石川淳『文林通言』

石川淳『文林通言』*1を読了したのは今週初め。
この本は石川淳が1969年12月から1971年11月までの2年間『朝日新聞』で担当した「文藝時評」を纏めたもの*2。タイトルはそっけなく年月のみ;


昭和四十四年十二月
昭和四十五年一月
         二月
         三月
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         九月
         十月  
         十一月
         十二月
昭和四十六年一月  
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         九月
         十月  
         十一月


人名索引

石川淳が『朝日』に「文藝時評」を書いている間には、三島由紀夫切腹という文学的・政治的事件が起こっている。その事件のみならず、三島に対する石川淳のリアクションはとても印象に残った。これに関しては、別途言及する(予定)。
ここで採り上げられているのは所謂狭い意味での〈文学〉のみならず、論壇的な文章、さらには政治文書(scritti politti)も含む。
例えば、


森有正「雑木林の中の反省」
宮崎市定論語の新しい読み方』
稲垣足穂「宇治桃山はわたしの里」
朝日ジャーナル』1969年12月28日号、特集「セックス解放の現段階」
『海』1970年2月号、特集「エロスの形而上学
金井美恵子「奇妙な花嫁」/「夢の時間」
『週刊アンポ』
小田実「羽ねなければ」
清岡卓行アカシヤの大連」/「千年も遅く」
富士川英郎『菅茶山と頼山陽
大江健三郎『壊れものとしての人間』
三島由紀夫文学論集』
堀田善衛『橋上幻像』
島尾敏雄那覇に感ず」
吉田健一『ヨオロッパの世紀末』
中野好夫「日米共同声明と『沖縄返還』」
西脇順三郎『鹿門』
水上勉宇野浩二伝』
鈴木信太郎『虚の焦点』
埴谷雄高『闇のなかの黒い馬』
神田喜一郎敦煌学五十年』
木村孝「堀川あたりの茶染師」(『學燈』1970年6月号)
中村幸彦神道系講談」(『文学』1970年10月号)
吉行淳之介『暗室』
今西錦司、藤沢令夫「自然・文明・学問」(『中央公論』1970年12月号)
森銑三著作集』第1巻
古井由吉「杳子」/「妻隠
朝日ジャーナル』1971年2月19日号、特集「私にとっての国家」
吉田健一「絵空ごと」
林達夫『政治のフォークロア
野間宏『青年の環』
野間宏歎異抄
福原麟太郎吉川幸次郎『二都詩問』
武田泰淳『富士』
中村真一郎頼山陽とその時代』
河上徹太郎『文学手帖』
澁澤龍彦『黄金時代』
大江健三郎「みずから我が涙をぬぐいたまう日」
幸田文「木」
大岡昇平『レイテ戦記』
西郷信綱「黄泉の国と根の国
安部公房『周辺飛行』/「内なる辺境」 

杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)

杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)

富士 (中公文庫)

富士 (中公文庫)

みずから我が涙をぬぐいたまう日 (講談社文芸文庫)

みずから我が涙をぬぐいたまう日 (講談社文芸文庫)

内なる辺境 (中公文庫)

内なる辺境 (中公文庫)

*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140712/1405181193

*2:本書は正字正仮名で表記されているが、新聞掲載時は新字新仮名であった筈。