中国前漢時代の司馬遷は歴史家の始祖とも言われていますが、史記を書きあげて後の世の中国歴代王朝の歴史書の起源となったと考えられます。 この本はその司馬遷の史記について、戦前から戦後にかけて作家として活躍した武田泰淳が書いたものですが、小説ではなく歴史論とも言えるものとなっています。 武田の発表した著作としては最初のものですが、東京帝大支那文学科卒ですので、史記についての学術的考察といった趣が強いのでしょう。 なお、はじめの出版は昭和18年(1943年)であり、著者31歳の時ですが、その後も何度も改訂され出版が重ねられています。 史記は中国だけでなく日本でも広く読まれそれに関する研究も古くから数多…