都会の片隅にある公園に、壊れたまま放置された電話ボックスが立っている。直しに来る人間もいなければ、中に入る人間もいない。ところが、その裏側にはときどき小さな紙が貼られる。書いてあるのは、貼った本人の連絡先だけだ。誰を、とも、なぜ、とも書かない。書かなくても届く場所だと、貼る側が知っている。 しばらくすると、その連絡先に男から接触がある。宇相吹正。依頼を聞き終えると、彼は標的のところへ出かけていく。持っていく道具はない。刃物も薬物も使わない。相手の前に立ち、いくつか言葉を交わし、その人間が何を信じ、何を怖がっているのかを確かめる。傍から見れば、しているのはそれだけだ。 それから間もなく、標的は死…