藤戸千雪は「諦めろ」と言われ慣れている。158cmという数字は、ショーモデルとして立つには致命的に小さい。しかも父はモデル事務所ミルネージュの社長で、業界の物差しは家の中に転がっている。自分がその物差しに届いていないことを、彼女は誰よりも正確に把握している。 にもかかわらず、同じクラスの都村育人がファッションデザイナーを目指していると知ったとき、千雪は「無理でしょ」と口にしてしまう。貧しい家の男子で、服飾の教育を受けたわけでもない。業界の常識で採点すれば、その判定は的外れではない。ただ、まったく同じ形の言葉を、彼女自身がずっと浴び続けてきた。 言われた育人の側にも、反論する材料がない。母子家庭…