私の父は設計士だった。 会社に所属した時期もあるが、おもに自営業、今ならフリーランスと呼ぶのだろう、自宅の一室に仕事部屋を持っていて、ほぼ毎日日曜日でもそこにいた。 大理石に特化した設計士で、自宅には「〇〇(名字)建築石材設計室」という小さな看板を掲げていた。 〇〇美術館の階段、とか〇〇センターの噴水等、へーっと思うような有名な建築物の名前が出てくるときもあったが、父の仕事はあくまでも大理石が使われている一部分なので、私にしたらあまり自慢にもならなかった。 そんな中にちょっと自慢になるものがあった。 誰もが知ってる長崎のグラバー邸。(※重要文化財かつ世界遺産) 「グラバー邸の暖炉」を父が設計し…