アルベール・カミュの『ペスト』(La Peste , 1947 )を初めて読んだ。むかし読んだダニエル・デフォーの『ペストの記憶』(A Journal of the Plague Year , 1722 )とはずいぶん違う印象を受けた。デフォーは、1665年のロンドンを舞台に、実際のペストの災禍をドキュメンタリー風に書いたのに対し、カミュは、ペストを題材にはしているが、象徴的で、かつ哲学的な視点で書いている。そのためか、前半部分はやや退屈してしまったが、徐々に登場人物の心理や哲学的な対話が面白くなってきて、これぞ不条理文学の最高峰なのだと実感した。 ペスト(新潮文庫)作者:カミュ新潮社Amaz…