夏帆 / 村上春樹 (新潮 創刊120周年記念特大号より) 春のみみずく朗読会の続き。 こちらの作品は、村上春樹さんがこの朗読会の日のために書き下ろした作品でした。 「タイトルは、夏帆 です。季節の夏に、船の帆と書いて、夏帆です」 と村上さんがおっしゃったときに、会場の雰囲気がぎゅっとひきしまって。 「だけど、夏帆は2月生まれです。夏帆の両親がなぜこの名前をつけたのかは、 私もわかりません。」とつづけておっしゃったときに、 ひきしまった雰囲気が一気にほぐれて、笑いが起きて。 そっかあ、物語の中の人たちは作者に生み出された存在ではあるけれど、 作者の手の届かない、生身の人間のように生きている部分…