『ふたりはともだち』 アーノルド・ローベル著, 三木卓訳 (文化出版局, 1972.11) 僕は13歳の時、小さな島から長崎港の見える坂の上の一軒家に引っ越した。路地を挟んだ隣の家に、同じ年の男の子がいた。 僕達は朝から待ち合わせて登校し、放課後も一緒にサッカーをし、夕暮れの細い坂道を一緒にだらだらと登り帰った。坂の途中、教会の脇の階段に座り込み話し込むこともあった。優しく慎重な彼が聞く。 「県大会に行けるかなあ~」 「行こうで。行けるさ!」 生意気な転校生が答える。 造船所のクレーンの影と海を挟んだ対岸の斜面に光る無数の灯が美しかった。 一年後、目標であった県大会に出場したが、ふたりは別々の…