七月二十五日。晴天。今週は昨年の記録を上回る猛暑日となった。 進堂真帆は荷物が限界まで詰め込まれた大きなキャリーケースを引きずりながら、炎天下の町を歩いている。アスファルトで転がされるキャリーケースのタイヤはゴロゴロと音を鳴らしながら走っていた。 真帆は高校一年生の夏休み真っ只中。四日前に十六歳を迎えたばかりの少年だ。明るい茶髪に、海のような碧い瞳をしている。 横断歩道の青いランプが点滅し、赤色に切り替われば真帆は立ち止まった。額から流れる汗を腕で拭う。 「暑いな……」 誰に言うでもなく、ひとり呟く。 少年と同じく行き交う車を眺めている他の歩行者も同様に汗を拭ったり、扇子で仰ぐなどして、耐え難…