● 部屋に帰ると、絹江は本当にそこにいた。ソファでくつろぎ、勝手に冷蔵庫から飲み物を出して飲んでいた。「インゴットはどうなってるの?」「安心してくれ、いつものところだ」 札束以外の売上があったときは、いつもいったん駅のコインロッカーに入れておく手筈になっていた。ただ今回はぶつけた車を警察に発見されるのを避けるため、ザックに入れてこの部屋に置いてあった。「とにかくいまは、売上金を取り戻すのに集中しよう」「その情報によれば、場所はどこだったのかしら」 ポケットに入っていた、ロースからもらったメモを手渡した。奪い返した約百五十万の金については、絹江の出方を見て決めようと考えていた。いま修三が持ってい…