【文徒】2014年(平成26)12月3日(第2巻227号・通巻429号)

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1)【記事】雑誌の未来を明るくするために
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌の未来を明るくするために

客 雑誌は厳しいね。消費税アップもあって、市場の縮小が止まらない。
主 書籍だって厳しいだろうよ。でも、前から言っているけれど縮小しているのは紙のマーケットなのであって、デジタル・パブリッシングの数字を加えれば出版は成長産業だと言えるわけだよ。オレがデジタル・パブリッシングという時は、何も電子書籍だけを指していないからね。投稿サイトだって、クックパドだって、最近、話題となっているニュースアプリだって、オレに言わせりゃデジタル・パブリッシングだし、出版だという認識さ。
客 そういう認識から雑誌ビジネスの再構築を図れるはずだと君は考えているんだよね。スマホを占拠せよ!という言い方もしている。
主 電車に乗っていれば分かるでしょ。みんなスマホに首ったけなんだから、ここに橋頭堡を築かずして、雑誌の未来は考えられないと思っているわけ。紙か、デジタルかというカタチで両者を対立させていちゃ駄目なんだよ。そうではなくて紙とデジタルとリアルを自在に行き来できるビジネスを確立する必要があると主張しているわけさ。
客 本当は時間との勝負なんだよね。
主 デジタルを一方の柱とすれば、何も月刊に拘る必要はないんだしね。紙の雑誌は家でじっくり読むというメディアとして位置づければ、隔月刊や季刊であっても問題はないと思う。発想を根本的な部分で変えるんだ。同時にマンガなんかがデジタル領域で実践しているように読者との垣根をもっともっと低くして、読者も参加できる余地を増やす必要もあるだろう。つまり、プラットフォームのようなメディアを志向するということさ。ツィッターフェイスブックを通じての情報発信も重要だ。
客 フォロワー数とか、いいねの数とか、リツイートの数を毎月、雑協なり何なりが発表するようにすれば、ABC部数と並んで、媒体価値を現す重要なデータにもなる。
主 読者データも結構だけれど、時代は急速に変わっているわけよ。時代がこのまま足踏みをするということは絶対にないからね。コンテンツにかかわっているから安心だという馬鹿な楽観主義は捨て去ったほうが良いとさえ、オレは思っている。そりゃあコンテンツは重要だけれど、書籍というコンテンツだけでは儲からないから、紙の雑誌を出していったんじゃなかったっけ。ある意味、雑誌ってプラットフォームビジネスだったんだよ。少なくともコンテンツ流通ということをリアル、デジタルを問わず考えていかないと、駄目だと思うんだよなあ。

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2)【記事】【本日の一行情報】

◎細川亜衣の新作レシピ集「スープ」(リトルモアブックス)。細川護煕の息子の嫁が細川亜衣である。細川護煕が「スープ」の書評を産経新聞でしている。
http://www.sankei.com/life/news/141130/lif1411300022-n1.html

集英社の漫画アプリ「少年ジャンプ+」とアニメ専門チャンネルANIMAX」が「アニメシナリオ大賞」を新設した。大賞受賞者には賞金200万円を贈呈のほか、大賞受賞作品を「少年ジャンプ+」でコミック化し、さらにアニマックスでアニメ化するという。
http://anime-scenario.com/

講談社の「なかよし」が創刊60周年。マンガ誌で創刊60周年に至ったのは「なかよし」が初めてのことだったのか。
http://www.oricon.co.jp/news/2045258/full/

◎「ブラック資本主義」とは、とても良い言い方だ。
http://togetter.com/li/751897

◎日販が「2014年 年間ベストセラー」を発表。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2014/11/annual_20141128.pdf
私からすれば本当に別世界のランキングである。昔はベスト10のうち1〜2冊は読んでいたが、今やゼロ。この顔ぶれを見ていると永遠の0になりそうだ。別に本が嫌いなわけじゃないんだけど…。

トーハンは、出版社12社と連動し、「文庫女子」フェアを全国約620書店で展開している。KADOKAWA幻冬舎、光文社、講談社集英社小学館祥伝社、新潮社、双葉社筑摩書房徳間書店文藝春秋の12社。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/121/
河出書房新社中央公論新社、宝島社は不参加。

宣伝会議が発表した「2014年人気広告ランキング」。
1位 サントリーホールディングス ペプシNEX ZERO 桃太郎「Episode.ZERO」篇ほか(テレビCM)
2位 味の素 和風調味料群「和食は、和色で、できている。」(新聞広告、雑誌広告)
3位 東日本旅客鉄道 「行くぜ、東北。」(新聞広告)
4位 全国都道府県及び20指定都市 LOTO7「話は変わる」篇ほか(テレビCM)
5位 グーグル Nexus 7「Dance with Students」(テレビCM)
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000002888.html

◎大胆にして繊細、異端にして正統…とんでもない傑作を手にしてしまったようである。昨晩は一睡もしていない。こうした経験は年に何度もあるものではない。安藤礼二の「折口信夫」(講談社)だ。「批評」の力業によって折口と教派神道とのかかわりが論じられ、大本教出口王仁三郎と交錯し、乞食、天皇、神の相互関係が明らかにされる。「批評」とは解釈にとどまらない「知」の革命的な実践にほかならないことが、安藤礼二によって証明された!
http://www2.tamabi.ac.jp/iaa/origuchi_nobuo/
講談社の全社員が読むべき一冊である。読まなくても「枕」にはなるから買うべし。いずれにしても、この大著を3700円で刊行できるところが講談社の凄みであることも付記しておこう。筑摩書房あたりであれば5000円を切ることは、まずあり得まい。

◎この北村一輝のCMが良いね。北村は何をやってもイッちゃっている。
http://www.rbbtoday.com/article/2014/12/01/126000.html

タワーレコードの広告「NO MUSIC, NO LIFE!」に「はっぴいえんど」が登場。
http://news.dwango.jp/index.php?itemid=13878

◎スマートニュースは新たに広告ネットワーク事業をスタートさせる。無償で非営利団体が出稿できるプログラムも開始するそうだ。
「スマートニュースが今回、始めたのは、動画広告を配信する『SmartNews Premium Movie Ads』と、ネイティブ広告を扱う『SmartNews Standard Ads』の2種類。どちらも『SmartNews』のアプリ上で表示される」
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20141201_678389.html
更にスマートニュースはミクシィとともに共同開発を進めてきたネイティブ広告ネットワーク「SmartNews Ad Network」と、ユーザベースがNewsPicks向けに開発しているアドネットワークシステムを統合し、広告分野で協業する方針だそうだ。
http://japan.cnet.com/news/business/35057259/

◎スタートトゥデイが運営する通販サイト「ゾゾタウン」は、ファッション誌など雑誌の販売を始めたが、担当の泉川浩平は、通販新聞で次のように語っている。
「今回、そもそも雑誌を単品買いしてほしいという考え方ではなくて、『お洋服と一緒に雑誌もいかがでしょう』という提案が主体となる。お客様が洋服を購入しようとしている時に、カートページで過去の購買履歴などに基づき相性が良いであろう最新の雑誌を訴求する。“レジ横のガム”のようなイメージだ」
https://netshop.impress.co.jp/node/951

セブン&アイのグループ会社・セブンネットショッピングが入る麹町(東京)のビルで同社の若手社員の飛び降り自殺があったそうだが、どの週刊誌も記事にできなかったそうだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/9526064/
でも、こうしてネットでは記事になってしまう時代だ。私がこの「リテラ」にアップされた記事で最も興味を惹かれたのは、「元社員」による次のような発言である。
「鈴木ジュニアは会議を開きたがるが、そこでは富士通時代や孫正義ソフトバンク社長の自慢話ばかり。社員には新規事業を考えよといいながら自分は『勉強会』と称して秋元康と会って大風呂敷を広げているだけです」
鈴木ジュニアというのは、セブン&アイグループを率いる鈴木敏文の次男にして、セブンネットショッピング代表取締役である鈴木康弘のことである。

技術評論社は大人気シリーズ「WEB+DB PRESS plus」を電子化し一斉配信する。
http://gihyo.jp/news/nr/2014/12/0101

KADOKAWA の月刊成人向けゲーム情報&漫画誌「電撃HIME」が、12月27日発売の2015年2月号で休刊することになった。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1412/01/news076.html

◎今年のノーベル賞村上春樹ではなく、フランスのパトリック・モディアノであった。新聞報道などでモディアノがナチス占領下の社会を描いているということを知り、ルイ・マルの映画「ルシアンの青春」の脚本家と同名であることを思い出すといった程度の反応しかできなかったが、その後、日本でもそれなりの点数が翻訳出版されていることを知った次第である。
そんなモディアノの作家としての全容に迫っているのが、国書刊行会から今月に緊急出版される松崎之貞の「モディアノ中毒」である。松崎之貞?そう、あの松崎さんである。徳間書店で編集局長をつとめていた松崎さんである。徳間書店を退職後はフリーの編集者として活躍し、一昨年に「「語る人」吉本隆明の一念」、昨年は「吉本隆明はどうつくられたか」を上梓している松崎さんである。松崎さんはモディアノまでフォローしていたのか!
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336058751/
そうか、そうか!国書刊行会福田和也のデビュー作「奇妙な廃墟」も刊行している出版社である。「奇妙な廃墟」は第二次世界大戦中、ドイツ占領軍のフランス統治に協力した文学者について書いていたんだよね。講談社からモディアノの代表作「パリ環状通り」の新装版が刊行される。

筑摩書房から刊行される「吉本隆明<未収録>講演集」に収録される講演は124本だが、このうち「ほぼ日フリーアーカイブ」の音源と重なるのは78本だそうだ。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=67731&id=77233611

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、2015年秋にオリジナルスマートフォンの発売を目指し、CCCモバイルを設立した。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20141201_678378.html
http://www.ccc.co.jp/news/2014/20141201_004661.html

大日本印刷は、ネットでの会員登録や電子書籍のダウンロードなど面倒な操作が不要で、書店で購入後すぐに読書できる、読書専用端末に電子書籍を収録した『honto pocket(ホントポケット)』の販売を開始する。第一弾として「アガサ・クリスティー全集」(早川書房 100冊分収録)など5種を12月11日から発売開始する。「アガサ・クリスティー全集」は7万4800円。
http://www.dnp.co.jp/news/10105174_2482.html

大日本印刷とトゥ・ディファクトは、DNPグループの書店である丸善ジュンク堂書店文教堂の来店客及びhonto会員に向けて、書店サービスを向上させるスマホ向けアプリ「honto with(ホントウィズ)」を2014年12月中旬から配信する。
「honto with」は、検索した本の店舗在庫の状況や棚の位置などがスマホで確認でき、その本のレビューの閲覧や電子版の試し読み、欲しい本リストの店舗在庫の一括検索などができるアプリだ。
http://www.dnp.co.jp/news/10105175_2482.html

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3)【深夜の誌人語録】

裾野に回路を持たない尖端は孤立し、尖端に回路を持たない裾野は堕落する。尖端と裾野を併せ持たないメディアは読者から見放される。