高校生の時、私は毎日腕時計をつけて登校していた。高級なものでも、誰かからのプレゼントでもない。ただ、千円くらいの、何のこだわりもない腕時計だった。 そんな愛着もない腕時計をわざわざ毎日つけていたのは、私が場面緘黙症を抱えていたからだった。 自分の意思では動けない時、特に緘黙パニックが起きた時などは、スマホが手元になければ致命的なのだ。鞄に入っているとわかっていながらも、緘動のせいで体が動かない。お手洗いから出られないと、今が何時なのか、あと何分で授業が終わるのかもわからない。体育を見学している時だって、校舎に張り付いている時計を振り向くことさえできない。 そんな中で、私はかろうじて、ちらっと手…