「満期退学」問題

「日銀審議委員の修論はペラ4枚で「こんなの見たことない…」」http://www.news-postseven.com/archives/20160510_410037.html
野尻民夫*1「安倍官邸が送り込んだ日本銀行審議委員に「ショーンK氏」並みの経歴詐称と「小保方氏」ばりの杜撰論文が発覚」http://lite-ra.com/2016/05/post-2230.html
http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_sakurai.htm/


博士課程「修了」と博士課程「満期退学」は違うというのは勿論正しい。だから、騒ぎになってしまった以上、日本銀行と櫻井眞氏*2は釈明会見をやって、頭を下げるというパフォーマンスくらいはやらざるを得ないだろう。しかし、アカデミズムとは関係ない堅気の日本人がどれだけ「修了」と「満期退学」の差異を気にしていることやら。大学院には「修了」はあるけれど卒業というのはないにも拘らず、大学院卒業という表現は流通しているわけだ。この無関心というのは低学歴層だけでなく、高学歴の人が多いメディア関係にも多いらしい。博士課程「満期退学」なのに、編集者によって「修了」したことに何時の間にか、なっていたという学者は少なくない。そこで、強硬に訂正させる人もいれば、まあいいやと、ほっぽっておく人がいるわけだけど。なので、これはそれほど重要な問題だとは思わない。勿論、悪いことなのだが、「「ショーンK氏」*3並み」という形容はどうなのかな。櫻井氏が東大の大学院に通っていたという事実は今のところ揺らいでいないわけでしょ。
それよりも、櫻井氏の修士論文が(多分表紙よりもぺらい)原稿用紙4枚(目次込み)という方が問題だろう。小黒一正氏は「東大がこんな論文で修士号を与えたこと自体、不思議でなりません」とコメントしているのだが、中身を読む以前に、原稿用紙4枚(目次込み)でまともな学術論文が出来上がる筈はないということはほぼ自明だろう。原稿用紙4枚って、印刷物だったら約1頁だよ。「修士論文」じゃなくて修士コラムと銘打つならともかく。
さて、学位問題に話を戻す。『ジャパン・タイムズ』に掲載されたBloombergの記事によれば、1991年に上梓された、櫻井氏が分担執筆をした本の英訳本の著者紹介には、櫻井氏が実際に博士号を「授与された(received)」という記述があったという。オリジナルの日本語版では博士課程「修了」*4。ここまであからさまに言っているなら、学歴詐称と取られても仕方はないだろう。
それから、


池田信夫*5「櫻井眞氏の「博士課程修了」は経歴詐称か」http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51976868.html


1970年代前半の東京大学大学院経済学研究科のカオスな状況は思想史的或いは教育社会学的に興味深いが、櫻井氏が修士号を持っていないという主張の信憑性は薄いような気がした。『習慣ポスト』の事実誤認を証明しなければならないし、そもそも学位論文でもないたんなるレポートや個人的覚書を学部図書館が所蔵しているというのはちょっと考えられない。

*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150124/1422106484

*2:See eg. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AB%BB%E4%BA%95%E7%9C%9E

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160318/1458227297 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160320/1458409984 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160321/1458526665 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160324/1458795081 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160326/1458965055 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160331/1459443800 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160410/1460305771 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160418/1460956071

*4:“BOJ board member Sakurai’s Ph.D. credentials questioned” http://www.japantimes.co.jp/news/2016/05/09/business/boj-board-member-sakurais-ph-d-credentials-questioned/

*5:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070128/1169989586 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090108/1231386781 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090223/1235362566 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090619/1245441165 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091126/1259201785 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091217/1261049929 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091218/1261105482 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100612/1276361557 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100621/1277100760 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101120/1290272803 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101230/1293715439 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110212/1297527735 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110214/1297700026 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110331/1301545326 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110525/1306294866 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110619/1308481084 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110626/1309107227 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110717/1310898599 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120505/1336185843 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120528/1338230225 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120530/1338343629 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130423/1366683831 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130528/1369714773 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131116/1384584256 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131122/1385081575 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140801/1406828086 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140819/1408461044 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140930/1412049585 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150307/1425718006

薔薇水!

承前*1

『ナリナリドットコム』の記事;


プリンスの息子名乗る男性現る、隠し子と証明なら遺産の一部相続も。

2016/05/07 05:26 Written by Narinari.com編集部



プリンスの隠し子と名乗る男性が、その事実を証明する法的手続きを開始した。

30代のこの男性は、アメリカを拠点とした法的サービス会社のエア・ハンターズ・インターナショナルにプリンスの息子であることを証明する助けを求めたという。母親の存在についてもまだ明かされていないものの、もし80年代にプリンスと関係を持っていたことを証明することが出来れば、遺書を残さなかったプリンスの遺産の一部をこの男性が受ける可能性も出てくる。

この男性が真実を語っている可能性が高いとするエア・ハンターズ・インターナショナル社のジョン・ヒルバート氏は、「我々には標準プロトコルがあります。認証された出生証明書のコピーが必要ですし、なぜプリンスと血縁関係があると思うかについての詳細も必要です。それにプリンスや彼の母親がどこにいたかということにもつながります。我々が目にしたものすべては、今まで見たものと全く違うものばかりです。彼は15分間の名声を求めているわけではありません。全くのでまかせというわけではなく、信ぴょう性がかなり出てきたのです。彼はとても良い人間で、クレイジーな人ではありません。名声を求めているような人物では全くないのです」と説明している。

この身元不明の男性の父親がプリンスであるかが判明するまでには、90日から120日間を要すとみられている。

4月21日に他界したプリンスの総額3億ドル(約322億円)と言われる遺産についてはいまだに宙に浮いた状態になっており、ミネソタ州の法律においては、プリンスに子供がいないと証明された場合、生存している最も近い親類である妹のタイカ・ネルソンが全額を相続することになる*2

また、死後にレコードやグッズのセールスが飛躍的に伸びていることから今後もさらに収益が見込まれている上に、プリンスのマネージャーであるオーウェン・ハスニー氏によれば、プリンスの楽曲は他のアーティストと異なり、プリンス自身がマスター音源と音楽出版権を所有していたことから、5億ドル(約556億円)以上の価値があるという。さらにプリンスは多大な未発表曲も残している。
http://www.narinari.com/Nd/20160537482.html

実は1人ではないらしい。
『日刊スポーツ』の記事;

〈速報〉プリンスさん千億遺産狙って親族?700人名乗り

2016年5月10日



 先月21日に急死した米歌手プリンスさんの10億ドル(約1100億円)とも言われる莫大(ばくだい)な遺産を巡り、700人もの人々が相続する権利があると名乗り出ていると報じられた。

 57歳と言う若さで急逝したプリンスさんは独身で子供もなく、すでに両親も他界。遺書を残していなかったと言われている。血縁関係を調査する団体には、プリンスさんと血縁関係があると名乗る人物からの電話が殺到しており、電話が鳴りやまない状態だと米メディアは伝えている。

 同社によると、家族の写真にプリンスも一緒に写っているとか同じ地区に暮らしていたから親族関係だと言うものまで、700人近くの人から電話があったという。その中にはプリンスさんの子供だと名乗る30代の男性もおり、調査中だと米芸能情報サイト、レーダーオンラインが伝えている。

 ミネソタ州にある自宅兼スタジオなどの不動産を含む資産は3億ドルと言われる他、未公開の音源も多数保管しており今後それらがリリースされれば多額の収益も見込まれている。また、プリンスさんのマネジャーによれば、プリンスさんは自らマスター音源と音楽出版権も所有していたことから、それだけでも5億ドル以上の価値があるとも言われている。

 これらの遺産すべては、唯一の生存する直系の家族である妹タイカ・ネルソンさんが相続する可能性が高いと言われていたが、他にも5人の異父母兄弟もいることが分かっており、遺産を巡る骨肉の争いに発展する可能性もありそうだ。(ロサンゼルス=千歳香奈子)
http://www.asahi.com/and_M/interest/entertainment/Cfettp01605100065.html

こうなると、カート・ヴォネガット『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』*3状態だね。
「ローズウォーター」といえば、「バラが咲いた/バラが咲いた/真っ赤なバラが」のマイク真木の息子が逮捕されたという。
朝日新聞』の記事;

俳優の真木蔵人容疑者を逮捕 女性にけがさせた疑い

2016年5月10日23時59分


 女性に暴行をしてけがを負わせたとして、千葉県警いすみ署が俳優の真木蔵人容疑者(43)を傷害容疑で逮捕していたことが10日、分かった。捜査関係者によると、真木容疑者は今月上旬、同県いすみ市の住宅で、交際をめぐるトラブルから女性に暴行し、けがをさせた疑いがあるという。

 真木容疑者は歌手のマイク真木さんの長男で、サーファーとしても活動している。
http://www.asahi.com/articles/ASJ5B7RJ1J5BUDCB00S.html

最後の「 サーファーとしても活動している」だが、これについては早速「日本プロサーフィン連盟」*4が「公認プロサーファーではございません」、「真木氏のプライベートなサーフィン活動と当連盟とは一切関係ございません」と述べている*5。ただ、サーフィンの団体としては、JPSAのほかにASP JAPANがあるのだった*6

『なずな』など

近所のブックオフで本を3冊。

平田俊子『ピアノ・サンド』講談社文庫、2006

ピアノ・サンド (講談社文庫)

ピアノ・サンド (講談社文庫)

堀江敏幸『なずな』集英社文庫、2014
なずな (集英社文庫)

なずな (集英社文庫)

Michael J. Sandel『これから「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』*1(鬼澤忍訳)早川書房、2010
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

津田沼昭和堂で買った本。

倉田徹、張紣暋『香港 中国と向き合う自由都市岩波新書、2015

香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)

香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)

柄谷行人憲法の無意識』岩波新書、2016
憲法の無意識 (岩波新書)

憲法の無意識 (岩波新書)

円城塔『道化師の蝶』講談社文庫、2015
道化師の蝶 (講談社文庫)

道化師の蝶 (講談社文庫)

本谷有希子『ぬるい毒』新潮文庫、2014
ぬるい毒 (新潮文庫)

ぬるい毒 (新潮文庫)

Julien Gracq『アルゴールの城にて』(安藤元雄訳)岩波文庫、2014

「七転八倒」して

朝日新聞』の記事;


永六輔さんのラジオ番組終了へ 「体力回復めどつかず」

2016年5月10日00時21分

 TBSラジオは9日、放送作家でタレントの永六輔さん(83)がパーソナリティーを務める「六輔七転八倒九十分」が、6月27日の放送で終了すると発表した。永さんの冠番組は1967年から、同局で続いていた。

 永さんは背中の手術を受けた後、2月下旬から番組を休み、同局は永さんと親交のあるゲストらを迎えて番組を続けていた。局によると、永さんの事務所から「体力回復にどれくらい時間がかかるかめどがついておりません。ここは一端、自分の名前が付いた番組については締めくくりさせて頂きます」との手紙が届いたという。
http://www.asahi.com/articles/ASJ597GS3J59UCLV015.html

そういえば、永六輔さん*1はかつての所謂〈中年御三家〉唯一の生き残りなのだった。永さんが〈中年御三家〉を名乗っていた時代、私は少年だった。  

なくなっていた「交通博物館」

息子を「鉄道博物館」に連れて行こうとしたのだった。鉄道博物館って、秋葉原万世橋*1のところにあったよねと思い、ネット検索してみたけれど、 二重の思違いをしていたことに気づかされてしまった。「交通博物館*2を「鉄道博物館」だと思っていたこと。その「交通博物館」は2006年に閉館しており、「鉄道博物館*3は「交通博物館」閉館後に埼玉県大宮にオープンしたものであること。要するに、秋葉原には鉄道関係の博物館は既にない。それで、大宮はちょっと遠すぎるよねと思い、代わりに地下鉄東西線葛西駅のガード下にある「地下鉄博物館」*4に行った。コンパクトな博物館。地下鉄運転のシュミレーション体験もできて、なかなか楽しい。平日の午後ということで、幼児を連れてきた人のほかに、デート中のカップルも少し目立った。こういうところでデートするカップルってどういうふうな人たちなのかしら? ということは興味津々。