中門に入った宰相に、清盛は目通りを許さなかった。 仕方なく宰相は源《げん》大夫判官 季貞《すえさだ》を通じて、 言葉を伝えて貰う事にした。 「つまらない人間と関り合いになったことは、 返すがえすも残念ですが、これもいたし方ありません。 成経に縁づいた娘が、身重の体で、 実は今朝から、この嘆きのため、息も絶えだえなのです。 如何《いかが》でございましょうか、 少将一人生きていても如何《どう》なるものでもありません、 暫くこの教盛にお預け下さらぬか、 決して間違いなどは起さぬように厳重に監視いたします」 これを聞いて清盛は、 「又教盛のあれが始ったな、全くわけの判らんことばかり申して」 とろくすっ…