、あまり神経質になると、ストレスで病気になると思うから」

A「もう、こういう生活をしていくしかないんだって、思って。子どもにあまり不安かけないようにするしかないのかなって」

B「地震になったときとかの、あの(テレビとかの)音とかにも(子どもが)敏感で。あの音がなると、すごい速さで抱きついてくる。「怖いー!」みたいに。大きい音に敏感ですね。地震の時もすごい泣いてたから。食べ物と、あれだよね、外で遊べないと、体力つかないんじゃないかなって」

A「運動は全然、前ほどはできない」

B「日光にあたらないしね」

A「家の中にいるから」

B「県外とかにも行くようにしているんですけど、そうすると同じくらいの子どもたちは、何も心配しないで遊んでていいなぁって思うんですよね」

A「うん、うん」

B「(屋外の)公園に行っても誰もいないしね。ここも、土を削ったと思うんですけど、いないですよね」

B「(除染が進んでも)どのくらいなのかなって。子どもってすぐ手を口にいれるし、転びやすいし、転んでる度に手を洗ってもられないし」

A「砂遊びなんか、できないよね」

――どんな遊びをさせてあげたい?

B「かけっこ。歩けるようになってから外に出てないので。(出かける時は)ほとんど抱っこなんですよね。やっぱ、時間かかっちゃうので。外の滑り台とかも、一回も遊ばせたことが無いので。地震の時はまだ小さかったし。だから、可哀想ですよね。お花とか咲いてるのとか、昆虫とか、自然のふれあいがなくなっちゃうんだろうな。テレビで見る花、テレビで見るちょうちょ、みたいな。短時間ならいいんだろうけど、どのくらいならいいのかわからなくて」

A「ねえ。どのくらいからかわからないから」


子どもへの影響を気にして、なかなか外で遊ばせられないこと。避難したいという気持ちもあるが、お金以外にも、仕事、家族関係など、できない事情があること。安全という情報も信じられず、ストレスになることなどを伺う。


別の、3児のパパさんにお話を伺った時は、「一度線量の低い県外に出れば、それまで体内に蓄積された放射性物質が体内から出ていく、というウワサを聞いたことがあるよ」とポツリ。「ウワサだと分かっていても、万が一って思って、でかけてみる。それが親なんだよね」とのこと。「県外にでかけること自体は、いいことですからね」と返すも、モヤモヤが残る。


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これは駒崎氏が運営する、「ふくしまインドアパーク」の模様。「月500円で遊ばせ放題」で、サービス開始三週間で利用者は1000人を超えた。


インドアパークのfacebookページ

http://www.facebook.com/fukushima.indoorpark


以前、シノドスで取材をさせてもらったときの記事

http://synodos.livedoor.biz/archives/1867082.html



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子どもたちに遊具の人気投票をしてもらい、不人気のものは別の遊具へと入れ替える。どんなに組み立てに苦労した遊具だろうが、値が張ったものであろうが、子どもたちに使われなければ意味がないとのこと。


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受付のところには、「放射線測定器こちらです」。屋内だけあって、線量はとても低かった。


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取材中は、こうした地元紙、フリーペーパーなども、しばしば手に取って読む。


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育児情報の掲載されたフリーペーパー、1ページ目には放射線測定器や測定所の案内記事。


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屋内施設の案内などに力をいれている。冬というだけでなく、「震災後、子どもたちは安心して外で遊べない状況に…ここでは、屋内で安心してカラダを動かせるスポットを紹介!」の文言も。


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放射線対策の掲載された母親向けのペーパーなどはたくさん見かける。中には、気になる記述のある食事案内記事なども。



以前、シノドスジャーナルに、猪飼周平氏の「原発震災に対する支援とは何か ―― 福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理 猪飼周平」という記事を掲載させていただいた。そこには、


福島の人々がその地にとどまることを選択していることについて、福島の現状を理解しない人びとの中には「メディアが安全を煽っているために住民が避難の必要性を認識できないでいるのではないか」と考える人が少なからずいるようだ。もちろん福島県の地元新聞である福島民報や福島民友などをみると、「風評被害とたたかおう」といった記事が多いのは事実である。だが、この見解が正しいと考える人は、たとえば福島市において日常みられる次の光景とこの見解が整合するかを考えてみる必要がある。1)福島県内でも福島県産の食品は回避されている。2)書店では放射能から身を守るためのハウツー本がベストセラーとなっている。3)街中で小学生以下の子どもをほとんどみかけない。

これらの事実は、福島県民が放射線に関するリテラシーが低いという認識は事実ではなく、一般の国民より高いレベルで、放射線に関する知識をもっているというのが事実であることを示唆している。

http://synodos.livedoor.biz/archives/1891136.html


と記されていた。実際、色んな人と話をしても、多くの人が放射線に対する知識を持っていると感じさせられる。


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また、郡山市内の書店でも多くの原発・放射線関連の本が並び、ランキング上位にも数冊入っていた。


この他に、翌18日には、南相馬市の病院や、除染ボランティアの方々の活動、地元ラジオ局の方などを取材。


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この写真は翌18日、南相馬市で撮影。宮城、岩手でもそうだったけれど、ボランティアや自衛隊に感謝するメッセージの書かれた看板などを多く見る。福島で見かける看板としては、「除染中」という看板があった。急いで車移動していたため、看板の撮影は出来なかったけれど、「除染 看板」で画像検索すれば、たくさん出てくる。


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病院内の掲示板。


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除染が必要な場所を探すための計測作業。


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高い数値が出来たところをマーキングし、後ほど除染。これらの取材報告は、また別の機会に。


※3月31日追記:書きました→ http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20120331/p1


「福島の人は」と一括りにして行う論評なども、未だにしばしば見かける。けれど、地域、時期、その人の属性など、置かれている状況など、様々な要因によって「当事者性」は大きく変わる。取材をするたびに、新しい情報が得られるのだけれど、同時に、まだまだ知らないことがたくさんあり、とてもじゃないけれど、被災地、被災者のすべてを語り尽くすことなどはできないと思い知らされる。「ここでは、この人は、こういう課題を持っていた」ということを可視化し、きめ細やかなニーズに応じていく必要がある。当たり前のことだけど、何度強調されてもいいと思う。


※ふんわりしたエントリですみません。また機会あれば、ブログでも報告します。


【関連エントリなど】

震災のあった長野県栄村を取材してきました

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110423/p1

ルポ・遺体安置所が語りかけるもの

http://nikkan-spa.jp/88516

釜石&大槌ルポ:「和」Ring-Projectの広がる和

http://nikkan-spa.jp/130543

石巻ルポ:「希望の缶詰」が開いた再生への道筋

http://nikkan-spa.jp/102695

女川ルポ:子どもたちに笑顔を! 『リアスの戦士★イーガー』プロデューサーの軌跡

http://nikkan-spa.jp/110175

柏市で再生される「信頼」のかたち ―― 「農地を測る / 農地を見せる」で何が変わるか

http://synodos.livedoor.biz/archives/1913579.html

2012-03-23

「裏をとっている」とは何か

元ジャーナリストという謎の肩書きを名乗っておられる上杉隆氏が、先日「“放射能汚染”の真実…福島、郡山市に人は住めない」という、センセーショナルな見出しの記事を書き、話題になった。というか炎上した。


「福島、郡山市に人は住めない」の根拠として記事中に提示されているのは、主に「自分が測ったら、地元メディアの報道よりも数値が高かった」「そのデータをみせたら、外国人記者が驚いてみせた」の二つ。


http://togetter.com/li/276770


で、ツイートがまとめられているように、前者については、地元で計測を続けている方からの批判が行われ、後者については、そもそもその発言自体がなかったということで削除された。


【削除された書き込み】

「信じられない。とてもではないが、人が生活できるような数値ではない」

米ウォールストリート・ジャーナルのエリー・ウォーノック記者と、セーラ・ベルロー記者はあきれたようにこうつぶやいた。

先週、福島から東京に戻ったばかりの筆者が、2人の米国人記者に、原発から50キロ以上離れた福島市と郡山市の空間線量の値を伝えたときの反応がこうである。


【削除後のコメント】

【訂正】3月13日発行の夕刊フジ、上杉隆氏「原発崩壊」の連載記事(2回目)で、ウォールストリート・ジャーナル記者の発言はありませんでした。削除しました。


発言の有無に焦点が当たった反応も多いんだけれど、そもそも忘れてはいけないと思うのが、「福島、郡山市に人は住めない」という見出しで煽る、その根拠の提示があまりに「雑」だったということ。もしかしたら、「見出しは自分でつけたのではない」と言うのかもしれないけれど、本質的な部分は変わらないと思う。というわけで、「測った数値」部分にも、丁寧な応答が待たれるところ。


ところで以前、上杉氏と同じニコ生に出演した時、彼にとって<裏をとる>というのはどういうことなのか、という疑問をますます強めるやりとりがあった。上杉氏がかつて、「このままいくと今年は自殺者が5万人を超える」という情報を発信した件について尋ねた時だ。


上杉氏は8月、イベントで次のような発言をしていた。



(上杉)あとね、もう一つ大変なのは、あれ、あのね、これをね、これ多分、言っちゃいけないのか? 言っていいの? あダメだ。えとね。ある、ある、ある政治家の方がちょっと調べたんですけど、えとね、えと、自殺者数が、1月2月3月は、ま、日本は今年間3万人というとんでもない数字なんですけど、1月2月3月までは、ちょっと、例年より少し低めに推移してたんですね。

(畠山)政権交代をしてから減ったというようなことを言ってましたよね。

(烏賀陽)失笑

(上杉)そうしたらですね、4月5月6月7月、もうこのペースで行くと5万人を超えるという。

(烏賀陽)あー。

(上杉)沖縄のあの子が自殺したせいじゃないと思うんですね。朝日新聞はそういってますけど。

(烏賀陽)ふっふっふっふっふっふ。

(上杉)はっきり言って福島県からその周辺が非常に多くなっています。で、これはね。

(烏賀陽)それは本当ですか?

(上杉)ほんとほんと。でますよたぶん。これはね、チェルノブイリのときも、ベラルーシウクライナの、女性、若い女性の自殺率が高くなって、で91年かな、率でいうと世界一になるんですよねベラルーシが、あの自殺の、あのルーマニアを抜いて。それは、やっぱり、えー放射能汚染て、いうか、このチェルノブイリの事故のあとに、自分の子どもが、要するに病気になってくわけですよ、どんどんどんどん、その、5年くらいすると。

そうすると、自分がおっぱいを与えた、自分が食べさせた、と思って、自分を責めちゃうんです。それだけじゃないんですけど、いろんな事情があって、放射能の事故が起こすと自殺が増えるんです。これが大問題になるのに、政治をそれは無視しているし、マスコミはもっと無視してるのは、有機農家の方が、3月のはじめに自殺するんですね、遺書を残して。それ以降、何十人の方が自殺しているのに、一日16人のときもあったのに、全然記事にならないんですよ。要するに、自分たちに都合の悪いニュースだから消えてるんですけど。いやー、本当にひでえ新聞だなと思って、マスコミ、テレビ。

(烏賀陽)そうですよねー。

http://www.ustream.tv/recorded/16731091 (1時間12分10秒頃)


このことについて、後日放送のニコ生で尋ねた際、


・「ユースト見てないでしょう」←見たから聞いてるのだけれど、どうして「見てない」ことにした(い)のだろう。

・「ユーストは確か6月か7月。4月5月のペースで行くと5万人いってしまうという意味で発言」←4、5月のペースでさえも「5万人行く」数値ではなかったからこそ、疑問を抱いた。細かいようだけど、イベントは8月だったし、イベント時は「4月5月6月7月のペース」と言っていた。「予防報道()」というかもしれないけれど、8月時点でデータは公開されていたし、報道もあった。

・「政治家の方に聞いた。ソースは厚生労働委員会の委員二人。名前は出せない」←データの話なのに、「誰経由の情報」というレスで済ませることの是非を問うたのだけど、返答がズレていた。

・「ベラルーシの件は、広河隆一さんに聞いたとユーストでも言っている」←同上。なお、ユーストではこの発言を確認できず。


と、質問の意図とは異なる応答が返ってきた。そして、僕がデータについてしつこく聞くことについて、「評論家とジャーナリストの違い」とも返された。でも、そういう問題じゃないだろう。


ニコ生 http://live.nicovideo.jp/watch/lv83303829

一部がyoutubeにあがってた http://www.youtube.com/watch?v=h_gchvy0L80

他の方の起こし http://matome.naver.jp/odai/2133178887646363401


【関連】

ライフリンク清水康之氏の自殺報道関連発言の真意

http://togetter.com/li/158325


上杉隆「原発事故のせいで今年は自殺者が5万人ペース」→「事実に反する」と江川紹子と清水康之が反論

http://togetter.com/li/176749


平成23年版 自殺対策白書

http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2011/pdf/index.html


僕はこの日のニコ生では、基本的に「上杉隆をどう評価するか」という話をするつもりはなく、「3.11検証の番組なのだから、上杉さんにも、今後の報道の改善のためにこそ、他のメディア叩きだけでなく、自分自身の仕事、特にコミュニケーション面や発信方法で問題だと思った点がないか、自己検証してみてくれないか」という話をふったつもりなのだけれど、終始「俺のどこが間違ってるっていうんだ」的なストロングスタイルで返されてしまったので、思惑と違うやりとりになってしまった。これは僕の「質問力」不足もあると思い、上杉氏にも番組後には「うまく意図を伝えられずすみません」と謝罪した。


とはいえ、「データの扱いがあんまりじゃないか」「発信のスタイルに問題があるじゃないか」という疑問点は変わらない。まあ、もっと問題だと思ってるのは岩上氏のほうだけれど、上杉氏の方が影響力の面では大きいと思う。


【参照】

岩上安身氏「デマといったね。デマだと立証してもらおうか」「えっ?」

http://togetter.com/li/214214


岩上さんの”スクープ”に対する反応

http://togetter.com/li/222976


もしかしたら、「ソース元」の政治家さんって、自殺者が最も多かった日(例えば5月13日の140人)という日付を選んで、「140×365=51100!」しただけなのではないか、という疑念。もしそうだとしたら、そんな人が委員を務めていること、そしてそういう数字を「ジャーナリスト(当時)」にペラペラ話すことは、結構問題なんじゃないかな。


そして、その数字をそのまま聞いた上杉氏が、資料の確認などをせず、「話を聞いた」ことをもって「裏をとった」ことにし、「予防報道()」として公の場で話すというのも、やっぱり問題なんじゃないかな。それって、各省庁の白書公開時のレクチャーをそのまま垂れ流し報道する記者クラブメディアと同じだもの。


もしかしたら「話を聞いただけじゃない」と言うかもしれない。でも、もし資料にあたったと豪語するのなら、それはそれでまた別の問題が明らかになる。だって、データの読み方を知りませんと言っているようなものだから。


この二つの件で僕がもっとも不信感を抱いているのが、「ソースの位置づけが雑」「データの提示方法が杜撰」なだけでなく、そもそもそれが、「当事者のための発信」ではなく「メディア批判のための発信」になっているがゆえに起こったことなのではないか、ということ。例えば以下は、連載の各記事の文末を引用したもの。毎回、お約束のように、必ず政府批判、メディア批判で締められるのだけど、これは「誰」に向けて発信しているのだろう?


【原発崩壊】知られざる原発事故の実態…東北新幹線内で線量跳ね上がる(1)

福島県内では、走行中の新幹線車内ですら、毎時0・5マイクロシーベルトを超え、郡山駅前に降り立てば、空間線量は軽く毎時1マイクロシーベルトを超えてしまう。

だが、こうした実態を知る者はそう多くはない。あるいは気づいていて気づかないふりをしている者も少なくない。

政府の除染支援対象地区は毎時0・23マイクロシーベルトと定められている。県内の多くの場所はその数値を超えている。

私が、福島に通い続ける最大の理由はこれだ。世界でも最もフクシマの真実を知らない福島の人々に、内外との情報格差を埋めてもらい、行動に移してもらいたい。

なにより、真実を知る以外に福島の復興の道もないのである。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120313/dms1203130814001-n1.htm

【原発崩壊】“放射能汚染”の真実…福島、郡山市に人は住めない (2)

事実を伝えなくてはならない記者ですら、こうである。現実を直視する者が奇異な目で見られる−。哀しいかな、それが「福島の現実」なのである。

【原発崩壊】福島第1原発から放射性物質ダダ漏れ!(3)

いまなお、東京電力福島第1原発からは、海洋への放射能汚染が続いている。米国海洋調査会社ASRによれば、その汚染は東北太平洋岸を北上し、すでに北海道南東岸にまで達している。

北海道のタラとサバの缶詰めから、放射能汚染が見つかったのは昨年夏のことである。

しかし、政府もマスコミも、その事実を黙殺したままである。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120315/dms1203150849007-n1.htm

【原発崩壊】“除染”の真実…成功することはない(4)

昨年来、テレビ・新聞では「除染が成功した」というニュースを盛んに流している。高圧洗浄水によって、モモの木の80%以上の除染に成功したと1面に掲載した朝日新聞がそのいい例だ。

だが、その汚染水はどこに行くのか。根元に落ち、土に浸み、場合によっては川に流れ、海に到達する。そして分解されないセシウムなどの各種は環境で循環を始める。

日本、特に福島では、そうした当然の自然の摂理が伝えられていないのである。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120316/dms1203160848005-n1.htm

【原発崩壊】福島の子供たちに忍び寄る被ばくの危険性(5)

空間にある放射性物質は、目に見えず、匂いもせず、即座に人体に影響を及ぼすものでもない。だからこそ、その存在を知ることのできる政府や県が、事実を伝えなければならないのだ。

だが、原発事故から1年たった今もなお、福島の真実は知らされず、一部の県民は騙されたまま普通の生活を続けている。

それは端的に「犯罪行為」である。とりわけ、日本の未来を背負う子供たちへの背信行為といえる。政治家や役人は、歴史に断罪される前に、自ら告白すべきなのではないか。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120318/dms1203180839008-n1.htm

【原発崩壊】小児甲状腺がんの恐怖…隠された現実(6)

週刊文春」(3月1日号)では、おしどりマコ氏が小児甲状腺がんの可能性を指摘している。チェルノブイリの現実を知る者で、その記事を否定できる者はいないだろう。

ところが、日本のパワーエリートたちは、そうした福島の現実に目を背けるばかりか、情報隠蔽に走るほどだ。

子供たちの未来を奪う権利は誰一人持ち合わせない。しかし、あの原発事故ではそうした真実すら犠牲になっているのである。

「福島に幸あれ」

私は、福島の地で心からそれを願うだけである。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120319/dms1203190832000-n1.htm


で、この件はこの件で問題なのだけれど、仮にこのブログエントリを、未来ある、若きジャーナリスト志望者の方々が読んでおられるとしたら、より広い課題として、「丁寧なデータの提示」は(データ取りも、提示手段も)とても大事だよ、ということも学んで欲しく思います。この問題について前に進めるためには、部分的な証言や数値ではなく、丹念な調査とデータがどうしても必要になるから。今のメディアやジャーナリストの「採点」だけで済ませていい話じゃない。


※それにしても、「予防報道()」って、本当に怖い概念だと思うよ。

2012-03-12

またもやワンクリック詐欺の誘導素材になっていた件

昨日、めったに電話がかかってこない叔母からケータイに電話がかかって来まして。


着信を知らせるケータイを手に取り、「あれ、叔母さんからだ。珍しいなー」と思いながら電話にでると、


「チキちゃん!チキちゃんが『朝生』に出たって聞いてな、普段はつかわないんやけど、インターネットで調べてみようと思ったんよ!」


とのこと。テレビの力はすげえなー。


「そんでな、『荻上チキ 朝生』で検索してみたんよ!」


ほうほう。


「そしたらな、変なページを見つけたんよ!」


ん?


そこにな、『朝まで生テレビ 荻上チキ 彼女とのラブラブ映像が流出!!』って書いてあってな!


f:id:seijotcp:20120312110004p:image




おお、たしかにトップに出てくるな。自動生成型のワンクリック詐欺とかかな、また。



f:id:seijotcp:20120312104552p:image


やっぱそうだ。リンク先は…


f:id:seijotcp:20120312103939p:image


はいはい、いつものいつもの。動画風の画像わろすわろす。


第4条(会員登録および入会)

当サイトのトップページのコンテンツをクリックされた後に、最終確認内のはい(ダウンロードページへ進む)をクリック(押す)した時点で利用者の自動的にご入会となります。利用者の情報が登録されIDが発行された時点で本サービスの利用料金が発生し、キャンセルは出来ないものとします。


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偽の利用規約ですら、前回の記事とほぼ同じ。なぜか前回より3万円高いが。


「もー、叔母さんびっくりしたんよ!どういうことなんこれ?」


あのね、叔母さん、これはワンクリック詐欺っていって、ごにょごにょ。


「そうなん…? あー、聞いてよかったわー。で、この写真、チキちゃん? 奥さんおるのに、あかんであんた!




そっちかよ!




f:id:seijotcp:20120312104556p:image




てか、誰だよ!





※みなさんも、ワンクリック詐欺には注意しましょうね! 素材の人からのおねがいだよ!

2012-03-07

だーかーらー

「ちきりん」じゃねえっつってんだろおおおおよおおおおおお!

2012-02-13

[]コラムチキチキ塾で取り上げた本たち2010年7月〜10月

前エントリの続き。ぜんぜんブログ更新しなさすぎワロタ。なんていうか、ブログ更新という習慣が完全に身体から失われていまして。ツイートで大声で手短に叫ぶか、フェイスブックでダラダラとダベるか、更新欲求は両極に流れてしまった。コラムとかは、原稿に書いちゃうからなぁ。ネタは「SPA!」とかでやっちゃうし、政治的な意見はメディアで発言しちゃうし。うーんトラックバックって言葉も、もう懐かしさすら感じてしまうレベル。コメント欄開いてないと閉じてる奴みたいなニュアンス、あの頃あったよね。ブログるって言葉は、さっぱり流行らなかったよね。


それはさておき、「ニュース探求ラジオDig」の水曜パーソナリティ(昨年10月に曜日移動したの)として書評コラムしているわけで、どんな本を紹介したかをまとめていこうと思う。では、2010年7月分から。


【7月1日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-185.html

伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本

伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本


「伝説の教授」浜田宏一先生が、教え子である現日銀総裁・白河方明氏を「叱る」という、今でもタイムリーな一冊。僕が光文社新書の『日本経済復活』の編集をしたこともあり、「姉妹本」のような親近感から紹介。しかし、出版から1年以上経ったけれど、日本経済ちっとも回復しとらんぞ。


【7月8日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-201.html

この日は、オリエント工業の工房を見学しに行った話をしたので、本の紹介はなし。ただ、取材の模様は「週刊SPA!」にて書いていて、さらに次のような本にも書いている。宣伝乙。


セックスメディア30年史欲望の革命児たち (ちくま新書)

セックスメディア30年史欲望の革命児たち (ちくま新書)


自分の本から、従業員の方のコメントを一部引用。


「オリエント工業は1977年に創立しました。うちの社長が当時、浅草と上野でアダルトショップを経営していて、そこによく来る一人のお客さんがいたんです。その方は、空気式のダッチワイフを何度も何度も買いにくる。顔見知りになったので話を伺ってみたら、足の悪い方で風俗に行けないから、人形しか相手にならない。でも人形は、すぐ壊れてしまうので、よく買いにくるんだ、と。その話を聞いた社長が、「じゃあ俺がやるよ」と応じたらしく、ひとつ店をつぶして、製造の方にまわった。当時のダッチワイフは、見た目もよくありませんでしたし、質もよくなかったのですぐ壊れてしまう。なので、見た目も決して悪くはなく、簡単には壊れないダッチワイフを作ったわけです。そしたらそれが割と反響がよかったようで。それをベースに改良していったという経緯がありました。」

『セックスメディア30年史』「第5章 性と快楽のイノベーション 大人のオモチャ篇」より


こうした経緯もあり、オリエント工業は今も、障害者割引とかしています。それからもちろん、ダッチワイフからラブドールまでの歴史をまとめた本としては、


南極1号伝説―ダッチワイフの戦後史 (文春文庫)

南極1号伝説―ダッチワイフの戦後史 (文春文庫)


が有名ですね。僕も勉強させていただいた。未読の方はぜひ。


【7月15日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-217.html


ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇

ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇

ised 情報社会の倫理と設計 設計篇

ised 情報社会の倫理と設計 設計篇


ISEDの議事録が、色々加筆修正されつつ本になったもの。確か発売記念のシンポジウムに登壇して、その絡みで献本していただいたのだと思う。まだまだ通用する議論も多い一方で、あえて古びたところを読み、当時の気分を思い出すのも一興。


【7月22日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-235.html


政治主導はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

政治主導はなぜ失敗するのか? (光文社新書)


ものの見事に「(民主党型)政治主導」は「失敗」したなぁと。「脱官僚依存」の方法論が何もなく、答弁では新米大臣がペーパーと耳打ち頼りに右往左往、総理だけでなく何回も各省大臣が入れ替わるため、結果として国全体の「官僚依存度」はむしろあがっているような。官僚批判のあり方そのものを検証している同書だけれど、官僚が意図的に操舵しているというより(いや、そういうケースもあるのだが)、結果として官僚のプレゼンスが様々な理由であがるというのを、ここ数年でみんなが体感したような。


【7月29日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-251.html


いじめとは何か―教室の問題、社会の問題 (中公新書)

いじめとは何か―教室の問題、社会の問題 (中公新書)


いじめについて真面目に考えるなら、森田洋司、内藤朝雄は外せないので、とにかく読もう。構造問題として捉え、国際比較などを踏まえれば、「日本独特の」とか「若者独特の」なんて俗説は相手にしている暇はないと分かると思う。


社会学的な理論化、ケーススタディに基づいた訴えかけ、それからいじめ対応マニュアルなどは、それなりに議論も溜まってきたように思う。けれど、もっと実践的で実証ベースのもの、発生したいじめへの短期的な対処ともまた違うアプローチの研究は、まだまだ足りないなと痛感する。


具体的には、リスク要因の分析が、もっと進んでほしいなと。それも、単なるソーシャルスキルの問題に還元するのでもない、具体的リスクファクターへの事前注視による、環境最適化や被害最小化のアプローチとか。疫学的な研究が必要になるので、現場と研究の豊かな連携が必須になる。学校の先生とのワークショップとか講演とかやると、そうした取り組みに飢えている先生も多いと感じるんだけど。


【8月5日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/08/post-269.html



コラムで松永和紀さんのこの本を取り上げて、翌週のテーマが「フードファディズム」だったので、


フードファディズム―メディアに惑わされない食生活 (シリーズCura)

フードファディズム―メディアに惑わされない食生活 (シリーズCura)


この本の著者・高橋久仁子さんをお招きした。さらに翌週のテーマは「食料自給率から農業を考える」ということで、


日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)


の浅川芳裕さんをお招きした。3週連続で食関連。様々なバイアスがかかりやすく、非常に政治的なテーマでもある「食」の問題を、丁寧に考えていくためはどれもおすすめ。ちなみに8月26日は、当時注目していた、まだ一巻くらいしか出ていないおもしろマンガを複数紹介。


海月姫(1) (KC KISS)

海月姫(1) (KC KISS)

ファンタジウム(1) (モーニング KC)

ファンタジウム(1) (モーニング KC)

スプライト 1 スプライト (ビッグコミックス)

スプライト 1 スプライト (ビッグコミックス)

バニラスパイダー(1) (講談社コミックス)

バニラスパイダー(1) (講談社コミックス)

超人学園(1) (少年マガジンKC)

超人学園(1) (少年マガジンKC)

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)


どれも継続購読中だ。


そういや雑談なんだけど、某電子書籍リーダーを使い始めてから、本を買う時に少し躊躇することが増えた。全ての本が電子書籍化されるわけではなく、電子化されるものもけっして発売と同時にネットショップに並ぶわけではなく、なかには続刊がなかなか電子化されねえっていうケースもあるってんで、「紙と電子どっちで買おう」じゃなくて、「紙で買いたくないけど電子で買えるのだろうか」で悩むのだ。スペース活用のため、部屋の棚からガンガン本を減らしたいのだが、「この本って結局電子書籍で買えるんだろうかムムム」と悩むのが、本当に面倒でねぇ。お偉いさん、この悩み、早く何とかしてくだせえ。じゃないとこのまま、自炊代行業者をフル活用することになります。


【9月30日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-408.html


流言とデマの社会学 (文春新書)

流言とデマの社会学 (文春新書)


この日は、流言研究の古典的名著を紹介。まだ絶版なので、古本屋で見かけたら速攻で買うといいです。大学院時代、廣井脩先生の授業を履修出来なかったのが本当に悔やまれる。


【10月14日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/dig-30.html



俗流教育論批判経由、教育研究行き、初学者向け。


【10月21日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-456.html


傲慢な援助

傲慢な援助


開発経済学の論争点がとてもよくわかる一冊。大言壮語を吐く、トップダウン式の、それでいて効率的で必要な支援というものを実現させない、「傲慢な援助」につながるばかりのビッグ・プランの問題を、具体的な事例や研究などを豊富に並べて、DisるDisる。だがそれも、「必要な支援」とは何かという議論を、前に進ませるため。「○○は間違いだ」の一言で、全ての議論や意義を否定し、結局は放置容認にしか繋がらないアンチ的言説とは大違いなので、長文だけど丁寧に読まれてほしい。


【10月7日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-422.html

【10月28日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-474.html


ニッポンの海外旅行 若者と観光メディアの50年史 (ちくま新書)

ニッポンの海外旅行 若者と観光メディアの50年史 (ちくま新書)


この2冊は、読みたてで紹介したものの、あまり思い入れはないや。このジャンルに興味ある人は、何冊かめに読むといいんじゃないかな、っていう。


ちなみに、7月から10月の間に紹介した本で、個人的にいちばん良かった本、時間が経っても重要な読書体験として残ってる本は、ダントツで『傲慢な援助』です(というか、他の本がむしろライト路線が続いたのだ)。この手の学術的な本って、あまり一般メディアで紹介しにくくもあるんだけど、でもいいものはいいんで、これからもたまに取り上げていこう。


11月以降はまたいつか書きます。

2011-08-17

[]コラムチキチキ塾で取り上げた本たち2010年4月〜6月

ニュース探求ラジオDig」の木曜パーソナリティとしてラジオでしゃべりはじめて、結構たちまして。その番組内で、7分〜10分ほど、フリーでコラムを喋ることの出来る「チキチキ塾」(※スタッフによる命名)というコーナーがありまして。そのコーナーでは、その日の気分次第で、いろいろなコンテンツを紹介したりしております。


【4月8日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/04/post-10.html

いじめの直し方

いじめの直し方


【4月15日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/04/415-1.html


【4月22日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/04/post-28.html

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)


最初の三回は、自己紹介も兼ねて自分の書籍を宣伝。内藤朝雄氏との『いじめの直し方』は、いじめを内面の問題としてのみ記述することに懐疑を示しつつ、いじめ問題についての考え方を「精神論から仕組み論へ」と変えようという発想をベースに、いじめられっ子が読んで「救い」となるような本として書いた一冊。『経済成長ってなんで必要なんだろう』『日本経済復活』は編集に関わった本。この頃は、まさか飯田泰之と一緒にコンビを組むことになるとは思わなかった。


【4月29日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/04/post-41.html

出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで

出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで


この本は『いじめの直し方』の担当編集と同じ人が編集していて、出版前から話を聞いて「早く読みたい」と思っていた一冊だった。ルポライター、鈴木大介氏の名著。鈴木氏は『SPA!』や『ナックルズ』『宝島』でも、触法少年少女やアウトローの良質なルポをガンガン書いていて、「おお、今回のルポは面白い」と思って名前欄を見てみると、「やっぱり鈴木さんか」となることが本当に多い。この本では、例えば世間の目を気にして生活保護をとらず、売春をして子供の学費や生活費を稼ぐような、シングルマザーたちの生活を描いている。「マボロシの最終章」を「αシノドス」に寄稿していただけたのは嬉しかった。自分と調査対象が重なるため、たまに情報交換をさせていただくが、「踏み込む力」が圧倒的でいつも恐れ入る。


【5月6日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/05/post-53.html

METAL GEAR SOLID PEACE WALKER PSP the Best

METAL GEAR SOLID PEACE WALKER PSP the Best


このときは、当時はまっていたゲームを紹介したわけです。メタルギアシリーズが好きで好きで。ピースウォーカーは、MGS3などに比べても敵に隙が多かったり、巨大な敵が多くて火力戦が多かったりと、割とイージーで、なおかつスルメ要素も少なめかなとも思い、そして「あえて悪として振る舞う」というシニカルな正義の描き方も、MGS3の方が重かったなとも思うのですが、パスやカズといったサブキャラクターが個性的&魅力的で、バナナ装備などの遊び心も多かったので楽しめたのです。ライジング、早く出ないかなー。


【5月22日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/05/post-86.html

科学と神秘のあいだ(双書Zero)

科学と神秘のあいだ(双書Zero)


幸か不幸かニセ科学批判で有名であるkikumaco先生の一冊。奇跡体験を個人的に信じることと、社会的な知識として共有することは、あらゆる面で異なることが丁寧に論じられている。


【6月3日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/06/post-118.html

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)


講談社プラスアルファから、『日本は第○位の〜』シリーズを数冊続けることにもつながった、浅川芳裕さんのベストセラー。カロリーベースでの自給率経産の問題点や、「日本の農業は元気が無い」論への疑問、そしてそれらを唱えることによって「誰が得をするのか」という懐疑など、共感するも反論するも、農業問題を論じる上では避けては通れない一冊。


【6月10日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/06/post-138.html

帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件 (新潮文庫)

帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件 (新潮文庫)


『誘拐逃避行』の文庫版。「誘拐された」はずの少女が「帰りたくない」と言った。ある「誘拐事件」の背景には、単に「被害者の少女/加害者の大人」といった言葉では割り切れない複雑な情念があった。


【6月17日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/06/post-155.html

ザ・コーヴ [DVD]

ザ・コーヴ [DVD]


なんか撮り方が「川口浩探検隊シリーズ」みたいで、地元の漁師の撮られ方が未開の部族のような描き方で、撮影側の持っている対立構図があからさまなのって「ドキュメンタリー」としては微妙じゃないかな、という話をしたように思う。


【6月23日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/06/post-170.html

累犯障害者 (新潮文庫)

累犯障害者 (新潮文庫)


服役経験を持つ著者が、犯罪を重ねる障害者触法障害者、「累犯障害者」たちを描くルポ。刑務所に戻りたいからと放火を続ける者。知的障害にかこつけられ、冤罪を押しきせられる者。「現実を描写し、社会問題化する」ことがルポルタージュの役割であるなら、少なくとも前半については鋭いメスを光らせている名著(後半についてはこれからだ)。3、4章で描かれているような知的障害or精神障害を抱えている売春女性は、僕も頻繁に取材中に遭遇する。問題は、実はそうした裏付けデータや証言は既にたくさんあるのだが、誰もそれをあえては語らなかったこと。語り口や視点如何によって、対象と言説の距離は様々に変わる。

2011-08-16

下記エントリを削除しました

震災から5ヶ月。エントリの機能も薄れたとおもいますので、「未来日記」にしてトップに常に表示にしていた、下記エントリを削除、というか下記に引用することで引越し。


震災に関するデマにご注意ください

現在、東日本大震災から生じた情報不足や不安などにより、多くのデマやチェーンメールが飛び交っています。当ブログではそうした現在、そうした流言をひとつひとつ検証するエントリーを書いております。適宜更新しておりますので、何かの参考にしていただければ幸いです。


東北地方太平洋沖地震、ネット上でのデマまとめ

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110312/p1


東北地方太平洋沖地震(東日本巨大地震)、ネット上でのデマまとめ その2

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110314/p1


東北地方太平洋沖地震(東日本巨大地震)、ネット上でのデマまとめ その3

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110316/p2


東北地方太平洋沖地震(東日本巨大地震)、ネット上でのデマまとめ その4

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110319/p1


東北地方太平洋沖地震(東日本巨大地震)、ネット上でのデマまとめ その5

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110323/p1


東北地方太平洋沖地震(東日本巨大地震)、ネット上でのデマまとめ その6

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110404/p1


チェーンメールやツイッターなどでの拡散には、「とめる・しらべる・ちゅういする」を心がけるのがいいと思います。


※本来は「デマ」や「流言」は区別されるものですが、一般には両者を一緒に認識する人も多いことから、タイトルなどでは分かりやすく「デマ」としておきます。


旧ブクマ。

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/seijotcp/22220316/p1

2011-05-28

いつのまにかワンクリック詐欺の誘導素材になっていた件

まさか、自分がエロ(を装った詐欺)サイトへの誘導リンクに使われる日がくるとは思わなんだ、というお話。


というのも、こんなサイトがありまして。



f:id:seijotcp:20110528231542p:image






f:id:seijotcp:20110528232005p:image:w640





「荻上チキ 裏では女遊び」


「その彼が、裏では凄いことをしているらしい…」


「女食いまくり、遊びまくりの裏事情」





裏ってどこだよ!


その世界への行き方をぜひ教えてくれ!




で、動画の欄をクリックすると、もちろん、



f:id:seijotcp:20110528232006p:image




おなじみ、アダルトサイトを装ったワンクリック詐欺サイトにつながるわけでごんす。サイト下部には次のような文章も(一部掲載)。




第4条(会員登録および入会)

当サイトのトップページのコンテンツをクリックされた後に、最終確認内のはい(ダウンロードページへ進む)をクリック(押す)した時点で利用者の自動的にご入会となります。利用者の情報が登録されIDが発行された時点で本サービスの利用料金が発生し、キャンセルは出来ないものとします。

第13条(料金)

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料金及び支払い方法、支払い期日は下記案内の通りです。(…)

料金は、定額制で120,000円です。(…)

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はいはいわろすわろす




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お ま え が 言 う な 。



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でも、こんな本をだしたのは事実。宣伝でしたサーセン。