Marshall McLuhan
→ マーシャル・マクルーハン
ポップカルチャーの大祭司
メディアの形而上学者
1934年マニトバ大学卒業後、ケンブリッジ大学に入学。
主著に『グーテンベルクの銀河系』
マクルーハンは、もともとは文学研究者として出発したが、その後メディア論を論じる(挑発的にして示唆に富んだ)社会科学者として名を成した。60年代後半〜80年代前半にかけて爆発的な影響力を誇った。「内容ではなく、むしろそのメディア自身の形式にこそ、人びとに多くをつたえているのだ」と訴えることをつうじて、それまでの活字文化と、ラジオ文化、テレビ文化 相互のあいだにかれが差異線をひいたことは、いまだに重要である。
また90年代後半以降のコンピューティング・エイジにおいて、雑誌『WIRED』的カルチュアに、『ホール・アース・カタログ』などとともに、マクルーハンをあらためて結びつけて考えてみようとする視点も現れ、近年は、いわばマクルーハン・ルネサンスといった趣もある。
しかし他方で、今日一般にたとえば紀要論文や知的雑誌のなかの論文において、冒頭の段落でベンヤミンとマクルーハンの名が出てくる*1というだけで、読者に、その瞬間にその学術論文のほとんど全文を読んでしまったような反応をひきおこすという、超物理的反応を引き起こす固有名としても注目され、これについては大脳生理学者と社会学者の共同研究が望まれている。
またマクルーハンの影響は世界的に広まり、かれのメディア論に大いなる影響を受けたある種の人たちにとって、コンサート・ピアニストのキャリアを降りレコーディングに没入した(メディア型)ピアニストたるグレン・グールドと並んで、もっとも有名なカナダ人カルチュア・アイドルとなった。
*1:最近では田中純『都市の詩学』第8章。冒頭は「1960年代にマーシャル・マクルーハンが『メディアの理解』で電気メディアを身体外部への中枢神経系の拡張であると述べるのに先だち、二十世紀初頭のゲオルク・ジンメルやヴァルター・ベンヤミンの都市論は……」