アヒルと鴨とコインロッカーを読んで この小説では二年前と現在が交互に描かれ、一見無関係にも見えた二つの物語が、ある段階から急速に接近し、波形が重なるかのように大きなうねりを見せる。伊坂幸太郎特有といってもいいほどの怒涛の伏線回収とカタルシスは健在でもっと早く読んでおけばよかったと思わせてくれる力がやはりあった。 ここからは少しネタバレになってしまうが、登場人物を誤認させてくるトリックには驚かされた。こういう驚きは小説という文字で表現された物語でしか得られないと思っている。いわゆる叙述トリックというものなのだろう。全然違うかもしれないが。 続々と二年前の物語と現在の物語が交差していく中で、いつま…