中島京子

ムーンライト・イン (角川書店単行本) 作者:中島 京子 KADOKAWA Amazon 失業して自転車旅行に出た先で紛れ込んだのはかくれ里？ それぞれなにかから逃げてきた三人の女性とそれを迎え入れた宿主の男性。 それぞれみんな自分（とその想い人）にしか興味がないようにみえる。 そんなばらばらっぽい中でそれぞれの身に起こる波乱と悲しみとを見届けてまたそれぞれに旅立っていく。 二組の男女はまた寄り添うことができるのか？

「困ったときはお互い様」が死語になったとは思っていない。小生などは、一時「都会」暮らしを経験したとはいえ、農村で育った人間として、冠婚葬祭で近所同士が、今からすれば、過剰なまでに助け合う姿を見てきた。これは千葉に限らないと思うが、1960年代までは田植えや稲刈りと言えば近所総出の一大行事で、終われば酒盛りだった。日が暮れて学校から帰ってくると家で大宴会をしていた光景は今でも忘れられない。70年代に入ると、そのうちに機械化が進んで共同作業は徐々になくなり、田に引く水の共同管理と祭りなどを除けば、互助の現実的基盤は狭まっていった。さらに、離農が進み、新しい住民が増えてくると、互助の絆（縛り）はます…

語り手である女性作家は、上野公園で個性的なファッションで自由奔放かつ傍若無人な初老女性の喜和子さんと知り合いになる。 彼女は戦後すぐの幼い頃に上野で復員兵ふたりと暮らしていたということで、そのお兄さんが語った帝国図書館（現在の国立国会図書館国際子ども図書館）について小説を書くよう語り手に説く。そして、帝国図書館の苦難の歴史と、喜和子さんの来し方が交互に語られていくのだった。 天衣無縫に見える喜和子さんだが、窮屈な結婚生活から逃げ出してきたと言う過去を持っている。そして、彼女を慕う孫娘が語り手と親しくなり、祖母の語られなかった歴史を繙いていくという凝った構成。 帝国図書館が樋口一葉に恋したりする…

先日「総理の夫」の記事の中で書いた 原田マハさんの「リーチ先生」は 実在するイギリスの陶芸家バーナード・リーチを モデルした作品です。 hapo-mina.hatenablog.com それを書いて思い出したのが中島京子／著の 【中古】 イトウの恋 講談社文庫／中島京子【著】 【中古】afb価格: 200 円楽天で詳細を見る 「イトウの恋」 です。 日本奥地紀行 （平凡社ライブラリー） [ イザベラ・L．バード ]価格: 1650 円楽天で詳細を見る 明治時代に日本を探検したイザベラ・バード「日本奥地紀行」 に登場する通訳との恋物語に仕立てた作品です。 元になった作品と一緒に読むと歴史への興味…

今日読んだのは、 中島京子『夢見る帝国図書館』です。 本好きなら、思わず手にとってしまいたくなるタイトルです。 日本ではじめての図書館の歴史がユーモラスにしかし緻密な取材に基づく確かな説得力で描かれ、同時に戦後を生き抜いた喜和子さんの不思議の謎が推理小説のように語られます。 そしてそれらが、平成を生きる作家の''わたし''のなかで結びついていき、それを読むものの胸にもあたたかな感動をもたらしてくれました。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 本書の構成 喜和子さんの人生 図書館と喜和子さんの物語 今回ご紹介した本はこちら あらすじ 上野で出会った飄々とした魅…

ムーンライト・イン：中島京子著のレビューです。 本記事はKADOKAWA文庫のWEBマガジンカドブンに掲載されました！ kadobun.jp ムーンライト・イン 作者:中島 京子 発売日: 2021/03/02 メディア: 単行本 おとなだって嫌でも取り組まなければならない宿題みたいなものがある （本が好き！の献本書評です） 気が進まなくて先延ばしにしていること、何かありますか？きっと誰にでもひとつやふたつあるんじゃないかと思います。「やらなきゃ、やらなきゃ」と思いつつ延ばし延ばし。あれれ、デジャブ？これってなんだか夏休みの宿題と一緒だなぁと。本書はそんな時間を過ごしている大人たちのある一時を…

イトウの恋 (講談社文庫) 作者:中島 京子 発売日: 2008/03/14 メディア: 文庫 中島京子の『イトウの恋』を読む。 イトウは北海道に生息する幻の巨魚で開高健が「イトウや、イトウや」とカン高い声でわめく釣り番組を覚えているので、そんな話かなと思ったら違った。 前作の『FUTON』は高橋源一郎が激賞していて手に取ってみたが、確かにゲンちゃん好みのひねくれ具合だった。 本作は、明治初期に野蛮国日本をインディ・ジョーンズばりに探検した女性、イザベラ・L・バードの『日本奥地紀行』の本歌取り。 『日本奥地紀行』は、いつか読もうと思って未読のまま、今日にいたる。 彼女の冒険旅行に通訳として同行…

🐏おねがい🐑 乗ったりしないでメェ～。 人形シリーズ 町田編 昨日はラジオ体操しました。平熱。 dic.pixiv.net マニトウ - Wikipedia 昨日の朝は、生ごみにネットをかけないでゴミ捨て場に出してる人がいて、既にカラスにつつかれていて、しかし食パンのように、カラスがそんな好きでないものしかないかったのが不幸中の幸いで、そんな荒らされてなかったので、上からネットをかけて出勤しました。近所の、誰なんだかなあ。 水 ひさびさに、ラープムゥともちごめ（カオニャオ）の定食セット。ラオス料理屋です。 ラープ (料理) - Wikipedia ラープ拡大。レモングラスが入手出来ないかと言わ…

読んでるというか本をめくって、調べていた。しかし三冊じゃ、足りなくて、たどりつかなかった。また図書館にいこう。 普段着の住宅術 (ちくま文庫) 作者:好文, 中村 筑摩書房 Amazon 一生使えるサイズ事典 住宅のリアル寸法 完全版 エクスナレッジ Amazon 新装版 図解ですべてわかる世界の装飾デザイン見本帳 エクスナレッジ Amazon けっこう知らないことがあって、知りたいことにはたどりつけなかったのだけど、ほかの、おお！これは知れてよかった！ということを知ることができたのでよかった。 最近、sfの長編で応募できる賞ないかなあと思って探していたのだけど、あったので紹介したいと思う。 …

著作権フリー素材がスゴすぎ…広重や夢二も全部無料 国立国会図書館の試みに「工作心がムズムズ」「活用しない手はない」 https://maidonanews.jp/article/14636045 本間悠さんの「本屋が富裕層向けになったら日本は終わり」に本屋店員が実感を語る…「電書ユーザーの増加」の話も https://togetter.com/li/1898404 「四六判宣言」フェア、今年は200書店規模で開催へ https://www.shinbunka.co.jp/news2022/06/220610-02.htm 第23回「読売・吉野作造賞」、「バブルの経済理論」に https://w…

先月の書評講座の課題は、中島京子『やさしい猫』でした。 やさしい猫 作者:中島京子 中央公論新社 Amazon ここ数年、社会問題となっている入管制度を取りあげた小説です。スリランカ国籍のウィシュマさんが名古屋の入管で亡くなった事件も、記憶に新しいのではないでしょうか。私の書評は以下のとおりです。 （ここから）--------------------------------------------------------------------------------- （題）いつか「きみ」が手を伸ばすその日へ向けて 「きみに、話してあげたいことがある」 とはじまる『やさしい猫』は、一貫して「…

図書館で中島京子の本を探していたら、同じ棚の隅にはぐれモノのようにこの本があった。お、これ、昔に読んだことあるわ、と借りて帰る。嗚呼、懐かしい文章ではありませんか。イヤハヤ、６０年昔はこんな本読んでいたのかとしばし感慨に耽ったのであります。戦前生まれの昔ヤングはこれとか「若きウエルテルの悩み」とか「野菊の墓」とか愛読したものであります。 話は超シンプル。ハタチ過ぎの青年が下宿先の年上の娘（但し既婚）に惚れ、相手も好意を寄せてくれて・・以後、延々とプラトニックラブが続く。それだけの話であります。後半、主人公が富山の山奥に入って一人暮らしするところは記憶が消えていたけれど、要するに波瀾万丈とかぜん…

上野公園で知り合った老齢の女性。不思議な雰囲気と過去を持つ。キーとなるのは帝国図書館。その歴史を振り返れば、戦争に振り回された激動の時代。その中で蔵書を増やし、守り、名だたる文豪たちに愛されてきた。語り手である作者の分身である小説家が老女の人間関係や文献から過去を解き明かす。幼女時代から時代と家族に振り回された一人の女性の生涯が明らかとなる。力作かつ秀作である甘めのA評価。現代の子供図書館に行ってみなくては。 -真理がわれらを自由にする。 夢見る帝国図書館 (文春文庫) 作者:中島 京子 文藝春秋 Amazon

6/01 ジョン・ロード「デイヴィッドスン事件」論創社/ISBN: 9784846021412 *1 6/01 G・D・H&M・コール「クロームハウスの殺人」論創社/ISBN: 9784846017934*2 6/02 スティーヴン・ハンター「囚われのスナイパー 上」扶桑社ミステリー/ISBN: 9784594091439*3 6/02 スティーヴン・ハンター「囚われのスナイパー 下」扶桑社ミステリー/ISBN: 9784594091446*4 6/03 ケヴィン・ウィルソン「リリアンと燃える双子の終わらない夏」集英社/ISBN: 9784087735208*5 6/06 赤川次郎「幽霊認証局…

やさしい猫 作者:中島京子 中央公論新社 Amazon 塾の課題です。 だいじょうばないこの国 中島京子『やさしい猫』は、シングルマザー（ミユキさん）と在留スリランカ人男性（クマさん）の恋愛、結婚を通して、出入国在留管理庁（入管）による恣意的な外国人収容の実態を告発する。ミユキさんの娘、マヤの視点から語られる物語にはさらに、就労も許されず、健康保険もなく、移動も制限される仮放免、シングルマザーが直面する困難、難病、非正規雇用、LGBT、SNSでの誹謗中傷などの問題も盛り込まれており、一家族の戦いを辿る中で、現代日本が抱える諸問題を自ずと学べる構造になっている。いい意味でのプロテスト、プロパガン…

毎週日曜日は、この一週間に書評に取り上げられた本を紹介しています。（書評の内容については各誌をご覧ください。） 今週の書評本 ◆掲載された媒体： 発行号数 掲載冊数タイトル 著者 出版社 税込価格 書評掲載回数(2回以上のもの) ◆週刊朝日「週刊図書館」： 6/3 号 6 冊 かれが最後に書いた本 津野海太郎 新潮社 2,310 ②絡まり合う生命 人間を超えた人類学 奥野克巳 亜紀書房 2,200 ②隠し女小春 辻原登 文藝春秋 1,760画聖 雪舟の素顔 天橋立図に隠された謎 島尾新 朝日新書 935花屋さんが言うことには 山本幸久 ポプラ社 1,760大人も知らない? ふしぎ現象事典 「ふ…

午後から雨が止むとの予報だったから、午前中に家事とかやって、昼過ぎに本屋に行くつもりだったんだけど、1時過ぎても止まない。準備もしちゃったしと、2時過ぎにまだ降っていたけど歩いて行ってきた。ポイント10倍だけど、買うのはどうしようかなとまだ迷いつつ、桐野夏生の「燕は戻ってこない」があったら買おうと思って、行ったらあった。あるよ。買うよ。翻訳小説は先月来た時からあまり変わりなかった気がするので、今回はパス。中島京子の「夢見る帝国図書館」が面白そうなので買う。「日本初の帝国図書館の物語と、戦後を生きた女性の物語が共鳴しながら紡がれる」って、こりゃ読むしかないでしょ。中島京子さんは初めて読む。桐野さ…

中島京子、講談社 ☆☆☆ 《均ちゃん》と周りから呼ばれている男がいます。均ちゃんはいい加減で、いつもフラフラしている男なんですが、どうにも憎めない男で、３人の女と関係を持っています。 その女たちを年の順に紹介すると、 景子＝５０歳、元妻、均ちゃんが住んでいる一軒家の大家。空穂＝これで「うつほ」と読みます。３５歳、外資系企業の重役秘書。薫＝２６歳、出版社の編集者。 となり、ちなみに均ちゃんは４２歳です。 均ちゃんはフリーのイラストレーターで、お金が無くなると仕事をして、貯金があるうちはフラフラしています。 景子と均ちゃんは大家と店子の関係でしかありませんが、空穂と薫とはセックスもする仲です。 均…