お若い書き手の風待葵君から、最新の作品集二冊のご恵送に与った。電卓を叩いてみて、改めて溜息が出た。初めて仲間との同人雑誌の創刊号というものを手にしてから、五十七年が経つ。 いただいたうちの一冊は短篇小説集で、もう一冊は紀行文だ。弘前を観光してから、津軽鉄道で金木まで足を延し、太宰治の生家にして今は記念館となっている斜陽館を訪れたらしい。またも電卓を叩けば、そのルートを私が歩いてからも、四十年ちかく経つ。冬は達磨ストーブを搭載したストーブ列車が、津軽鉄道の車輛だった時分だ。 二冊のいずれも、内容が風待君の創作作品であるばかりでなく、編集も装幀も発行責任者もご本人であって、いわば単独制作の印刷冊子…