『孔子』に王菲

劉嘉蒅「王菲以《孔子》主題歌重出江湖」『東方早報』2010年1月4日


周潤發、周迅主演の映画『孔子』の中国での公開は今月末だが、その主題歌を王菲*1が歌うことが公表された。昨年大晦日に録音が終わったという。歌詞は唐の詩人、韓愈の「幽蘭操」を改編したもの;


蘭之猗猗、揚揚其香。
衆香拱之、幽幽其芳。
不採而佩、於蘭何傷?
以日以年、我行四方。
文王夢熊、渭水泱泱。
採而佩之、奕奕清芳。
雪霜茂茂、蕾蕾於冬、
君子之守、子孫之昌。
映画『孔子』は以前、孔子を張藝謀が演ずるのではないかという噂があった*2

Younghill Kang(メモ)

裴偉「最早批評《大地》的朝鮮文人」『書城』2010年1月号、pp.109-111


パール・バックの『大地(The Good Earth)』は1931年3月に出版された。それに対して、Younghill Kangという人がThe New Republicの1931年7月1日号に批判的な書評を執筆している。長らく、Younghill Kangは中国系であると信じられ、「康永煕」という漢字が宛てられていた。Younghill Kang(「康永煕」)が中国人ではなく朝鮮系であることを明らかにしたのは河南の郝素玲。裴氏は郝素玲の


「康永煕與賽珍珠研究」『河南師範大学学報』1998年5期
「康永煕是中国人嗎?」『国外文学』1999年2期


という2つのテクストを挙げている(p.110)*1。しかし、郝素玲の研究ではYounghill Kangの来歴も詳しくなく、「康永煕」という漢字表記の根拠も明らかではなかったという。裴氏が「大韓民国駐台湾地区代表部」に問い合わせたところ、2008年5月に書面でYounghill Kangの漢字表記が「姜?訖」であるという回答を得たという(ibid.)。以下、裴偉氏が調べた姜?訖(Younghill Kang)の略伝をメモする;


姜?訖(1898.5.10−1972.12.2)、生於朝鮮咸鏡道、與中国吉林延辺一江之隔。姜?訖幼年先受儒学教育、後入美国伝教士辦的教会学校読書、一九二一年他離開祖国、先到加拿大、後移民美国、除自己広泛閲読英美経典外、辺打工辺在波士頓*2和哈佛*3大学学習並獲学士学位、一九二四到一九二七年間他用韓語和日語創作、他出版的第一部書是《東方詩篇訳本》(1921)。一九二八年開始在其美国妻子弗朗西絲・基利(Frances Keeley)幇助下用英語写作。曽任《大不列顚百科全書》*4編輯和紐約大学英文系講師、在紐約大学結識了同事、作家湯姆斯・沃爾夫(Thomas Wolfe)。伍爾夫*5看了他正在創作的《茅草屋頂》(The Grass Roof、韓国訳為《草堂》)前四章、在沃爾夫推薦下、此小説(描写一個朝鮮青年在祖国的生活和他的離朝赴美)得以在一九三一年出版。伍爾夫評介他:“天才作家、自由自在、精力充沛、熱愛生活、極具詩人天賦。”一九三一到一九三五年、姜?訖受古根海姆*6文学創作基金資助到了徳国和意大利、併於一九三七年出版了《従東到西》*7、講述一個朝鮮人在美生活。他曽任美国政府亜洲顧問、紐約都市博物館館長、但未獲得過甚麽永久職位、常四処演講、講他的祖国。他擁有衆多読者、也獲得過数項不太重要的文学奨和東京大学栄誉博士学位、有両子一女。拠説他曽説自己運気太糟、他的叙述亜洲的書出版時、剛好遭遇了賽珍珠的《大地》。一九七二年因術後大出血逝世於紐約一家医院。(pp.110-111)
以上、例えば川瀬さん*8のような、朝鮮文化に詳しい方にとっては自明な事柄かも知れないが、私にとっては初耳だったので、取り敢えずメモしておいた。
パール・バックについては、Jonathan Spence The Chan’s Great Continent: China in Western Minds*9の第9章” An American Exotic?”も参照のこと。
The Chan's Great Continent: China in Western Minds (Allen Lane History S.)

The Chan's Great Continent: China in Western Minds (Allen Lane History S.)

*1:「賽珍珠」はPearl Buckの中国名。

*2:Boston

*3:Harvard

*4:Encyclopedia Britanica

*5:Wolfe/Wolfは中国語にて、「沃爾夫」とも「伍爾夫」とも表記される。

*6:Guggenheim

*7:East Goes West

*8:http://d.hatena.ne.jp/t-kawase/

*9:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090801/1249104935

「ランティ」と「カンターレ」

エル・カンターレの最大の黒歴史「エル・ランティ」とは」http://tiyu.to/permalink.cgi?file=news/09_12_29
「「幸福の科学」と「GLA」の教義には共通点が多い」http://tiyu.to/permalink.cgi?file=news/09_12_29_omake


これは100回の拍手と投げキスに相当する労作。
以前私が「幸福の科学は或る時期以降、高橋信次霊言集とかを絶版にするなど、GLAの痕跡を隠蔽する操作を行っている」とちらっと書いたあたりのこと*1を文献学的に裏付けている。やはり1994年というのが転機だったのか。1994年は幸福の科学の元ライヴァルであったオウム真理教にとっても(違った意味で)転機ではあったが*2
なお、既に実家の物置の奥深くにしまってしまった、米本和広『大川隆法の霊言』の書影を久方ぶりに見て、超懐かしい。

大川隆法の霊言―神理百問百答

大川隆法の霊言―神理百問百答

森先輩!

『毎日』の記事;


買春容疑:高校生に現金渡す約束 早大4年を逮捕
2010年1月6日 13時4分

 現金を渡す約束をして女子高校生にみだらな行為をしたとして、神奈川県警は6日、東京都東村山市久米川町4、早稲田大法学部4年、ロロロ△△*1容疑者(25)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕した。

 逮捕容疑は09年7月11日、携帯電話の掲示板サイトを通じて知り合った埼玉県秩父市に住む県立高2年の女子生徒(当時16歳)に2万円を渡す約束をし、同市内のカラオケ店内でみだらな行為をしたとしている。

 県警によると、長谷川容疑者は「性行為はしたが、金の約束をしたか定かではない」と供述している。金は支払われなかった。女子生徒は「勉強を教えてもらった」とも話しているという。【池田知広】
http://mainichi.jp/select/today/news/20100106k0000e040067000c.html

早稲田と言えば、(『噂の真相』によれば)シンキローaka森喜朗先輩も在学中に「買春容疑」で逮捕された経験がある筈。勿論、森先輩の場合は寛大に処置され、実名で報道されるなんてこともなかった。その結果、accidentalであるとはいえ、内閣総理大臣まで上り詰めた。逸脱行動に対する最初の処遇(初期条件)がその後のライフ・キャリアに多大な影響を及ぼすという犯罪社会学(レイベリング理論)的なテーゼを思い出す。

*1:要請により伏字化しました。

苫米地!

http://d.hatena.ne.jp/enjokosai/20100104/p1


苫米地英人への突っ込み。世間の動きに疎くて、彼が「三週間に一冊のペースで書籍を刊行し、そのどれもが数万部のヒットを飛ばしているという売れっ子作家」だということは知らなかった。
「苫米地」というのはたしか東北の一部にしかない珍しい苗字で、同じ苗字の社会学者に酒の席であの苫米地英人の親戚ですかと訊いてしまったことがある。たしか遠い親戚だということだったが、彼にとってこれは初対面の者の定番的な質問であったようだ。
ところで、苫米地英人を弁護するわけではないが、科学者が非科学者に科学を売り込む場合、何らかの〈現世利益〉を込みにしなければならないことが多いといえるだろう。国民に成果が見えづらいとかいう「事業仕分け*1的なマンタリテに表れているように、非科学者というのは科学に内在して科学を評価することができない人間の謂だからだ。勿論、日常生活において非科学者が科学的に思考する義理も必要もないのだが。言いたいのは、〈現世利益〉を込みにしたトンデモに釣られることの責任の一端はそのような非科学者側の科学に〈現世利益〉を求める心性にもあるということだ。

Ethnomethodology


黄盈盈『身体・性・性感 対中国城市年軽女性的日常生活研究』*1に、「常人方法学」という言葉が出てくる(p.304、309)。また、「加芬克爾」(p.309)はHarold Garfinkel? ここで著者が依拠しているのは、


李猛「常人方法学40年:1954−1994」『国外社会学』1997年2〜5期


というテクスト。中国大陸における最初のエスノメソドロジーの学史的サーヴェイ?