🍁【源氏物語583 第18帖 松風 7】明石の君が源氏に迎えられることは願っていたことではあるが、娘達と別れて暮らす寂しさに入道は朝も昼も物思いに呆としていた。 〜免れがたい因縁に引かれて いよいよそこを去る時になったのであると思うと、 女の心は馴染《なじみ》深い明石の浦に 名残《なごり》が惜しまれた。 父の入道を一人ぼっちで残すことも苦痛であった。 なぜ自分だけはこんな悲しみを しなければならないのであろうと、 朗らかな運命を持つ人がうらやましかった。 両親も源氏に迎えられて 娘が出京するというようなことは 長い間寝てもさめても願っていたことで、 それが実現される喜びはあっても、 その日を限…